Blackmagic Designの発表によると、Huluオリジナル作品であるオムニバスドラマ「息をひそめて」がBlackmagic URSA Mini Pro 4.6K G2で撮影されたという。同作の編集、グレーディング、フィニッシングにはDaVinci Resolve Studioが使用されており、編集にはDaVinci Resolve Speed EditorおよびDaVinci Resolve Editor Keyboardも合わせて使用された。
2021年4月23日にHuluで配信が始まった「息をひそめて」は、2020年のコロナ禍に多摩川沿いで生きる人々の日常や人間模様を綴った全8話のオムニバスドラマ。国内外で多数の賞を受賞してきた中川龍太郎監督による作品で、夏帆、村上虹郎、安達祐実、三浦貴大、瀧内公美、光石研、斎藤工ら実力俳優陣がキャスティングされている。
コロナ禍で制作された同作の撮影にはBlackmagic URSA Mini Pro 4.6K G2が使用されている。撮影監督の上野千蔵氏は次のようにコメントしている。
上野氏:カメラはほぼ1台で、時々もう1台Blackmagic URSA Mini Pro 4.6K G2を追加して使っていました。作品が静かな雰囲気だったので、カメラワークもなるべくフィックスで、照明もできるだけ自然光を活かすように心がけました。G2はラティチュードが広いため採用しました。
編集は株式会社インターセプターの田巻源太氏が担当し、DaVinci Resolve Studioを使って行われた。
田巻氏:自宅は弊社のスタジオとVPNで接続してあるので、そのままスタジオのデータベースサーバーに直結しています。そのため一人で編集する場合は自宅のM1 MacBook ProとDaVinci Resolve Speed Editorを使って行い、監督の立ち合いが必要な場合にはスタジオで同じプロジェクトを開いてDaVinci Resolve Editor Keyboardを使って編集作業を行いました。
DaVinci Resolveはタイムコードの同期をとっておけば、ビデオとオーディオの同期も一瞬でできます。今回はオーディオにシーンやテイクの番号をメタデータとして仕込んでおきました。
そうすると、DaVinci Resolveのメディアページでビデオとオーディオの同期を取れば、ビデオクリップにもそのメタデータが自動的に反映するので編集の準備がワンボタンで終わります。これはかなり効率がいいです。すぐに編集を始められるし、予算削減にも寄与します。これは他のNLEソフトウェアよりも強いと思います。
同作のポストプロダクション作業は、オフライン編集からフィニッシングまで基本的に全てDaVinci Resolveベースで行ったという。同作のプロデューサーである株式会社スプーンの佐野氏は次のようにコメントしている。
佐野氏:田巻さんが編集したものをIMAGICAでグレーディングしましたが、同じDaVinci Resolveを使っていたので作業がシームレスでいつでも編集に戻れるのが本当に便利でした。実景を大事にした作品だったので、編集後にもっとショットが必要だと感じて追加で撮影してもらうことになったのですが、追加素材もグレーディング中にカラリストさんが簡単に差し替えできたので効率的でした。
また、ポストプロダクション作業をDaVinci Resolveで統一したことで、安心感を持ってオンラインやフィニッシング作業に臨めることにも繋がったという。
田巻氏:編集時にこのショットがちゃんと繋がるか、という判断をするのにも便利でした。実は、夜のシーンで画が足りないところがあって暗い部屋でのシーンに、明るい場所で撮った役者さんのショットを使うことになりました。その時に私のスタジオで、DaVinci Resolve Advanced Panelを使ってテストグレーディング的なことを編集時に行って、違和感なく色を合わせられるかを確認しました。
もし他の編集ソフトウェアを使っていたら、本当に同じような結果になるかわかりませんが、今回はオフライン編集もグレーディングもDaVinci Resolveを使っていました。このレベルまでは最低限でもショットの色を合わせられるため、本番のグレーディングではもっといい結果になるという確信を持てました。
佐野氏:今回の作品では、河原で撮影した10分間ほどの演奏シーンがあります。マジックタイムでの撮影だったので、撮影中にも太陽の状況が刻一刻と変化していきます。撮影後にLUTをあてただけの素材を見ると、全く繋がらないのではと不安だったのですが、オフライン編集時に田巻さんに色を調整してもらって、これなら大丈夫と安心して作業を進められたのは良かったですね。
同作はSDRとHDRの2バージョンを納品する必要があり、上野氏もグレーディング作業に立ち会った。
上野氏:中川監督から、今回の撮影に関して私が普段、Instagramで上げている写真や映像のトーンで撮って欲しいと言われていました。それがどちらかというとマットで絵画的なトーンで、階調があればあるほどいいという訳ではなく、「見えすぎない」ように多少抑え気味にしてもいたので、正直HDRにする必要性があるのかと思っていましたが、実際DaVinci Resolveでグレーディングした結果を見て驚きました。
自分の意図したトーンは守られつつ、カメラが捉えた細かいディテールや被写体の立体感がより出ている印象です。今回は朝日や夕日などのシーンが多い作品だったのですが、HDRで観ると本当に綺麗な映像が撮れたなと思います。
佐野氏:今回は撮影からポストプロダクションまでBlackmagic Design製品を使ったのですが、トラブルもなく、とてもスムーズにいきました。また、DaVinci Resolveは無償版もあるので、制作スタッフも多く使わせてもらっています。こういったものを常にアップデートして、さらに誰でも使えるようにしてくれる姿勢は素晴らしいと思います。