パナソニック映像は、自社が制作した、4K作品「Joy lives in New Orleans Jazz」と8K作品「THE GIFT」の2作品が、先進映像協会日本部会主催「ルミエール・ジャパン・アワード2019」でグランプリと特別賞をダブル受賞したことを発表した。4K作品の受賞は3年連続で、今回初めてのグランプリ受賞となった。また、1月18日に開催された第4回関前諸島岡村島映画祭でも、4K作品「Joy lives in New Orleans Jazz」が最優秀映像賞を受賞した。

「Joy lives in New Orleans Jazz」4K部門 グランプリ(※Web上ではHD画質で公開)

「THE GIFT」8K部門 特別賞(※Web上ではHD画質で公開)

ジャズ発祥の地アメリカ、ニューオーリンズ。その美しい街並みと、ここに現存するライブハウス「Preservation Hall」で作品は制作された。今回制作を担当したスタッフは、4K/8K作品を制作する上でのポイントや見どころを次のようにコメントしている。

■パナソニック映像 プロデューサー ディレクター 安楽直樹氏
安楽氏は昨年、一昨年とルミエール賞を受賞した作品のプロデュースを担当。他にも多くの4K/8K作品を制作している。

以前制作した4K作品は特に「HDR感」を意識した作品でした。タイのランタン、スコットランドの火祭りと、明暗のコントラストがよくわかるような。そこで今回は最初から4Kと8K両方撮る予定だったので「高精細なもの」は勿論ベースにありますが「見ていて楽しいものにしたい」と思い、今までやっていかなった音楽もありかなあと考えました。

他にはキューバとかフリークライミング、パルクールなんかも候補には出ましたが、8Kのスペックを考えるとあまり動きが早いものは難しいので、今回はエンターテインメントなものにトライしてみようと。作品の舞台となった、「Preservation Hall」は、ニューオーリンズで一番古いライブハウスで、観光地的な場所にもなっていて、今は初代の息子さんが「Preservation Hall Jazz Band」というハウスバンドで演奏しています。今年で87歳のサックス奏者も現役で活躍しているし、歴史あるこの場所ならいいストーリーが描けそうだなと思いました。

ホール自体本当に狭くて古いライブハウスですが、ロケーションがいいんですよ。古臭いところがいい。ステージもなく、観客のすぐ目の前で演奏しているんですが、盛り上げ方がうまい。勿論演奏が何よりうまいし、かっこよかったですね。

ライブハウスの細かいディテールとか空気感とかを4K/8Kで表現するためにいくつか工夫をしました。点光源を入れてみたり、他にも撮影用の照明をいくつかプラスして、言ってみれば「HDR映え」するように。それから管楽器の独特な光沢感。長い間引き継がれてきた楽器をリアルに表現するための工夫もしてみましたが、結構うまくいったなあと思っています。

■パナソニック映像 カメラマン 坂口 政也氏
坂口氏はスイッチャ―やTDもこなし、ドローンも飛ばせる。

今回は8Kのカメラ助手として参加しました。使用したカメラは、8KがPanasonicの開発中のもの。4KはVARICAM LTのEFレンズ仕様がメインでGH5も一部使用しました。8Kカメラを扱うのは初めてだったので、事前にテスト撮影を行い、レコーダーとの相性とか、収録データの扱い方を確認しました。

8Kはとにかくデータ量が多い。今回は収録の上限が120分しかなく、バックアップを取ると丸1日かかるので、それは断念しました。メインの演奏シーンを撮り終えると残りは40分ほど。それでも何とか、予定のシーンを撮り終えることが出来ました。

実は現場では8Kの撮影時にHDモニターしかなかったので、どんな風に撮れているのか確認できなかったのですが、帰ってきてから編集室で8Kの映像を見て、かなりリアルなのには驚きました。

大画面で見たせいもあるかもしれませんが、臨場感があって、特に演奏シーンは撮影現場にいたときを思い起こさせるものがありました。

最近は4Kでの撮影が、国内海外問わず増えていますね。HDで使用する作品でも撮影は4Kで、ということも多いんです。4Kは、とにかくフォーカスがシビア。撮影時に一番心がけていることですね。

■パナソニック映像 カラリスト 佐藤倫子氏
佐藤氏は4K作品を数多く担当。印象的なシーンを際立たせるグレーディングが得意。

最初に撮影素材を見たときは正直悩みました。今まで担当した安楽さんの作品では、暗闇の中に色がある、ランタンや松明の様に自発光しているものがメインだったので、HDRはとても作りやすかったんです。それが綺麗に見えればOKでしたが、今回はジャズ。ライブハウスの映像を見たとき、これはあまりキラキラさせてはいけないのかなあと。それでも一度いつものHDRっぽい方向で作ってみましたが、案の定リテイク。やはり時代を感じさせるグレーディングをして欲しい。でもHDRらしさも必要ということでした。方向性が決まったので、作業を進めていきましたが、一番難しかったのが演奏シーンでしたね。

強い光源があった時、横にノイズが出やすいんですが、撮影時にかなり気を使って撮ってくれたのでその点はあまり気にしなくてすみました。今回はまず、8Kを先に作ってそのグレーディングをそのまま4Kで生かしているので、4Kの作業は効率的に進められました。

この「出来るだけ効率よくやること」をいつも心がけています。最近はLog収録が増えてきたので、データ量が多いんです。作品によっては「このデータは要らない」という場合もあるので、情報をどこまで残してどうバランスをとればいいか、これは4K/8Kというよりはグレーディング全般に言えることなので常に気を付けています。

今までは高画質、高精細な映像に特化したHDR作品を担当することが多かったですね。見たことのない世界遺産や絶景、秘境などをもっとやってみたいですが、今後はドキュメンタリーとかストーリー性のある作品も担当してみたいですね。