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ソニーは、Cinema Lineシリーズ初となるAPS-Cセンサー搭載モデルの新製品「FX30」を2022年10月14日に発売する。ラインナップと希望小売価格は以下の通り。
- 本体:税込273,900円
- 本体(XLRハンドルユニット同梱):税込328,900円
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ソニーのCinema Lineは、シネマカメラVENICEを筆頭とする映像制作用カメラのシリーズ。カメラ共通の色味、操作性、信頼性はVENICEからの技術継承を特徴としている。先日発表したレンズ交換式旋回型カメラ「FR7」に続いて、FX30ではCinema Lineシリーズの裾野を広げる若手クリエイター対象の新モデルとしている。
写真で見るFX3とFX30の比較
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※画像をクリックして拡大
APS-Cサイズの新開発CMOSセンサー搭載
FX30は、新開発APS-Cサイズのイメージセンサーを搭載。有効画素数は動画撮影モード時で約2,010万画素、裏面照射型のイメージセンサーExmor R搭載を特徴とする。6Kオーバーサンプリングの動画による4K収録を実現し、高画質な撮影に対応。
FX3、α7 IV、α7 IIIなどの最新機種と同じ画像処理エンジン「BIONZ XR」を搭載し、4K120Pのハイフレームレート撮影や、階調、色再現性の良さも特徴としている。
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FX30 | FX3 | FX6 | |
希望小売価格(税込) | ボディ:273,900円 ハンドルユニット同梱:328,900円 |
548,900円 | 831,600円 |
イメージセンサー | APS-Cサイズ | フルサイズ | フルサイズ |
プロセッサー | BIONZ XR | BIONZ XR | BIONZ XR |
レンズマウント | Eマウント | Eマウント | Eマウント |
解像度(FF/S35) | FF:-/S35:4K(6Kオーバーサンプリング) | FF:4K/S35:FHD | FF:DCI-4K 8K/S35:FHD |
有効画素数(動画撮影時) | 約2010万画素 | 約1030万画素 | 約1026万画素 |
ハイフレームレート(4K/FHD) | 4K120P/FHD240P | 4K120P/FHD240P | 4K120P(QFHD)/FHD240P |
ISO感度(拡張) | 100-32000 | 80-409600 | 320-409600 |
Dual Base ISO | YES | NA | NA |
BASE ISO(Log設定時) | 800/2500 | 800/12800 | NA |
ダイナミックレンジ(ラチチュード) | 14+STOP | 15+STOP | 15+STOP |
シネマの映像表現を実現
Cinema Lineは映像の色味を特徴としており、FX30でもα7 IV、α7 IIIと同じS-Cinetoneを使用可能としている。また、2022年7月公開のFX3 Ver.2.00の機能の1つで、カメラにインポートしたユーザーLUTをピクチャープロファイルとしても使用可能。LUTを記録映像にベイク(焼き込む)にも対応し、S-Log3の撮影時にはモニタリングLUTとして充てることもできる。Flexible ISO/Cine EI Quick/Cine EIなど、FX3の新バージョンの機能をそのまま搭載し、Log撮影機能の充実を特徴としている。
FX3にはない機能としてDual Base ISOに対応。ISO800とISO2500の2つを基準ISO感度として、撮影シーンに応じて使い分けが可能。4:2:2 10ビットの映像収録にも対応するとしている。
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オートフォーカス性能は、人物や動物、鳥に対応したリアルタイム瞳AFやタッチトラッキングに対応。α7 IVと同等を搭載といっていいだろう。それ以外の部分に関しては、評価の高い「AFトランジション速度」や「AF乗り移り感度」の細かい設定も可能。AFアシスト、フォーカスマップ、ブリージング補正などの最新AF技術も搭載する。
ハイフレームレート記録は4K120Pまで対応。ただし、FX3の4K120P収録はクロップ率10%程度に対し、FX30は画素数の高さやAPS-Cサイズから約38%のクロップ率になるという。光学式5軸ボディ内手ブレ補正を搭載し、補正効果を向上させる「アクティブ手ブレ補正」にも対応する。
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筐体は、バッテリーとメモリーカードを含めて646gで、FX3から約70g程度軽量化を実現。ボディにはアクセサリー取付用ネジ穴(11/4-20 UNS)を5つ搭載し、ケージ不要としている。小型マイクや外部モニター、ジンバルやドローンを装着して、カスタマイズを可能としている。
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液晶モニターはバリアングタイプ横開背面モニター搭載で、FX3のモニターは約144万ドットに対して、FX30では約236万ドットに向上している。
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UIは、2022年7月のFX3 Ver.2.00で新しくなった新メニューを採用。動画撮影時の待機画面で映像とオーバーラップする情報やアイコンの表示レイアウトは動画向けのレイアウトを搭載している。また、撮影待機画面でモニター上を上方向にスワイプするとFn(ファンクション)メニューを表示可能としている。
グリップ上部に速度設定可能なズームレバーを配置。パワーズームレンズのズーム操作だけでなく、単焦点レンズでも使用可能な全画素超解像ズームによって、少ない撮影機材でも画角にバリエーションをつけることを可能としている。
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タリーランプは、カメラ前面(上面)、背面に1つずつ配置。動画記録中は強調表示としてモニター画面にも赤枠表示で、REC忘れや逆RECを防止する工夫を実現している。
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長時間収録は4K60Pに対応する。FX3と同様に本体に冷却ファンと放熱に配慮した構造を採用し、イメージセンサーや画像処理エンジンの駆動に伴う熱を効果的に分散している。ソニー社内の測定だが、給電を行いながら4K60P撮影を最大13時間まで実現できたという。
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バッテリーに関しては、α7 IV やα7 III、FX3に搭載されているZバッテリーに対応。最大115分の長時間収録を可能としている。USB PD(USB Power Delivery)にも対応する。外部から電力を供給しながら使用可能。16ビットのRAW出力にも対応する。本体内部記録は未対応だが、ATOMOSのNINJA Vなど外部レコーダーへの出力が可能。
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マルチカム運用も増えてきているが、FX30はタイムコードのインのみに対応する。例えばFX6や外部へタイムコード出力するカメラと接続することによって、タイムコード同期を可能としている。
静止画撮影機能は電子シャッターのみ対応
FX3とFX30の性能はほぼ一緒だが、詳細を見ていくといくつか気になる違いがある。1つはISO感度で、FX30の最大ISO感度は32000となる。FX3は最大ISOは409600を実現しており、高感度性能に関してはFX3が優位だ。しかし、FX30はDual Bass ISOを搭載し、ダイナミックレンジに関しても14+Stopを確保している。ある程度の光量を確保できるのであれば問題ないといえるだろう。
もう1つは静止画撮影機能で、FX30は電子シャッターのみ対応している。連写機能も非搭載で一コマ撮影のみとなる。ただし、ロケハンやYouTubeのサムネイル撮影など簡易的な撮影には十分対応できるのではないかと思われる。
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