txt:加藤 優真 構成:編集部

Adobe MAXとは

まず、Adobe MAXと聞くと、毎年横浜で行われるAdobe MAX Japanの方を想像される方もいらっしゃるかと思うが、今回は本家アメリカで行われたAdobe MAXの模様をお届けする。

今年Adobe MAXはアメリカ・カリフォルニア州ロサンゼルスにある、ロサンゼルスコンベンションセンターなどでプレカンファレンスを含めて5日間行われた。

内容としては、Adobe Creative Cloudで提供されているツールの新機能や新製品の発表、各ツールの使い方やテクニックなどのセッション、クリエイターの交流といったものである。毎年1万5000人もの人が参加している。今回はこのAdobe MAX 2019をビデオ製品を中心の視点でお届けする。

ビデオ製品のアップデート

まず、1日目の朝に行われるKeynote基調講演にて、このタイミングでアップデートされた各製品の新機能の紹介などが行われる。参加者全員が集まる会場は、巨大な3枚のスクリーンを使って行われた。

今年もビデオ製品の紹介は、ビデオ製品のワールドワイドエバンジェリストであるJason Levine氏が担当。ここ数年、歌うエバンジェリストとして有名になった彼だ(今年は歌わなかったが)。

今回はPremiere ProとPremiere Rushについての話があった。先日公開されたばかりの「ターミネーター:ニュー・フェイト」はPremiere ProなどのAdobe製品が使われたとのこと。

Premiere Proについては、昨年のAdobe MAXのSneaks(新技術の紹介の場)で紹介されたばかりの「オートリフレーム」の紹介があった。

例えば横向きで撮影された動画をSNS向けに縦動画に直す時、被写体が左右へ動いているものだと、今までは手動でキーフレームを打たなければならなかった。今回追加されたオートリフレームは、シーケンス丸ごとAdobe Sensei(AI)が動画を解析して、被写体が中心に着続けるように自動で位置のキーフレームをつけてくれるという機能だ。

そして、解析して設定されたキーフレームは編集可能な状態になっているので、エディターが微調整することもできる。今まで地味に時間のかかっていた作業であるだけに、この機能の追加でかなり時短ができるだろうと感じた。

また、昨年リリースされたPremiere Rushについては、1年間のアップデートを振り返り、今回の新機能である「TikTokへの直接投稿」を紹介。Rushについては、これまでにテンプレートの追加やスピードコントロールが追加されてきたが、今回、モバイル版にTikTokへの直接投稿機能がついた。

これにより、TikTokアプリがインストールされていれば、書き出した後に書き出した動画を直接投稿画面へ転送することができようになった。

After EffectsについてはKeynote中では触れられなかったものの、パフォーマンスの向上により、高速化が図られているとのこと。アーカイブはこちらからご覧いただける(英文)。

Sneaks

続いてはSneaksだ。これは、Adobeが研究開発中の技術の中から、選りすぐりのものを開発者本人が紹介するというものだ。いくつか紹介された中で、きになるものをいくつかピックアップする。

#ProjectAwesomeAudio

Adobe Senseiの技術を使ったものだが、雑音やエコーの多いところで収録した音声をクリアにするというもの。ボタン1つで非常にクリアに聞こえる状態になっていた。

今まで非常に難しかった音の修復が、ボタン1つで修復できるということで、早く使ってみたいと感じた。

#ProjectSoundSeek

こちらは録音中に入ってしまった「あー」「えー」といった特定の音声をピックアップしてアナライズすると同様の音声を同じファイル上で選択して、抽出・削除することができるといったもの。また、デモの中では、録音中に入ってしまったクラクションの音も消していた。

こちらも地味に時間のかかる作業であることから、早く使ってみたいと感じた。この他にもたくさんの新技術が紹介されていたので、ぜひ下記リンクからご覧いただきたい。

セッションやラボ

ここまで、全体講演の様子をお届けしてきたが、ここではそれ以外のセッションやラボ(ハンズオン)についてご紹介していく。Adobe MAXでは3日間の会期中の全体講演以外の時間帯に行われている。セッションは、数百人が入るような部屋でスピーカーによる講義が行われるもので、ラボについては、150人程度が入る部屋にスポンサー提供のPCが一人一台設置されていて、講師の話を聞きながら自分でも操作をするというものだ。

私が受けた映像系のセッションやラボには講師としてLinked Inなどといったスクールで講師をしている人や、業務として映像制作をしている人などが登壇していた。3日間の会期中、全て映像や音声に関するセッションで埋めることができるくらい豊富なセッションが設定されており、考え方からテクニックまで幅広い内容を勉強することができた。

最後に

ビデオ製品などは特に、Adobe Senseiを使った技術が次々に登場しており、こういった技術によって、単純作業の時間短縮がより進んできている。 つまりはコンテンツの中身の質を上げることに時間が使えるようになってきていて、クリエイター自身の質が問われる時代になってきているということだ。 今回のAdobe MAX 2019への参加を通して、自分は今後どうしていくべきなのかという所をKeynoteやセッション・ラボ、また、他の参加者との交流を通して考え直させられた。

また、会場中お祭りのような状態で、参加者全員が非常に楽しんでいる様子だった。日本では味わえない、規模感や空気感を味わいに、是非みなさんにも一度は足を運んでいただきたいと感じた。