ローランド株式会社は、2月7日に東京国際フォーラムにて「Roland/BOSS 2020春 新製品発表会」を開催した。

同発表会では、1月に米国で開催された「CES 2020」ならびに「The 2020 NAMM Show」で発表した新製品を紹介。映像関連の新製品としては、HDビデオ・スイッチャー「V-8HD」や、スマートフォン用ライブ配信ツール「GO:LIVECAST」が展示された。楽器関連では、電子ドラムの新シリーズ、ステージピアノ、ギター関連製品が展示され、電子和太鼓「TAIKO-1」などがライブ・パフォーマンスによって披露された。

会場でのプレゼンテーションには4K HDRマルチフォーマット・ビデオ・スイッチャー「V-600UHD」が使用され、製品展示だけでなくプレゼンテーションの演出にもローランド製品が活用されていた

HDビデオ・スイッチャー「V-8HD」

複数の映像ソースを使った動画制作や配信が行える小型軽量・ポータブルなHDビデオ・スイッチャーV-8HDは、8チャンネルのHDMI入力端子を装備し、8つのHDMI入力をシームレスに合成可能。プログレッシブおよびインターレースの混在入力ができ、複数の映像を使った演出が簡単に行える。また、2つのHDMI入力にはスケーラーを内蔵しており、パソコンやスマートフォン、ゲーム機器など異なる解像度の機器を接続した時でも、最適な解像度にあわせて拡大/縮小可能だ。

HDMI入力8系統、出力3系統でリアルタイムに映像を切り替え

HDMI入力が8系統搭載されている

V-8HDはHDMI入力8系統、出力3系統を装備。全入力にフレームレート・コンバーターとフレーム・シンクロナイザー搭載し、8つの映像入力をシームレスに切り替えることが可能。会場ではHDMI 8入力/1出力でリアルタイムに映像を切り替えるデモが行われた。構成をプリセットで登録しておくことで、レイヤーを一瞬で切り替えられるという。

ATOMOS社のレコーダーと連携

V-8HDには最大8枚の静止画を取り込むことができ、静止画の切り替えも可能。1画面に最大5枚まで映像を合成することができ、PGMとPSTの2枚の映像切り替えに加え、PinPとクロマ・キーもしくはルミナンス・キーで合成、さらにタイトルやテロップなどDSKで合成することができる。

RECステータス/RECコントロール機能により、カメラの録画状況がV-8HDのモニター上に表示される。録画中は写真左のように赤い印が表示される

また、対応する外部機器とHDMIケーブルだけで連携できる「RECステータス/RECコントロール機能」を搭載しており、INPUTにカメラを接続することで、HDMIからコマンド(ステータス)を送って、カメラの録画状況がV-8HDのモニター上に表示される(RECステータス)。会場ではATOMOS社製レコーダーをV-8HDからコントロールするデモが行われた。通常であれば制御信号などを入れる必要があるが、HDMI信号にステータスが含まれているため、ATOMOS側のレコーダーがその信号を受け取り、HDMI 1本でレコーダーでの録画開始・停止がV-8HDから制御可能となった。

V-8HD専用のiPadリモコン・アプリ「V-8HD Remote」にて、iPadからV-8HDをコントロール可能。映像の切り替え、オーディオ・フェーダー操作による音声のミックス、プリセットのカスタマイズも本体を使わず操作できる。

簡単ライブ配信ツール「GO:LIVECAST」

スマートフォンやタブレットからのライブ配信に様々な演出を加えることができるアプリとコントローラー(本体)のセット「GO:LIVECAST」。アプリでは、音楽やサウンドエフェクト、BGM、画像、ビデオ、テキストなど、自分の好みにあわせてアサインが可能。

アプリでの素材の割り当て画面

コントローラー本体

それぞれの素材は、コントローラーの1~6までのパットに自由に割り当てでき、割り当てた設定は「ライブセット」として保存され、すぐに呼び出して使うことができる。

自分でカスタマイズ可能なテロップが挿入可能

テロップを挿入する際には、文字や色、大きさ、位置などを自分で設定可能。アプリ上で編集したものはコントローラーのパットで操作可能で、配信中はパットを操作するだけで色々な機能を配信画面に呼び出すことができる。

無線接続した2台のカメラにより、メイン画面にもうひとつのサテライト画面を重ねて表示可能

また、大きな特長となる「サテライト画面」は、Wi-Fiもしくはテザリングで接続した2台のカメラ映像を使って、アングルを切り替えたり、2つの画面を重ねたりすることが可能。映像の位置はアプリ上で変更でき、編集したものは画面上でON/OFFを切り替えられる。

サテライト画面の表示位置も選択可能

アプリ上では、コントローラー1~6までのパットの音量調節や、リバーブをかける、マイクのミュートが可能。また、特に女性の方には嬉しい機能として、顔の映りをよくする「美肌フィルター」なども搭載している。

配信プラットフォームは「Facebook Live」「YouTube」「Twitch」「ツイキャス」と、プラットフォーム上でストリームキーを手動で入力することで配信可能な「Custom RTMP」が採用されている。

配信以外にも設定で録画モードが選択可能。配信時と見え方は同じだが、録画してスマートフォンやタブレットにテキストや画像を表示したものがそのまま保存でき、保存したデータを違う場所でアップロードすることも可能。

その他にも、LINE INでキーボードや楽器などの接続や、オーディオプレイヤーを接続してBGMを流しながらの配信、マイク端子を搭載しており、コンデンサーマイクやダイナミックマイクを接続して「歌ってみた」配信などが行える。

担ぎ桶スタイルの電子和太鼓「TAIKO-1」

会場で話題となっていたのは、電子和太鼓「TAIKO-1」だ。TAIKO-1は、同社が長年の電子ドラム開発で培った技術を駆使し、さまざまな種類の太鼓の演奏が可能。

打面を叩く位置や強さに応じて多彩な音を奏でる和太鼓特有の音色変化を忠実に再現。桶胴太鼓、長胴太鼓、締太鼓などの和太鼓や拍子木、太鼓以外の打楽器の音色を内蔵しており、1台でさまざまな音色を使って演奏可能。叩く強さによって音が変化するのはもちろん、打点位置検出機能の搭載によって、叩く位置の違いで音が変わる。

打面には、静粛性に優れた同社独自のメッシュ素材を採用し、音の大きさを気にせず練習することが可能。また、本体を分解してコンパクトに収納でき、持ち運びにも便利。充電式ニッケル水素電池(単3形x 8本)での駆動にも対応し、自由に動きながら演奏できる。

その他にも、テンポ感を養うために必要なメトロノームや、和太鼓の練習に欠かせない「地打ち」フレーズも収録。USBメモリーに保存したオーディオ・ファイルを本体に取り込み、演奏することも可能。

太鼓芸能集団「鼓童」によるライブ・パフォーマンス

日本の伝統的な和太鼓についても研究を進めるなかで、太鼓芸能集団「鼓童」と出会い、お互いが打楽器文化を発展させたいという思いに共感し、交流を深めてきたという。同社は鼓童の協力のもと、電子和太鼓への取り組みを進め、2017年に初の試作機を製作。発表会当日には試作機の展示や、鼓童によるライブ・パフォーマンスが行われた。

会場には試作機となる壱号機(右)、弐号機(中央)も展示。製品版は左側