パナソニック株式会社は、6K/24p(縦横比3:2)、5.9K/30p(同16:9)、10bit Cinema4K/60p、4K/60p動画記録を実現したフルサイズイメージセンサー搭載ミラーレス一眼カメラ「DC-S1H(以下:S1H)」を9月25日に発売する(9月12日10時より予約受付開始)。希望小売価格はオープン、市場想定価格は50万円前後。以前、今秋を目処に製品化し、グローバル市場に導入予定だと開発発表していたもの。
8月29日に開催された発表会にてS1Hを発表した、パナソニック株式会社 アプライアンス社 スマートライフネットワーク事業部 イメージングビジネスユニット 統括 津村敏行氏
S1Hは、デュアルネイティブISOテクノロジーに対応した2420万画素(有効画素数)の35mmフルサイズCMOSセンサーを搭載。1画素ごとに専用回路を2系統備えたデュアルネイティブISOテクノロジーは、「低ISO感度回路」と「低ノイズ・高ISO感度回路」の2系統を切り換えることで、高感度時もノイズを抑えた、より自然で美しい絵作りを可能にするとしている。また、イメージセンサーに最適化されたローパスフィルターを搭載し、細かな模様などの撮影で発生するモアレ現象を効果的に抑制する。
同社のデジタルシネマカメラ「VARICAM」と同水準のダイナミックレンジ/広色域の14+ストップV-Log/V-Gamutに対応。また、カメラ内にLUT(ルックアップテーブル)のプロファイルをコピーすることで、映像編集後のイメージを確認しながら撮影できるV-Logビューアシスト機能も搭載。再生時にV-Logビューアシスト機能を使えば、撮影後でも即座にLUT変換後の映像イメージをチェックすることが可能。
V-Log/V-Gamutに対応したS1Hの映像と、同じくV-Log/V-Gamutを搭載したVARICAMシリーズ、AU-EVA1や、V-Log Lに対応したデジタル一眼カメラLUMIX GH5/GH5Sなどで記録した映像を組み合わせることで、ポストプロダクションにおいても一貫した絵作りでのカラーグレーディング作業を行うことができる。また、VARICAMシリーズが提供しているLUTライブラリーも活用できる。
さらに、グレーディングなしでも最適なシネマライクな映像が撮影できる「シネライクD2」、「シネライクV2」を新たにフォトスタイルに搭載。同機のフルサイズイメージセンサー性能を前提とした最適設計を施し、VARICAMシリーズ/AU-EVA1の絵作りの思想を受け継ぎながら、ダイナミックレンジの向上を実現したという。
センサー全域を使った、3:2 6K/24p(5.4K/30p)、16:9 5.9K/30p動画記録を実現。豊富な情報量でポストプロダクションに有効な「フルエリア画角でのCinema4K/30p 4:2:2 10bit動画記録」や、「スーパー35mm画角でのCinema4K/60p 4:2:0 10bit動画記録」などの動画記録モード選択が可能。
4:2:2 10bit動画記録モードでは、ALL-Intra動画記録を選択でき、最大400Mbpsの高ビットレート記録が可能。HDMI端子からは4:2:2 10bitの映像出力を行うことができ、動画記録中のHDMI映像出力にも対応。GH5/GH5Sと比較して、新たに10bit Cinema4K/60p、4K/60p動画記録中であっても、HDMI端子からCinema4K/60p、4K/60pの4:2:2 10bit映像を同時に出力することができるようになった。カメラ内のSDメモリーカード記録を行いながら、外部レコーダーでの同時記録も可能。
高画質な映像のままスローモーションやクイックモーションでの再生が可能なVFR記録機能を搭載しており、記録フレームレートをオーバークランク・アンダークランク撮影することでより印象的な映像表現を可能にするとしている。4Kでは60fps、FHDでは180fpsまで記録可能。
新たに、Cinema4K、4Kでは48p/47.95p、FHDでは119.88p/100.00pでの動画撮影が可能なハイフレームレート動画記録モードを搭載。オートフォーカスを使用した音声付きの動画記録を行うことができ、ノンリニア編集のソフトウェアでフレームレートを変換することで、音声付きのスローモーション動画に仕上げることが可能。
4:3アスペクトのアナモフィックレンズに対応した、アナモフィック動画記録が可能。新たにデスクイーズ倍率が追加され、従来GH5/GH5Sで搭載していた2.0倍、1.33倍に加え、1.8倍、1.5倍、1.3倍のデスクイーズ表示にも対応。また、クロップ後の納品画角に合わせてガイドラインを表示する動画フレーム表示設定機能も搭載。シネマスコープサイズの2.39:1、2.35:1や、2.00:1、1.85:1、16:9、4:3、1:1、4:5の画角に対応。フレーム表示色の選択やフレーム外側の映像の透過度を選択できるフレームマスク機能も搭載しており、アナモフィック撮影をサポートしている。
270°のフリーアングル構造とチルト構造を組み合わせた独自の可動式構造を採用。HDMI出力時はケーブルと干渉せずにフリーアングル撮影が可能
背面モニターは、約233万ドットの3.2型タッチパネル液晶モニターを採用。屋外撮影に配慮し、モニター最高輝度をGH5/GH5SやS1R/S1と比較して約150%に向上。また、新開発のチルトフリーアングル構造を採用し、リグなどの周辺機材を用いたセットアップでHDMIケーブル・USBケーブルやケーブルロックホルダーを取り付けた状態でも干渉せず、自在にフリーアングル撮影を行うことができる。
カメラボディ天面には、1.8型の大型モノクロステータスLCDを搭載。静止画・動画用のステータス表示が可能。動画用ステータス表示では、記録フレームレート、シャッタースピード、絞り値、ホワイトバランス、ISO感度、撮影モードや動画記録モードなどの各種設定ステータスと、タイムコード、録音レベル、動画記録時間などリアルタイムに変化するステータスを切換えて表示することができる。ステータス液晶の色はブラックとホワイトから選択可能。電源OFF時でも、バッテリー残量や記録可能時間の表示が可能だ。
約576万ドットの高精細OLEDパネルを採用したファインダーは、倍率約0.78倍かつ同社の光学技術を活かしたファインダー内レンズの採用により、自然な明るさで、周辺までの歪やコントラストの低下を抑えた描写を実現するとともに、的確な色再現性と最高フレームレート120fps、最短表示タイムラグ約0.005秒による高速表示に対応し、人間の視覚に迫る大型・高精細のリアルビューファインダーを実現したという。
ハンドヘルドやジンバル撮影時に有効なボディ内手ブレ補正を搭載。手ブレをより正確に検出できる高精度ジャイロセンサーと制御アルゴリズムの進化によって、5軸ボディ内手ブレ補正(B.I.S.)は6段※1の補正効果を実現しており、シネレンズやアナモフィックレンズなど手ブレ補正機能のないレンズ使用時も、暗いシーンなどの長秒撮影で発生しやすい手ブレを軽減するとしている。また、Lマウント規格のSシリーズレンズを使用すれば、ボディ内手ブレ補正(B.I.S.)とレンズ内手ブレ補正(O.I.S.)を連動させる「Dual I.S. 2」が、6.5段※2という手ブレ補正効果を発揮する。
※1:CIPA規格準拠 Yaw/Pitch方向:焦点距離f=50mm(交換レンズS-X50使用時)※2:CIPA規格準拠 Yaw/Pitch方向:焦点距離f=105mm(交換レンズS-R24105使用時)
カメラが人の顔を検知し、瞳を認識して自動でピントを合わせる顔・瞳認識AFや、被写体の認識アルゴリズムにAI分野の先進技術であるディープラーニングを応用し、人物や動物に対する高精度なフォーカス性能を実現した人体・動物認識AFを搭載。被写体の顔が正面を向いていない場合でも人体と認識し、顔が隠れているシーンや後ろを向いた場合でもシームレスにピントを合わせ続ける。
放熱シミュレーションと放熱ファンを搭載した放熱構造により、動作保証温度内における動画記録の時間無制限を実現。長時間撮影を可能にすることで、ノーカットの映像表現や、星空・夜景のタイムラプス撮影、野生動物やドキュメンタリーの撮影など、プロの撮影現場の信頼に応えるとしている。
開発時のシミュレーション技術に基づいた耐衝撃性能を備えたボディは、軽量かつ耐久性のあるマグネシウム合金フレームを採用。また、防水ファンの採用や、カメラ内のヒートシンク構造を防塵・防滴化することで、ファンを搭載しながらシステム全体の防塵・防滴を実現。シャッター機構は、剛性を高めることで耐久性能が向上し、シャッター耐久回数40万回を達成した。また、マイナス10℃の耐低温設計により、さまざまな撮影現場のハードな環境にも対応できる仕様だという。
2基のSDカードスロットを搭載したことで、さまざまな記録方式に対応。順次(リレー)記録・バックアップ(サイマル)記録・振り分け記録の中から、撮影現場や撮影状況に合わせ最適な方式を選択することで、データ管理をサポート。両スロットともにUHS-IIビデオスピードクラス90規格のSDHC/SDXCメモリーカードに対応し、ALL-Intra(最大400Mpbs)記録に対応している。
USB端子は、USB Type-C規格を採用するとともに、USB Power Delivery(USB PD)にも対応。映像出力インターフェースには、HDMI Type-A端子を搭載している。
業務用ハイエンドカムコーダーやシネマ用カメラで標準搭載される、BNC端子によるTC IN/OUT機能拡張に対応。同梱のBNC変換ケーブルをフラッシュシンクロ端子に接続することで、マスターカメラが出力するタイムコードと同期する「TC IN」機能や、S1H自身がマスターカメラとなる「TC OUT」機能を搭載。TC IN時には、機器と接続するだけでタイムコード同期を取得でき、複数台のカメラ撮影現場において、ノンリニア編集での細かな映像タイミングやリップシンクの調整を快適に行うことができる。
撮影中・待機中を確認できるタリーランプ搭載
カメラボディの前方(被写体側)と後方(撮影者側)にタリーランプを搭載しており、カメラオペレーターや被写体にカメラ動作を知らせることができる。タリーランプは、前方・後方のそれぞれを独立でON/OFFの選択が可能。
また、2019年9月20~21日の2日間、LUMIX GINZA TOKYOにて映像制作関係者向けS1Hデビューイベントとして、企画・開発者によるS1H発売前セミナーが開催される。同セミナーでは、セミナー・開発者によるトークセッション、意見交換会、タッチ&トライが行われる。