LUMIX Sシリーズの動画性能やBGH1のIPストリーミングを実現するアップデート発表
パナソニックは、LUMIXシリーズとBGH1の最新ファームウェアを無償公開すると発表した。対象となるのはS1H/S1/S1R/S5/BGH1で、公開予定時期は以下の通り。
■ファーム公開日
- BGH1:3月24日 10:00
- S1H:3月31日 10:00
- S1/S1R/S5 4月6日 10:00
■バージョン
- DC-S1H Ver2.3→Ver2.4
- DC-S1 Ver1.7→Ver2.0
- DC-S1R Ver1.7→Ver1.8
- DC-S5 Ver2.1→Ver2.2
- DC-BGH1 Ver1.0→Ver2.0
今回のファームウェアアップデートには2つの大きなトピックがあり、一つは動画RAWデータ出力の強化で、LUMIX Sシリーズの動画性能が向上する。もう一つはBGH1のIPストリーミングや動画RAWデータの機能強化が図られる。
■動画RAWデータ出力対応の強化など、LUMIX Sシリーズの動画性能を向上
-
●DC-S1Hの動画性能強化
- Blackmagic Design社製レコーダー「Blackmagic Video Assist 12G HDR」へのHDMI経由での動画、RAWデータ出力に対応。Blackmagic RAW記録が可能に ●DC-S1の動画性能強化
- ATOMOS社製「Ninja V」HDRモニター/レコーダーへのHDMI経由での動画RAWデータ出力に対応し、ProRes RAW記録に対応。
- 6K/5.9K/5.4K/Cinema4K動画SD内部記録に対応
- 4K60p/50p 10bit記録に対応
- 4:3/4Kアナモフィック動画記録に対応
- タイムコード記録に対応
- デュアルネイティブISOのマニュアル設定が可能 ●その他、DC−S1H/S1/S1R/S5の機能追加
- 動画撮影時、カメラの縦位置情報を記録する/しないをメニューで設定が可能
- DCカプラー使用時、エコモードの有効化に対応
- その他性能改善
■IPストリーミング・動画RAWデータ出力など、LUMIX BGH1の機能を追加
-
●DC-BGH1の機能追加
- PC経由のIPストリーミング機能(RTP/RTSPプロトコル)に対応
- HDMI経由での動画RAWデータ出力に対応
- PC接続時のSDカードフォーマット機能追加
- Genlock表示対応
- その他性能改善
項目 | 概要 | 対象モデル | |||
S1 | S1R | S5 | S1H | ||
機能追加 (S1H機能強化) |
Blackmagic Video Assist 12G HDRへの動画RAW出力 | ● | |||
機能追加 (S1機能強化) |
6K動画記録 | ● | 済 | ||
C4K動画記録 | ● | 済 | 済 | ||
4K60p/50p 10bit記録 | ● | 済 | 済 | ||
アナモフィック撮影 | ● | 済 | 済 | ||
ATOMOS NINJA Vへの動画RAW出力 | ● | 済 | 済 | ||
タイムコード | ● | 済 | 済 | ||
Dual Native ISOマニュアル設定 | ● | 済 | |||
機能追加 (ユーザー要望) |
縦撮り動画回転情報付加選択メニュー追加 | ● | ● | ● | ● |
DCカプラー使用時のエコモード有効化 | ● | ● | ● | ● |
S1Hがファームアップでブラックマジックワークフローに対応
LUMIXシリーズはこれまでS1HとS5がNINJA Vと連携してのProRes RAW収録を実現してきたが、今回のファームアップデートではBlackmagic DesignのVideo Assist 12G HDRとS1Hとの連携でBlackmagic RAW収録が可能になる。これによって、Premiereや他のポスプロのソフトを使わずに、直接DaVinci Resolveで編集できるようになる。
新しい記録モード対応のほか、音声データのHDMIの同時出力に対応、ライブビュー用のフォトスタイルがV-LogからのRec.709変換に固定など、内容は以前のNINJA VへのRAW出力のときにと同様にBlackmagic DesignのVideo Assistでも収録可能。
エリア | 解像度 | フレームレート | アスペクト | ビット深度 |
フルエリア | 5.9K(5888×3312) | 29.97p/25p/23.98p | 16:9 | 12bit |
S35 | C4K(4128×2176) | 59.94p/50p/29.97p/25p/23.98p | 17:9 | 12bit |
S35アナモ | 3.5K(3536×2656) | 50p/29.97p/25p/23.98p | 4:3 | 12bit |
■S1H+Blackmagic Design連携時のその他の機能
- 音声データのHDMI出力に対応(LPCM、内蔵マイク外部マイク/XLR対応)
- クリエイティブ動画モードのみで提供
- フォトスタイルはV-Logに固定
- SDカードへの同時記録は不可
細い点では、ATOMOSで記録した時はRAW出力データのV-Log/V-Gamut変換用LUTを提供していたが、DaVinci Resolveの場合は変換用LUTなしでV-Log/V-Gamutとして拾えると形になるので、そこの変換ファイルが1プロセス不要になる。そこだけの違いはあるが、基本的にS1H+NINJA V連携と内容は同じである。
ちなみにDaVinci ResolveはUltra HDまでしか対応してないので、オーバー4Kのモードを使うにあたってはDaVinci ResolveのStudio版が必要になる。
S1はNinja VにHDMI経由で動画RAWデータを出力し、ProRes RAW記録に対応
S1はS5発売以降、性能が一部S5に逆転されてしまって上位機種っぽくないと言われているが、今回改めてS5よりも上をいく動画機能の機能強化が行われる。
基本的には2020年11月5日に発表した「LUMIX DC-S1 Ver.2.0のファームウェア アップデートのダウンロードサービスを2021年春に開始」と内容と同じだが、若干新情報もある。例えば記録フォーマットに関しては、2020年11月の時点では5.9KやC4Kなどの動画記録に対応としてたが、6Kや5.4Kといってもモードにも対応。S1Hが搭載してる動画フォーマットがS1にも対応が広がる形になる。
■S1動画性能向上について
項目 | 概要 |
機能追加 (S1機能強化) |
動画RAWデータHDMI出力対応(ATOMOS) |
6K動画記録←6Kと5.4Kは新規発表 | |
C4K動画記録 | |
4K60p/50p10bit記録 | |
アナモフィック撮影 | |
タイムコード記録 | |
Dual Native ISOマニュアル設定 | |
機能追加 (ユーザー要望) |
縦撮り動画 回転情報付加選択メニュー追加←新規発表 |
DCカプラー使用時のエコモード有効化←新規発表 |
■S1に追加されたProRes RAW連携時の記録モード
動画画質 | 動画撮影範囲 | 解像度 | フレームレート | ビット数 | 音声 |
5.9K(16:9) | FULL | 5888×3312 | 29.97p | 12bit | LPCM |
25.00p | |||||
23.98p | |||||
4K(17:9) | APS-C | 4128×2176 | 59.94p | ||
50.00p | |||||
29.97p | |||||
25.00p | |||||
23.98p | |||||
アナモ3.5K(4:3) | APS-C | 3536×2656 | 50.00p | ||
29.97p | |||||
25.00p | |||||
23.98p |
■その他の機能
- クリエイティブ動画モードでのみ提供、[HDMI RAWデータ出力]をONにすることで有効
- 音声データの出力も可能、コーデックはLPCM固定
- フォトスタイルはV-Log固定
- 動画RAWデータのHDMI出力中は、SDカードに記録不可
- カメラのモニターファインダーには確認用にV-Log撮影時に相当する映像を表示、[V-Logビューアシスト]のLUTはプリセットの[V-Log_709]のみ可
S1Hと違う点としては、S1はもともと専用のアップグレードソフトウェアキー「DMW-SFU2」を使ってLog撮影や10ビット撮影に対応する仕様だったが、今回も同様にアップグレードキー適用によって動画RAWデータが使えるようになる。すでにアクティベートしている場合は、単純にファームアップしていれば動画RAWを使用可能。内部記録フォーマットのポイントとして、S1はS1Hほどの放熱性能を持っていないので、オーバー4Kの記録モードに関しては15分の時間制限が入っている。
さらにS1のアップデートでは、タイムコードの記録機能に対応する。S1HやGH5Sにはタイムコードに対応しているが、S1でもタイムコードのイン・アウトもできるようになる。また、デュアルネイティブISOに対応する。設定機能を追加することで、「自動切替」だけではなくて、低感度側の回路に固定や高感度側の回路に固定することもできるようになる。こういった機能は、S5にはできない内容になる。
カメラの縦位置情報を記録する/しないは全機種Sシリーズ共通でアップデート
全機種Sシリーズ共通でファームアップする内容もある。Sシリーズは動画をカメラの縦位置にして撮ると、スマホに転送した時に動画は縦転送されるメタデータを付与する仕組みになっている。そのカメラの縦位置情報をオン・オフする機能が追加される。例えば天吊で上から撮っている場合や寝転がって撮るみたいな時に、アウトプットは横のイメージだったのに、勝手に縦になってしまうみたいなことを防ぐことが可能になる。
それ以外に、DCカプラーで給電をしている時に、従来はエコモードを有効にできなかったが、エコモードを有効にできるようになる。つなぎっぱなしだがスリープにできるようになる。
BGH1はIPストリーミング対応や動画RAWデータHDMI出力に対応
BGH1のトピックは、IPストリーミングとRAW出力だ。IPストリーミングもともと予告してた内容の通りで、有線LAN端子を使ってIPストリーミングに対応する。RTP、RTSPプロトコル対に応することは告知していたが、それに加えて具体的なコーデック周りやH.264やH.265に対応。解像度も最大4K60Pまで対応する。
■BGH1ファームアップ項目
項目 | 概要 | 内容 | 対象モデルBGH1 |
機能追加 | IPストリーミング対応 | Ethernet経由のRTP/RTSPプロトコル・H.265/264のフォーマットに対応 | ● |
動画RAWデータHDMI出力対応 | ATOMOSのRAW記録に対応する | ● | |
LUMIX Tether経由のSDカードフォーマット | LUMIX Tether経由でもSDカードをフォーマットできるように改善 | ● | |
Genlock表示対応 | Genlockで同期されているときにモニターHDMI/SDI上)にマークを表示する | ● | |
有線LANケーブルを抜いた時の対応 | 有線LANケーブルを抜いた際に挿抜判別を行いネットワークランプを消灯させる | ● | |
縦撮り動画再生の改善対応 | 撮影時に動画を縦位置で撮影したかの情報をデータに書き込むかを設定する | ● |
高画質に配信したい場合やYouTubeで推奨してるビットレートに抑えて安全に配信したいニーズに応えて、最大4K60Pではあるものの、同じ解像度や同じフレームレートの中においてもビットレートをある程度調整しながら配信ができるさまざまなモードを設けている。
それに加えて、マイクロフォーサーズで初めての動画RAWデータ出力対応。フォーマットは、アスペクトが17:9の4Kのモード。解像度は4096×2160、DCI規格でフレームレートは最大60P、ビット深度は12ビットで外部出力可能。また、アナモフィック撮影の4:3、最大60Pのモードにも対応する。
カメラ | RAWデータフォーマット | |||
Model | アスペクト | 解像度 | フレームレート | Bit深度 |
BGH1 | 17:9 | 4096×2160 | 23.98p/25.00p/29.97p/50p/59.94p | 12bit |
アナモ4:3 | 3680×2760 | 23.98p/25.00p/29.97p/50p/59.94p | 12bit |
■その他の機能(他機種共通)
- 音声データのHDMI出力に対応(LPCM、内蔵マイク、外部マイク/XLR対応)
- クリエイティブ動画モードのみで提供
- フォトスタイルはV-Logに固定
- SDカードへの同時記録は不可
■その他の機能(BGH1独自)
- RAWデータ出力時にもSDI出力は使用可能
BGH1独自の機能として、HDMIからRAWデータ出力時もSD出力は使用可能が特徴になっている。SDI側でプロキシ的に使う、もしくはメニューの確認にも使える。
その他の細いでは、GENLOCKは他のカメラと同期している状態の時に同期していることがわかるように画面表示を出したり、LUMIX TetherからSDカードをフォーマットすることができるようになる。