株式会社シンユニティグループは、新型コロナウイルスの全世界的流行により、リアルイベントが開催できずに困っている人に向けたイベント「SYMUNITYxR HYBRID EVENT 2020 Online Offline」をオンライン配信にて2020年8月6日と7日に開催した。

イベントを実施した配信スタジオの様子

シンユニティは、多数のイベント経験で培った映像・ICT・デジタル技術を駆使してバーチャルエクスペリエンスを追及したトータルソリューションを提案している。同社は特定の会場に演者や観客が集まるのではなく、それぞれの場所にいる演者・参加者が一同に会し、バーチャルでイベントを行うことで、リアルでは不可能な演出や常識を超えた発想を実現できるとし、これまで大きな会場で行われてきた様々な催しにバーチャルとオンラインを掛け合わせることで、新たな体験を提供できるほか、枠や形式にとらわれない全く新しいイベントが可能だとしている。

同イベントはYouTubeやZoomなどの配信プラットフォームでの配信ではなく、イベントページからゲストがアクセスすることで、配信側(シニュニティ側)の操作でWebブラウザ上で配信が行われた。イベントは「第1部:バーチャルソリューション」「第2部:バーチャルセミナー」「第3部:バーチャルエンターテインメント」の3部構成となっており、初日の8月6日に配信スタジオにお伺いしたので、その様子をレポートしたいと思う。

シンユニティグループが提案するバーチャルソリューションとは

「第1部:バーチャルソリューション」では、下記のバーチャルイベントの提案が行われた。

  • バーチャル 新商品発表会
  • バーチャル コンベンション
  • バーチャル 展示会
  • バーチャル 株主総会
  • バーチャル 立体音響技術

MCをバーチャルプレゼンターが務めた

バーチャルプレゼンターはシンユニティのタレント部に所属する社員が行っている

企業説明会や展示会、セミナーなどのあらゆるビジネスイベントはバーチャルで開催することができ、同社ではアニメーションやアートエフェクトで魅力的な演出を加え、未来感あふれるステージをバーチャル空間内で実現できるとしている。

リアルな会場での講演会を開催することが困難な状況や、遠隔地から参加が必要な場合に備えて、バーチャルでの会議参加を可能とするセキュアなシステムを開発。Webページからログインするだけでバーチャル空間で学術会議を聴講でき、パワーポイントの画像や映像といった資料も鮮明に見ることが可能だ。チャット機能などのリアルタイムな双方向性システム利用することで、実際の講演会により近い形で実現できるとしている。今後、スマホアプリでの聴講や、参加者同士の交流を可能にする機能などを追加とのこと。

イベントのライブ配信を行うためには「機材手配」や、専門的知識を要する「配信設定」 が必要だが、これまで数々のイベントを実施してきた同社ではこれらを全て担っており、いわゆるトータルプロデュースが可能だ。

今回の配信で使用した機材一覧は以下の通り。

https://www.pronews.jp/pronewscore/wp-content/uploads/2020/08/200807_SYMUNITY_event_systemzu.png

今回の配信システムズ
※画像をクリックすると拡大します

リアル×バーチャルセミナーの在り方

セミナーでは、リアル出演とVtuber出演をミックスした演出も行われた

「第2部:バーチャルセミナー」では、様々なゲストを招き、バーチャル空間上にグリーンバックでリアルタイムに撮影した演者を合成したセミナーが実施された。同セミナーでは、シンユニティグループで実際にバーチャルイベントを実施した感想や、新型コロナウイルスで変わりゆくイベントの在り方などが語られた。

リアル出演とVtuber出演の実際の様子

帝釈天のプロジェクションマッピングをバーチャル上で実現

帝釈天にバーチャル上でプロジェクションマッピングが行われた

「第3部:バーチャルエンターテインメント」では、さみしがりVtuber りむによる公演や、約15分のミニシアター「バーチャルイマーシブシアター」などのお楽しみイベントが行われ、最後には東京都葛飾区にある帝釈天でのバーチャルマッピングが実施された。

通常のプロジェクションマップではれば現地にて建物にマッピングを行うが、今回は撮影班の帝釈天からのカメラ中継映像にバーチャル上(画面上)でマッピングが行われた。通常のマッピング効果や様々なエフェクトをかけることでいかにリアルに見えるかにこだわったという。また、それだけでなくバーチャルだとわかるような演出も加えたとしている。プロジェクションマッピングのエンディングでは、新型コロナウイルスの影響で中止となった葛飾区の花火大会を再現するかのように花火があがった。リアルでは実現しなかったものをバーチャルで実現した事例となった。

エンディングでは新型コロナウイルスの影響で中止となった葛飾区の花火大会を再現

シニュニティグループの長崎氏にイベント実施のきっかけや思いをインタビュー

バーチャルイベントの視聴画面(Webブラウザ)

今回、シンユニティグループの長崎英樹氏にイベント実施のきっかけや、イベントにかける思いなどを伺った。

──今回のイベントを実施した理由を教えてください

私たちもそうなのですが、ほとんどのオンラインの仕事やイベントはカメラで撮って配信するだけのテレビ中継形式がほとんどです。オンラインイベントはリアルに見ることも・体感することもできないため、このような形式ばかりとなり、配信する側も、受け手(見る側)も退屈で、飽きていると思います。

世の中的にバーチャルに対する興味が増えています。しかし、発信する方はバーチャルに興味を持っていても、実際にバーチャル上で展示会や新製品発表会などがどのように実現・発信されるのかが、今まで事例がないためにイメージが湧きにくい状況でした。私たちもお客様に提案する際に「どういう感じになるの?」と聞かれることが多かったので、急いでサンプル映像を制作しました。

そのサンプルがある程度集まってきたので、これを皆様にお伝えしなければと思い、今回のイベントを実施しました。それぞれのシーンごとのサンプルをまとめて見せるだけではおもしろくありませんので、皆様に楽しんでいただけるコンテンツを足して、基本的にはライブで実施しました。

宣伝で「こんなことできますよ」というよりは、「展示会だとこのようなことができます」「新製品発表会だとこういったパターンがあります」というサンプル事例になればいいなと思っています。

──実際にバーチャルイベントのお問合せは増えていますか?また今後増えていくのでしょうか?

お問合せはすごく増えています。お問合せが多すぎてどうしようかなと思うぐらいです(笑)。しかし、なかなか実現されることがありません。

──どうしてバーチャルイベント実施に至らないのでしょうか?

バーチャルイベントのイメージができないからです。今回のイベントを見ていただくとわかる通り、実際にクオリティを担保してバーチャルイベントを実施するにはある程度の予算が必要ですが、バーチャルだとPC上で少し操作するだけだと思う方も多く、たくさんの機材と人手が必要なことを不思議に思う方が多いです。マーケットの教育といったらおこがましいですが、理解していただけるようにしなければと思っています。なので、今回のイベントも配信の裏側を含めて公開し、皆様に見ていただいて、ある程度の予算がかかることを理解していただければと思っています。

同イベントの前日などに、何名か配信現場を見に来ていただきましたが、この機材の量とスタッフの人数をみて驚いていました。当然、色々便利なソフトもありますので、そういったソフトを複合すれば人数を減らすこともできますが、映像解像度的なクオリティや確実性などを確保するためにはこの量の機材とスタッフが必要です。もちろん、予算があまりなく、ある程度のリスクを負うことをご了承いただければ、機材・スタッフを思い切って減らしてイベントを実施させていただくことも可能です。例えば、Zoomでの配信をご希望の場合、Zoom配信に詳しいスタッフだけを配置してライブ配信を行うこともできます。

ある程度ブランディングが確立されている企業様などは、配信を行うにも単なるカメラ中継ではなく、ある程度のクオリティを確保したコンテンツの発信が必要かと思いますので、そういった部分での需要はあると考えています。

イベントを実施した配信スタジオの様子

──今までプロジェクションマッピングなどのリアルイベントの経験もあり、オフラインもオンライン(バーチャル)イベントもできるというのは御社の強みになっていきますね

そうですね。今、オンラインイベントで忙しい会社のほとんどが配信会社で、私たちのようなリアルイベントを演出している会社のオンラインイベントは少し出遅れています。その中でも弊社はオンラインイベントを実施しているほうで、プロジェクションマッピングの時もそうでしたが、これは私たちの強みになるのではないかと思いました。

動画や弊社の営業からの説明を聞くと皆様興味を持っていただけます。あとは価格とクオリティのバランスをお客様に理解していただけるように努めていければと思います。

──ちなみに、今回のイベントはどのぐらいの予算感なのでしょうか

今回は大阪との中継も実施しましたが、東京スタジオのみで換算すると、配信、人件費、それまでの準備、コンテンツ制作などで700~800万円ぐらいだと思います。各ソリューションのコンテンツ制作までいれると莫大になります。各コンテンツの制作で約200~300万円ぐらいかけています。上映する映像もきちんとクオリティが高いものを制作しないとどうしてもチープな作品になってしまいます。

第2部:バーチャルセミナーの様子。バーチャル背景とグリーンバックで撮影した人物をライブで合成しているが、映像の質感など、特に違和感がない

──今回のイベントでは収録映像とライブ映像をミックスしてライブ配信を実施されていますが、全編ライブでの配信ではない理由はあるのでしょうか?

全部をライブで配信しようかという話もあったのですが、全コンテンツをライブ(生)でやるためにはものすごい数のスタッフが必要になります。会場も複数必要となりますので、すこし無理があるかなと思いました。もちろん、すべてライブで配信することもできます。あとは演者のほとんどが弊社の社員のため、プロではなく慣れていないため一発本番のライブはどうなんだろう?ということもあり、各コンテンツは事前収録した素材で、コンテンツの繋ぎをライブで実施しています。

──最後に、今後バーチャルイベントを検討されている方へのメッセージなどをお願いします

バーチャルイベントは新しいものなので、担当者の方がどうしたらいいかわからないことや、イベントを実施した際の効果測定部分などで、会社内でけっこういいところまで話が進むのですが、最終決定まで及ばないことが多いようです。

最終的な決定打となるのは、やはりデータです。視聴者がいつ来て、いつ離脱して、そして誰が再度訪問したかなど、全体イベントの中でどこが一番盛り上がったかなどが実数をみることですぐにわかります。テレビの視聴率と同じですが、そこは次のイベントを実施する際の参考になります。これは今までの展示会や配信と違い、遠慮がない分リアルにわかります。見た目の演出で体感価値をあげるということではなく、お客様のマーケティング的なデータをしっかりと習得して、それを次に活かす時に対価・価値が出るのではと思っています。マネタイズ化とうまく組み合わせられたら、今後リアルイベントが戻ったとしてもある一定数の需要があると考えています。

また、出不精だけれどもイベントを体感したい方は結構いらっしゃいます。弊社のアンケートシステムやチャットシステム、ダイレクトに会議システムなどで繋がるなど、参加意識や参加した感じがでるような、リアルに近いことを行っているので、そういったものを複合化させることでリアルを超えることは難しくても、近づけると思っています。

SYMUNITY xR HYBRID EVENT 2020 ~Online&Offline~アーカイブ映像