Blackmagic Designは、ライブプロダクションスイッチャーの新シリーズ「ATEM Constellation HD」を発売した。同シリーズは、10系統の3G-SDI入力を搭載した1 M/Eモデル、20系統の3G-SDI入力を搭載した2 M/Eモデル、40系統の3G-SDI入力を搭載した4 M/Eモデルの3機種を取り揃えている。価格はUS$995〜。
全機種とも、各SDI入力での完全なフォーマット変換、各M/E列に4つのAdvanced Chroma Keyer、各M/E列に1つのDVE、メディアプレーヤー、大容量のメディアプールなど、多数の機能に対応している。同新シリーズは、ATEM Miniからプロ仕様の機器へのアップグレードを考えているユーザーや、スタジオへの近代的なスイッチャーの導入を検討している大規模な放送局向けに設計されている。
ATEM Constellation HDシリーズは、コンパクトなラックマウントサイズにコントロールパネルを内蔵しており、セットアップ時や緊急時にスイッチャーを操作可能。また、大画面LCDが搭載されており、プログラム出力の確認や、スクリーンメニューでのスイッチャー設定の変更が可能だ。コンパクトなため、移動型のライブプロダクションに最適。背面には3G-SDI入力、3G-SDI Aux出力、バランスオーディオ、コントロール用のイーサネットの接続が搭載されている。最上位機種の4 M/Eモデルは、シリアルコントロール用のRS-422、MADIデジタルオーディオの接続も搭載。
フロントパネルにコントロールパネルが内蔵されているため、いつでもATEM Constellationの所へ行き、操作が可能。フロントパネルに内蔵されたコントロールボタンは、フルサイズのパネルに搭載されているのと同じプレミアム品質であるため、極めて信頼性に優れている。フロントパネルからは、キーヤー、メディア、フェード・トゥ・ブラックもコントロール可能。また、フロントパネルのLCDおよびメニューボタンでは、スイッチャーのほぼすべての操作にアクセスできる。
ATEM Constellation HDシリーズには、最大で40系統の独立した3G-SDI入力を搭載したモデルもラインナップ。各入力には、それぞれ専用のアップ/クロスコンバーターが搭載されており、あらゆる1080p入力ソースをスイッチャーのビデオフォーマットに変換可能。各スイッチャーのSDI入力で異なるテレビフォーマットを使用でき、すべての入力が問題なく機能するとしている。
完全に独立した3G-SDI出力を多数搭載。小型の1 M/Eモデルであっても、6系統の3G-SDI出力を搭載。2 M/Eには12系統、4 M/Eには驚きの24系統の3G-SDI出力が搭載されている。あらゆるSDI入力やあらゆる内部ソースを個別に各SDI出力にルーティング可能。SDI出力を個別収録に使用することもできる。再同期されタイムコードがマッチしたスイッチャー入力が各デッキに送信される。全SDI出力は、プログラムオーディオ、RP-188タイムコード、SDIカメラコントロール、タリー、トークバックに対応している。
1 M/Eモデルは1つのマルチビュー、2 M/Eは2つの独立したマルチビュー、4 M/Eは4つの独立したマルチビューを搭載。すべての外部SDI入力およびすべての内部ビデオソースをあらゆるビューにルーティング可能。マルチビューはすべて、完全にカスタマイズ可能で、それぞれ4、7、10、13、16のビューに設定できる。タリーボーダー、ソースのラベル、VUメーターを各ビューにオーバーレイとして追加することも可能。また、各ビューで赤と緑のタリーボーダーを確認できるため、オンエアになっているソースを把握できる。
ATEM Constellation HDは、ミックス、ディップ、ワイプなどのネイティブトランジションに対応。すべてのトランジションはシステムコントロール・メニューでカスタマイズでき、ボーダーの色、幅、位置、方向などを調整可能。ATEM Constellationは、DVEトランジション用にパワフルなデジタルビデオ・エフェクト・プロセッサーを搭載しており、現在の映像をスクリーンの端へスクイーズさせて、その下から新しいソースを表示可能。DVEはグラフィックワイプ・トランジションの作成にも使用可能。
トークバック機能を内蔵。トークバック用に、5ピンXLRヘッドセットコネクターをサポートしており、リアパネルのRJ12コネクターを使用して、ClearComやRTSなどの業界標準のトークバックシステムに接続可能。プログラム/エンジニア用ループ、ヘッドセットマイク用のサイドトーンコントロール、プログラムミックスなど、トークバックを完全にコントロールできる。ATEM Constellation HDはSDIチャンネル15と16を使用したSDIトークバックもサポート。Blackmagic Designカメラと双方向通信が可能。チャンネル13と14はエンジニア用トークバックに使用できる。
内蔵メディアプールは放送品質のRGBAグラフィックおよびアニメーションを保存でき、2つまたは4つのメディアプレーヤーから瞬時に再生可能。内蔵のメディアプールはメディアプレーヤーで使用するグラフィックを保存でき、1 M/Eモデルでは20個のスチルと200フレームのアニメーション、2 M/Eでは40個のスチルと400フレームのアニメーション、4 M/Eでは60個のスチルと600フレームのアニメーションを保存可能。
ATEM Constellation HDは多数のATEM Advanced Chroma Keyerを搭載しており、高品質のクロマ/ルミナンスキーを作成できるため、ニュース番組やバーチャルセットを使用する番組に最適。クロマキーは非常にパワフル。カラーピッカーで背景色をサンプリングしてキーパラメーターを自動生成できる。エッジやフレアを正確にコントロールできる他、フォアグラウンドのカラーコレクターを使用して、フォアグラウンドレイヤーの「ルック」をバックグラウンドレイヤーとマッチさせることでシームレスに合成可能。キーヤーは、パターンキーやDVEキーにも使用できる。1 M/Eモデルでは4つ、2 M/Eでは8つ、4 M/Eでは16のATEM Advanced Chroma Keyerを搭載している。
各M/E列に4つのアップストリーム・クロマキーヤーが搭載されているため、バーチャルセットの構築に最適。多数のATEM Advanced Chroma Keyerに対応しているので、各カメラにキーヤーを使用して、カスタマイズしたバックグラウンドの上にカメラ映像をシームレスに合成できる。1 M/Eモデルでも、4台のカメラを用いたバーチャルセットの生成に必要な数のキーヤーを搭載している。バーチャルセット用に外部のイメージプロセッサーを使用したり、事前にレンダリングしたスチルイメージをメディアプレーヤーとメディアプールからロードして、固定カメラのバーチャルセットを構築できる。マクロを設定して、カメラを変更したり、メディアプレーヤーに適切な背景をロードすることも可能。
M/E列のDVEに加え、2 M/Eおよび4 M/EモデルはSuperSourceマルチレイヤープロセッサーを搭載。ATEM Constellation HDは、4つのDVEレイヤーとバックグラウンドレイヤーを1つの追加の入力ソースとして認識する。スイッチャーの全ビデオ入力は、SuperSource DVEとして使用でき、メディアプールのカスタムバックグラウンドにレイヤーされる。SuperSourceは、追加のマルチレイヤーVFXスイッチャーを内蔵しているかのように機能するとしている。SuperSourceは、インタビューを受けている人をピクチャー・イン・ピクチャーで表示する際に最適。メインのDVEを他のジョブ用に空けたまま、エフェクトを設定可能。ATEM 4 M/E Constellation HDには、2つの完全に独立したSuperSourceプロセッサーも搭載されている。
またSDI入力は、エンベデッドオーディオを扱うことができ、あらゆるビデオ入力からのオーディオをミックスできる。プログラム出力には、トークバック、タリー、カメラコントロール情報が含まれるため、スイッチャーのSDI出力のいずれかをカメラに接続して、プログラムリターン、カメラコントロール、トークバックを使用できる。
また、Fairlightオーディオミキサーを内蔵しており、ATEM Constellationでは複雑なライブのサウンドミキシングが実行可能。内蔵ミキサーは最大156の入力チャンネルに対応。オーディオはすべてのSDIビデオ入力からデエンベデッドされ、オーディオミキサーに送られる。4 M/Eモデルは、MADIオーディオ入力用に追加のオーディオミキサー入力チャンネルも搭載。各入力チャンネルは、6バンドのパラメトリックEQ、コンプレッサー、リミッター、エクスパンダー、ノイズゲート、完全なパン機能をサポート。また、アナログ入力、トークバックマイク、メディアプレーヤー用のチャンネルも搭載している。これらのすべてのオーディオ機能は、ATEM Software Controlまたは互換性のあるMackieのコントロールパネルから操作可能。
無償で同梱されているATEM Software Controlパネルを使うと、スイッチャーを完全にコントロールできる。ATEM Software Controlのインターフェースは機能的なデザインになっており、視覚化されたスイッチャーやパラメーターパレットで、すばやく調整できる。ATEM Software Controlは、カメラコントロール、オーディオミキシング、メディア、マクロプログラミングなどにアクセスでき、HyperDeckディスクレコーダーのコントロールも可能。また、スイッチャーの状態をXMLファイルとして保存でき、メディアはメディアプールでバックアップされる。
M/Eボタン列に内蔵されたLCDは、入力ボタンのラベルを動的に表示。1 M/Eモデルは1列のM/Eに10個の入力ボタン、2 M/Eモデルは2列のM/Eに20個ずつの入力ボタンを搭載。大型の4 M/Eモデルは、4列のM/Eに40個ずつの入力ボタン、さらに4つの独立したシステムコントロールLCDスクリーンを搭載している。
なお、購入時の価格にすべての機能が含まれており、全機能がいつでもフルに使用できる状態だ。特定の機能を使用するためのライセンス費や継続的な月額費用は不要。プログラム開始の5分前にライセンスが切れてしまうようなことはないという。マルチビュー、SuperSource、DVE、ATEM Advanced Keyerなどの機能もいつでも使用可能だ。
Blackmagic DesignのCEO グラント・ペティ氏は次のようにコメントしている。
この新しいライブプロダクションスイッチャー・シリーズを発表できることを大変喜ばしく思っています。多数のハイエンドの放送局が、Ultra HDは必要ないが、スタジオをアップグレードしたいと考えているからです。
また、ATEM Miniユーザーの多くが、画期的な作品を生み出しており、その制作規模の拡大を考えています。そういったユーザーに向けて、配信チャンネルの成長に対応できるように、より高度なスイッチャーを提供し、機器をアップグレードできることは、本当にエキサイティングです!
なお、ATEM Constellation HDスイッチャーは、NAB Show 2022のBlackmagic Designブース(ブースNo.N302)で展示されている。