東映株式会社は、2022年10月1日に東京撮影所でバーチャルプロダクション部を発足。また東京撮影所No.11ステージを、現時点で日本最大のLEDスタジオとしてリニューアルし、2023年1月から運用を開始予定だ。
同社は、今後5年間で約20億円を投資し、映像作品の制作工程でこのLEDスタジオを利用していくという。これによりバーチャルプロダクションを含む映像全般のテクニカルフォローができる日本随一のチームの育成、背景用のデジタルアセットの制作ノウハウやデジタルアセットの蓄積、同社の制作する映像コンテンツの高品質化などを図っていく。
■概要
- LEDスタジオ所在地:東京都練馬区東大泉2-34-5
- 東映株式会社東京撮影所:No.11ステージ
- LEDスタジオ運用開始日:2023年1月
■導入する主な設備
- LEDウォール:AOTO社 RM1.5×600pics(地上)=横30m×縦5m、AOTO社 M3.7H×100pics(天井)=横10m×縦5m
- スタジオ面積:400m2(120坪)
- 投資期間:2022年10月~2027年3月
- 投資予算額:約20億円
- 新組織名:東映株式会社 東京撮影所 バーチャルプロダクション部
- 新組織発足日:2022年10月1日
バーチャルプロダクションとは
バーチャルプロダクションとは、仮想空間の背景と実物の被写体(俳優や小道具)を同時に撮影し、合成する撮影手法を指す。多くは背景にLEDパネルを設置したもので、背景のLEDパネルに映像やCGIを表示させる。アメリカ、インド、韓国などでは多くのLEDステージが新しく設立され、制作作品数も増えているが(作品:「マンダロリアン」、「ザ・バットマン」など)、国内ではCMやMVなどで利用されているものの、映画やドラマに使用される例はまだ少ないという。
バーチャルプロダクションが映像製作にもたらす効果
- 従来のグリーンバックを使用したクロマキー合成は、ポストプロダクション工程(撮影後の工程)において多大な加工処理を要したが、LEDウォールを使用したバーチャルプロダクション撮影は合成工程が不要であり、ポストプロダクション工程の大幅な圧縮が可能になる。
- ロケ地や移動時間、天候に左右されないため、移動等にかかる経費を削減でき、また俳優や監督等スタッフのスケジュールも確保しやすくなる。
- LEDウォールが照明の代わりを果たすため、環境光を自然に作ることが可能となり、照明セッティングの時間が短縮できる。
- 従来のグリーンバックを使用したクロマキー合成と異なり、LEDウォールに映像が映し出されるため、俳優に対し、演技に没入しやすいより良い芝居環境を提供できる。
- LEDウォールに映す背景用に制作したデジタルアセットは、次回以降の撮影において活用することができ、またスタジオに現物セットを建込み、撤去する時間が不要なためスタジオ稼働率が向上する。廃材等も発生せずESG経営につながっていく。
- 映画配給会社が自前でLEDスタジオを保有・運用するのは国内初。蓄積した新技術自体を活用した企画開発や、今後も日進月歩する映像表現の未来をリードする体制作りが可能となる。