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クリエイターたちの新たなクリエイティブ拠点の場を目指す
ソニーPCLは、新たな表現手法や体験を生み出し発信する場として、「清澄白河BASE」を東京都江東区に開設し、2022年2月1日より運営を開始した。オープンするにあたり、内部や設備を報道陣向けに公開した。
ソニーPCLのバーチャルプロダクション技術導入はどこよりも早く、どこよりも熱心だ。2020年8月、東京都品川区上大崎本社にバーチャルプロダクションのデモルームを開設。その様子はPRONEWSでも以前、「ソニーPCLはバーチャルプロダクション・ラボを進化させ続ける」で紹介をした通りだ。
その後、2021年4月には東宝スタジオに場所を変えてバーチャルプロダクション手法の研究開発・事業拠点を開設し、8KサイズLEDの設置やラウンドした設定など様々な可能性を検証。そして、2022年2月1日、今回紹介する清澄白河BASE開設に至るまでにさまざまな環境や実績を経験してきている。
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清澄白河BASE内には常設のバーチャルプロダクションスタジオが開設されている。国内大型LED常設スタジオは多くないので、ビッグニュースといえるだろう。今後は、CM、映画、ドラマ、ミュージックビデオからオンラインイベントまで幅広いジャンルの映像コンテンツ制作をはじめ、ライブの配信も取り組む予定だという。
また、ソニーのCrystal LEDの常設スタジオとして、大型映像を高精細なディスプレイに出力したときのシミュレーションや渋谷の8K対応編集室と連携した大型映像試写やカラーコレクションの場所としての活用も考えているともしている。
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清澄白河BASEは名称にもこだわりがあり、クリエイターと新たな映像表現を追求していく場として「バーチャルプロダクション」のワードはあえて入れずに「BASE」と命名。今後は、積極的に新しい制作技術を取り入れていきたいという想いを込めたという。背景のアセット作りやクリエイターと一緒に映像表現を高めていくワークショップを行う構想もあるとしている。
スタジオ仕様
清澄白河BASEはオフィスビルの5階だが、撮影スタジオに必要な空間に柱がない大型施設の中にある。
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背景エリアは、高さ5.4m、幅15.2mのディスプレイを5°にラウンドさせた巨大なディスプレイの設置を実現している。
清澄白河BASEの中でも目を引くのは、背景エリアのディスプレイにソニーのCrystal LEDのBシリーズを使っているところだ。Bシリーズは高輝度と低反射、広視野角を特徴としており、さまざまな角度から照明を焚くバーチャルプロダクションに向いているモデルである。
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特に目を引くのは撮影エリアの解像度で、幅は9,600×3,456ピクセルを実現している。8K以上の解像度で映し出される映像は圧巻だ。
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天井にも環境照明を作るLEDディスプレイを設置。背景ディスプレイと連動して動作し、車の走行シーンであればフロントガラスへの反射など、まさに実際のロケ地にいるようなイメージを実現できる。こちらは、Crystal LEDではないとのことだ。
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メインシステムは、デモ時はdisguiseのメディアサーバーを使うのではなく、Unreal Engineを直接操作する形で動作していた。一体どんなシステムで3DCGをリアルタイム処理しているのかが気になるところだが、内覧会時はサーバールームの様子は公開されなかった。
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さらに特筆すべき点はスタジオ外に自走式駐車場があり、スタジオ内へ車の搬入が可能なことだ。大型機材や美術建て込みといった商品の出し入れにも対応しやすそうだ。
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ソニーPCLは清澄白河BASEのほかにも、ポストプロダクション機能を備えている。そういう意味では、トータルサービスを提供できるというのも1つの強みになりそうだ。
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国内のバーチャルプロダクションスタジオの環境は、広さに難があったり常設スタジオは限られており、世界からはどうしても遅れていると言わざるを得なかった。しかし清澄白河BASEはそんなイメージを覆す存在で、国内のバーチャルプロダクション手法の活性化のきっかけとなる存在になりそうだ。今後、清澄白河BASEからどんな映像作品の誕生するのか楽しみである。
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