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「ドライフラワー-七月の部屋-」© Sony Music Labels Inc.
Blackmagic Designの発表によると、現在Huluで配信中(日本国内のみ)のオリジナルドラマ「ドライフラワー-七月の部屋-」のグレーディングに、DaVinci Resolve Studioが使用されたという。同作のグレーディングは株式会社モイのカラリストであるクロ・チャン氏が担当した。
同作は、シンガーソングライター・優里の楽曲「ドライフラワー」と「かくれんぼ」の世界観をドラマ化した作品。男女の出会いを描いた第1話と男性視点で二人の関係を描いた第2話、女性視点の第3話で構成され、同じ出来事を男女それぞれの視点で描写することによって、視聴者に異なる印象を与えるように制作されている。
カラリストのチャン氏は、DaVinci ResolveおよびDaVinci Resolve Mini Panelを使って、登場人物二人の微妙な感情をグレーディングで表現した。
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チャン氏:作品全体はシネマルックを心がけてグレーディングしました。ノードとシェイプを多用してショット内の光源の位置に合わせて照明効果を作りました。また、誰の目線で物語が描かれるかによって同じシーンでも伝えたい雰囲気が変わるので、グレーディングのスタイルを変えて、登場人物の感情を伝えるようにしました。
ハッピーなシーンでは明るめにして若干色が抜けたような色作りをして、ビネット効果も使っていません。ただ、作品で象徴的な役割を果たす花は、サチュレーションを上げて色を強調しています。対して、悲しいシーンではコントラストを高めにしてビネット効果で周りを暗くしました。また、二人がケンカしているシーンは、全体の色をより強めにし、コントラストを上げて、彼らの緊張感を表現しました。
同作は同じシチュエーションで撮影されているシーンが多いが、第2話は恋人の気持ちの変化に気づかない男性の目線で描かれているため、比較的柔らかいトーンが目立つ。それに対して第3話では、恋人と気持ちがすれ違っているのを悲観する女性の気持ちを表すため、より暗めでコントラストの高いトーンになっている。
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エピソードごとに、同じシーンでもグレーディングを変えています。例えば、寝室で撮影したシーンでは、第2話の男性目線での回では窓からのハイライトを強調して、明るくコントラストも低めにしていますが、第3話の女性目線のシーンでは全体的に暗めにしてコントラストを上げて、暗部にグリーンを足すなどして寒々しい感じを出して、視聴者に彼らの感情を伝えるようにしました。
女性が暗い部屋で泣くシーンがあります。ここは元素材にはノイズがのっていたんですが、DaVinci Resolveのノイズ除去ツールでノイズを消しています。DaVinci Resolveのノイズ除去の性能は、搭載された当初からかなり改善されています。以前はプラグインでノイズ除去を行なっていましたが、今では全く使わなくなりました。また、部屋に飾られている花は元素材では色が鮮やかでしたが、薄れていく二人の関係性を表現するため、ここではサチュレーションを落としています。
同作はDaVinci Resolve 17でグレーディングされた。DaVinci Resolve 17の新機能について、チャン氏は次のように述べる。
新しく搭載されたHDRグレーディングとカラーワーパーはとても気に入っています。HDRグレーディングは、通常のプライマリーカラーホイールに比べて、より細かく調整できるのでショットのバランスを整える時に使いました。バランスではHDRグレーディングを使い暗部やハイライトを細かく調整して、スタイライズにはプライマリーカラーコントロールを使用しています。プライマリーはミッドトーンにも色の影響が出るので、全体的に色をのせたい場合はこちらの方が速くて使いやすいんです。
カラーワーパーは色のディテールを調整するのにとても便利です。今まではクオリファイアーやカーブを使っていましたが、カラーワーパーはそれらを使うより速く思い通りに調整できました。忙しいスケジュールでしたが、便利な新機能のおかげで効率的に作業することができました。
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