ソニー「M2 Live」説明画像

ソニーは、アマゾン ウェブ サービス(AWS)との連携の強化を図りながら、映像制作業界のデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進していくことを発表した。その一環として、AWSを活用したクラウド中継システム「M2 Live」の提供を2022年4月開始する。参考サービス利用料は、月額税込10万円より(価格は契約プランにより異なる)。

展開中のファイルベース クラウドソリューション

ソニーは、ファイルベースのクラウドソリューションとして、映像制作業界に向けた効果的なメディア管理・運用を実現する統合プラットフォーム「Ci Media Cloud Services」を既に導入している。加えて、今後導入予定のカメラ連携クラウドサービス「C3 Portal」や、異なるマイクロサービスを自由に構築可能なクラウドソリューション「Media Solutions ToolkitをAWS上に展開している。「Media Solutions Toolkit」は、自社内で運用のシステム上だけでなくパブリッククラウドへの展開も可能としている。

新展開するライブソリューション~クラウド中継システム 「M2 Live」

同社は、ライブソリューションであるクラウド中継システム「M2 Live」をAWS上でのソフトウェア提供サービス(SaaS:Software as a Service)として追加する。M2 Liveは、AWSのクラウドに展開することで、スイッチャーなどの機器を設置・設定することなく中継制作を実現できるため、設置の時間や場所の制約を低減することができる。

このM2 Liveを用いて2021年10月、株式会社フジテレビジョン、株式会社サガテレビと共同でリモート映像制作ワークフローによる効率的なライブ番組制作の実証実験を実施した。

また、ソニーの子会社であるネヴィオンは、2021年6月にAWSが主催したAWS Cloud Digital Interface(AWS CDI)の相互運用実証実験に参画し、クラウドを活用したライブ制作と配信、およびAWS CDIの実証性を確認。AWS CDIは、AWS上で4K60Pまでの非圧縮信号をやり取りできるインターフェースとしている。

新商品、実証実験等の詳細は以下の通り。

遠隔制御が可能で、配信プラットフォームとも親和性の高いクラウド中継システム「M2 Live」

ライブ映像制作に向け、遠隔からの映像・音声の切り替えやグラフィックス挿入などが可能なクラウド中継システム「M2 Live」を発売する。このサービスにより、初期投資を抑えかつ短い準備期間で、ライブ映像制作の効率化が可能になる。

M2 Liveは、インターネット配信や報道中継等の様々なライブ映像制作用途を想定し、映像のスイッチング、テロップの重畳、動画ファイル再生等、多様な映像処理をクラウド上で実現する。中継現場で映像をリアルタイムに切り替えて番組制作を行う中継車などの役割がクラウド上に構築されるため、場所を選ばず遠隔からの番組制作が可能。

また、様々な映像入力フォーマットに対応し、SRTやRTMPといった汎用プロトコルにより幅広いカメラとの連携が可能で、XDCAMメモリーカムコーダー「PXW-Z280」や「PXW-Z190」からはソニー独自のQoS技術に対応することで、より安定した映像転送が実現できる。さらにスマートフォンに入力した映像を直接「M2 Live」へ伝送するモバイルアプリも同時開発し、より機動性の高い撮影、伝送、配信システムを実現できる。

クラウド上で制作した映像をダウンロードすることなく直接動画配信サービスに入力でき、昨今ニーズが高まっているインターネット配信との親和性の高いワークフローを構築することが可能としている。

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クラウド中継システム「M2 Live」概要図
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2.フジテレビ、サガテレビとの「M2 Live」を用いた遠隔制御による番組制作の実証実験の実施

2021年10月14日に、株式会社フジテレビジョン、株式会社サガテレビと共同で、クラウド中継システム「M2 Live」を用いた遠隔制御による番組制作の実証実験を実施し、遠隔からのライブ番組制作を行った。

東京・新宿と佐賀県の2か所で撮影した映像を5G・4G LTE通信を介して「M2 Live」へ送信し、東京のフジテレビ本社およびサガテレビより、クラウド上の映像・音声をリアルタイムで切り替えながら、YouTube(非公開チャンネル)にライブ番組を配信。映像を中継システムに送信する際には、SRTやRTMP、ソニー独自のQoS技術を用いたストリーミングなど複数の入力信号を用い、通信には5Gミリ波帯対応デバイス「Xperia PRO」などを活用した。

今回の実証実験では、従来は中継車を撮影地の2か所に配置する必要のあった屋外からのライブ中継を、クラウド上のシステムで代替し実現。初期コストを抑えることのできる「M2 Live」により、今後効率的なライブ制作の運用が見込めるという。

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実証実験の概要図
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ソニー「M2 Live」説明画像
撮影現場での使用機材(左)、局内での映像制御操作(右)

3.AWS CDIの実証実験への参画

ソニー株式会社の子会社であるネヴィオンは、2021年6月にAWSの主催するAWS CDIの実証実験に参画した。13社が参画し、AWS CDIを使用してクラウドで非圧縮ビデオ信号(最大4K)を相互でやり取りできることを確認した。また2020年夏には、地上のSDI/IPコンバーターとクラウド間で、JPEG XSで圧縮されたST2110信号の送受信に成功しており、ネヴィオンではクラウドへの対応を進めているとしている。

ソニーとネヴィオンは、両社の優れたIP技術とクラウドを組み合わせることにより、局内・局外でやり取りされるIPの映像信号とクラウド上の映像信号を、統合的に制御・管理・監視できるソリューションの開発を目指しているという。実現すれば、制作システムだけでなく、回線システムや、業界で注目されているマスターなどの送出ステムのクラウド化が進み、さらにシステムが自社内の運用環境(オンプレミス)にあってもクラウドにあっても、有機的に信号のやり取りができるシステムソリューションの提供が可能になるとしている。

4.AWSとの連携

ソニーは、クラウド中継システム「M2 Live」など様々なクラウドソリューションのプラットフォームとしてAWSを活用しており、映像制作業界のDX推進に向けてAWSとの連携を進めている。また、AWSと連携するシステムの構築支援を強化するためAWS認定資格者の拡大にも努めているという。