Blackmagic Designの発表によると、ヒビノ株式会社が提供するバーチャルプロダクションスタジオ「Hibino VFX Studio」にBlackmagic URSA Mini Pro 4.6K G2やATEM Television Studio 4Kを含む、同社の12G/光ファイバーワークフローが導入されたという。
Hibino VFX Studioは国内で早くからインカメラバーチャルプロダクションのサービスを導入した施設のひとつとなっている。
ヒビノはコンサートやイベントでの音響や映像システムの企画立案、レンタル、オペレーション業務、音響及び映像機器の輸入販売などを行っている。今年新しくオープンした「Hibino VFX Studio」は、長年に渡りLEDディスプレイを扱ってきた同社の豊富な経験を活かし、インカメラVFXおよびその他のバーチャルプロダクション技術に応用することで、国内有数のバーチャルプロダクションとなっている。
ヒビノ株式会社Studio Producerの東田高典氏はスタジオの設立について次のようにコメントしている。
私たちは本来、コンサートやイベント業をやっている事業部ですが、コロナの影響でそれらの業務がストップして、イベントで使用していたLEDディスプレイの在庫が全く動かないという状況になりました。それを何とか動かせるように、と活路を見出したのがこのバーチャルプロダクションだったのです。初めは配信ライブなどでLEDを活用したXR(VR/AR/MRなどの仮想空間技術)制作を行っていましたが、その技術を応用してこのインカメラVFXスタジオを作りました。
数々のライブプロダクションを手掛けてきたヒビノには、他のバーチャルスタジオにはない強みがあるという。
他社のバーチャルスタジオはそのスタジオ内で完結して、システムを持ち出すことはまずないかと思います。弊社は本来イベントなどで機材を持ち込んで仮設で組むことをずっと行ってきました。このスタジオでは撮影できる規模が限られてしまいますが、もっと大きなスタジオで撮影したい場合はHibino VFX Studioのシステムを大型スタジオに持ち込んで長期の撮影で使用することができます。弊社としてもそういった運用を目指しています。まずはこのスタジオを一度体験して、大規模な撮影にも利用していただきたいですね。
同スタジオにはROE Visual社製の高解像度LEDディスプレイがステージを覆うように正面、天井、両サイドに設置されており、そのステージをURSA Mini Pro 4.6K G2(付帯設備。持込み対応可)で撮影できるようになっている。URSA Mini Pro 4.6K G2に装着されたカメラトラッキングシステムによって、カメラの位置情報やレンズのズーム・フォーカス情報が瞬時にメディアサーバーに送られる。これによりメディアサーバーはカメラがバーチャル空間内でどこに存在するかを検知し、Unreal Engineによる3DCGの背景がそれらの情報に合わせてリアルタイムで書き出されていく。
同スタジオはBlackmagic Designの12Gおよび光ファイバーのインフラを構築しており、スイッチャー、ルーター、モニター、コンバーター、そしてポストプロダクション用のDaVinci Resolveなどが含まれている。URSA Mini Pro 4.6K G2のカメラ出力はBlackmagic DesignのATEM Television Studio 4Kスイッチャーを経由してSmart Videohub 40×40ルーターに送られ、そこからVideoAssist 12G HDRおよびSmartView 4Kを含む各種モニターに確認できる。また、カメラフィードはATEM Camera Control Panelを使用して、リアルタイムでカラーコレクションされる。その他にもStudio Fiber Converter、Camera Fiber Converter、Studio View Finder、DaVinci Resolve Studio、Teranex Quad SDI to HDMI 12Gコンバーターなどが導入されている。
ヒビノ株式会社Studio Producerの菊地茂則氏は次のようにコメントしている。
私たちはスタジオ開設に向けてテスト撮影を繰り返しました。バーチャルシステムとの親和性を図るためにネイティブ24P/30P/60Pに対応したカメラを必要としていて、URSA Mini Pro 4.6K G2の購入を決めました。
またマウントが豊富なので、様々な種類のレンズが持ち込まれた場合でも対応可能で、付帯設備としても設定しました。撮影ではお客様がカメラを持ち込まれることも多いですが、RedSpyのカメラトラッキングシステムは多種なカメラとレンズに対応しています。
菊地氏はインカメラVFX撮影を使ったバーチャルプロダクションには、移動や待機にかかる時間やコストを削減したり、ポストプロダクション工程を短縮するといった利点のほかに、クリエイティブ面でもメリットがあると説明する。
LEDで背景を映して撮影することによって、狙い通りの照明効果を作ることができます。グリーンバックを使う場合は、被写体に均一に光を当てないといけないため照明効果を作りにくいです。また、グラスなどの透明な物への抜けや反射の表現に関してもLEDは優れています。演者にとってもグリーンバック撮影のように背景を想像しながらではなく、実際に背景が投影してあるため演技がしやすいなどメリットは大きいです。
ライブコンサートやライブイベントでの豊富な経験を蓄積しているが、ライブではないスタジオ事業は新しい分野。ヒビノ株式会社のVideo Engineerである小林立幸氏はBlackmagic Design製品を導入したことについて次のようにコメントしている。
Blackmagic Designのシネマカメラはメニューが分かりやすく、カメラマンではないスタッフでも操作しやすいです。GUI(グラフィックユーザーインターフェース)が他のBlackmagic Design製品と共通している点も使いやすいですね。また、クレーン雲台にカメラトラッキングセンサーを載せて撮影するので、積載リミットを考慮するとG2カメラ本体が軽量なこともよかったですね。
弊社は撮影して完成品を作っていくということに関してはまだ初めて経験する事が多いため、機材を同じメーカーで揃えることで、技術サポートの方もワークフロー内の多くの機材を把握でき、ノウハウを溜めやすいと思います。