40mm T1.5にマウントコンバーター「MC-21」を搭載して実現したfpのシネスタイル

シグマがベイヤーセンサー搭載カメラを発表する理由

シグマは、7月11日の新製品発表会でベイヤーセンサー搭載カメラで静止画撮影と動画撮影に対応した35mmフルサイズセンサー搭載機「fp」の開発を発表し、今年秋に発売予定とアナウンスした。プレゼンを行った山木社長は、「まだ、どのサイトにもリークされていません。本舗初公開です」と切り出して会場の爆笑を誘いながら紹介を行った。

プレゼンはいきなり「新しいカメラはシグマ初のベイヤーセンサーカメラです」と強烈な発表をすると、会場からは「マジかよ」と驚きの声が上がった。これまでシグマは自社のデジタルカメラに、業界唯一無二の3層フォトダイオードを配置するFoveonセンサーを一貫採用してきた。ところがfpは、シグマ初のベイヤーセンサーを採用。一般的なデジタルカメラと同じベイヤーセンサー採用と聞いた瞬間、多くの人が「シグマらしくない」とがっかりしたはずだ。山木社長は余裕の表情で「ちょっと落ち着いて最後まで私のプレゼンテーションを見ていただきたいと思います」と訴えてコンセプトの紹介を続けた。

コンパクトで静止画撮影や動画撮影対応をを検討した結果、ベイヤーセンサーにたどり着いたという

fpを手に持つ山木社長

発表会終了後、fpのデモサンプルを触ることができた。ファームウェアはα版とのことだが、ほぼ普通に操作をすることができた

シグマは、今年のCP+2019でもフルサイズのFoveonセンサー開発を発表。こちらは現在でも開発を続けており、2020年の発売に向けてセンサーとカメラの開発中で、静止画撮影を中心としたカメラになる予定だという。一方、今回、デジタルカメラの脱構築を掲げて発表したfpは、Foveonセンサー搭載のカメラとまったく異なる新しいコンセプトのカメラであり、動画や静止画などのカテゴリやジャンルをにとらわれずに、その2つをシームレスにつなげることをコンセプトとしている。そのコンセプトに最適なのが、ベイヤーセンサー採用だという。

山木社長は「ベイヤーセンサーを使って、当社がいわゆる普通のカメラを作るということではありません。そもそも他社と同じようなカメラを作ることをお客様は期待していないと思いますし、たぶん売れないと思います」と意気込みを語った。

fpのボディサイズはパスポートよりも小さい。Lマウントを採用しており、ライカ、パナソニック、シグマのLマウントアライアンスからすでに発売されている多数のレンズやマウントアダプターを使用可能

イメージセンサーは有効画素数2460万画素のローパスフィルターレス。常用のISOは100から25600。拡張のISOモードでは6、12、25、50の低感度の設定がある。高感度は、51200、102400の高感度撮影が可能

動画と静止画と実現するために、フルタイム電子シャッターを採用

カメラの天面に静止画と動画を切り替えるスチルを搭載。このスイッチを切り替えることで静止画と動画を切り替えることができる。「MOVIE」ではなく「CINE」というのも印象的

交換レンズを外したところ。コンパクトな筐体にフルサイズのセンサーを搭載

おまけで付け足した動画機能ではない。RAW撮影や熱処理などを考慮した仕様を実現

fpで特に気になるのはシネマモードと呼ばれる動画機能の部分だろう。スチルモードとシネマモードでは切り替わる仕様になっており、静止画撮影ではお馴染みのインターフェイスだが、シネマモードに切り替えると完全に動画用のユーザーインタフェースに切り替わる仕様を実現している。

ほとんどのカメラは動画撮影の際、静止画のユーザーインターフェイスをベースに動画に必要な情報が付加されるインターフェイスを採用しているが、fpではそのあたりが改められており、シネマモードに切り替えると完全にユーザーインターフェースが動画仕様に切り替わるようになっている。クイックセットメニューのインターフェイスも、静止画モードと動画シネマモードでは動画撮影に必要な優先度の高いメニューが用意されている。

左側は静止画撮影の一般的なユーザーインターフェイス。右側がシネマモードでのユーザーインタフェース。完全に動画用のユーザーインタフェースに切り替わる

クイックセットメニューの画面。左側が静止画モード、右側が動画シネマモード

シネマモードは、CinemaDNGによる動画のRAW撮影が可能。解像度は4K UHD、シネマで一般的の24フレームパーセコンドを12bitで外部の大容量のSSDに記録が可能で、コンパクトな本格的なシネマカメラになるという。

4K UHD、24フレームパーセコンドのCinemaDNGに対応

■動画記録形式のカメラ内部/記録画素、フレームフォーマット
  • 3840×2160(UHD 4K)/23.98P、25P、29.97P
  • 1920×1080(FHD)/23.98P、25P、29.97P、59.94P、100P、119.88P
■動画記録形式のカメラ内部/記録フォーマット
  • CinemaDNG(8bit/10bit/12bit)
  • MOV:H.264(ALL-I/GOP)
■動画記録形式のHDMI外部出力/記録フォーマット
  • HDMIスルー出力、※外部レコーダー記録:ATOMOS Ninja Inferno、Blackmagic Video Assist 4K対応

一眼レフやミラーレス一眼で動画の撮影を行うと、熱がボディ内にこもって機能しなくなる問題に悩まされることがある。fpでは熱の問題に関しては、筐体の背面にヒートシンクをつけることで問題を解決しているという。金属のパネルをつけることによって、ボディ内部から発生した熱を効果的にヒートシンクに連動させて、外に放出している。この構造によって、ボディ内部にいつまでも熱がこもらずに動画の長時間撮影することが可能になったという。

ヒートシンクを搭載し、長時間の動画RAW撮影を可能にしている

カメラやレンズ選びを支援するディレクターズビューファインダーモードを搭載

ディレクターズビューファインダーモードもfpの大きな特徴だ。ディレクターズビューファインダーは、撮影監督や映画監督が、レンズとの組み合わせでどのように画角が変化するのかを確認する際に使われるもの。映画がフィルムで撮られていた頃は、スーパー35で固定されていたので、光学式のディレクターズビューファインダーで問題がなかった。しかし、シネマカメラがデジタルになって、スーパー35からラージフォーマットに変わることによって、カメラメーカー、モデル、モードごとにフォーマットが非常に複雑に変わってきている。

そこでfpでは、映像制作現場で使用される、主なメーカーのカメラでの設定を選択してどのように映るのかというフォーマットをシミュレーションすることができるモードの搭載を大きな特徴としている。

山木社長は、「まさに、世界中の映画監督の撮影監督が待望していたモードがこの小さなカメラの中に入るわけです。恐らく、このシグマfpは、世界中のあらゆる映画撮影の現場で必須のアイテムとなるでしょう」と紹介した。

光学式のディレクターズビューファインダー

真ん中の緑色の部分が伝統的なスーパー35。青い線はARRI ALEXA LFの代表的なフォーマット。赤の線はRED MONSTROの代表的なモードのフォーマット。黄色い線はソニーVENICEの代表的なフォーマット

カメラメーカー、モデル、モードを選ぶと、fpで撮影エリアをシミュレーションできる

■ディレクターズビューファインダーモード対応シネマカメラ
  • ARRI:ALEXA LF / ALEXA SXT / ALEXA Mini / AMIRA /ALEXA 65 / ALEXA XT
  • SONY:VENICE
  • RED:MONSTRO 8K / HELIUM 8K / DRAGON 6K / EPIC MX 5K / GEMINI 5K

ユーザーが自由に好みの仕様にカスタマイズ。オリジナルの撮影スタイルを構築できるコンセプトを実現

fpは、用途に応じて変化する拡張性も特徴としている。カメラの両脇についているストラップホルダーは外すことができ、ホルダーのネジ穴は、三脚座と同じ仕様になっている。つまり、三脚座と同じネジ穴が、両脇とボトムについているということになる。この3つのネジ穴を使ってさまざまなアクセサリーを付けて、拡張性を確保しているという。

たとえば、外付けのグリップとをホットシューを付けて本格的なポートレート撮影に対応するシステムを組むことができる。さらに、大きいグリップに専用LCDビューファインダーを取り付けるシステムを組むこともできる。

さらに、本格的なシネマカメラとしてケージを使ってシステムを組むことも可能。ジンバルなどと組み合わせて機動力を活かしたシネマカメラを実現できる。コンパクトな筐体を生かしてドローン撮影にも使える。

fpの3D設計データを当社のWebサイト上で公開予定で、アクセサリーメーカーは設計データの寸法を参考にアクセサリーの開発が可能となる予定。

ストラップホルダーは外すことができて、三脚座と同じ仕様になっている

ケージなどと組み合わせて本格的なシネマカメラとしてのシステムを組むこと可能

ジンバルと組み合わせてシネマカメラとして使うことも可能

コンパクトな筐体を生かしてドローンとの組み合わせも可能