NTTビジネスソリューションズ株式会社、西日本電信電話株式会社(以下:NTT西日本)、エヌ・ティ・ティ・スマートコネクト株式会社、株式会社メディアリンクス、株式会社朋栄の5社で発足した「遠隔編集サービス共創プロジェクト」は、放送局および番組制作会社4社(朝日放送テレビ株式会社、株式会社愛媛朝日テレビ、中京テレビ放送株式会社、株式会社ytvNextry)の協力を受けて、遠隔編集サービスの実証実験を実施し、同サービスのリモート環境下での安定した操作性と、映像編集業務における適合性を確認することに成功した。
実証実験結果について
同サービスの映像編集業務への適合性および業務改善効果を確認するため、同プロジェクトは放送局および番組制作会社と共同で実証実験(以下:共同実験)を実施した。結果については以下の通り。
朝日放送テレビ・愛媛朝日テレビとの共同実験
開催期間:2022年8月5日(金)~22日(月):今夏の甲子園開催期間
実施背景:夏の甲子園期間における取材・編集作業では、朝日放送テレビが予め甲子園映像編集用の編集設備を本社社屋に準備し、系列局の取材班(ディレクター、カメラマン、アナウンサーの3名)が地方から出張し、取材先と編集設備のある朝日放送テレビ本社を往復しながら取材・編集を実施していたため、移動時間やコストに関して課題があった。そこで、取材における移動時間および編集設備調達の効率化を目的とし、クラウド編集サービスの導入に向けた検討を開始。同実験では甲子園映像編集における同サービスの適合性について検証した。
概要:朝日放送テレビ・愛媛朝日テレビとの共同実験では、甲子園の中継映像のリアルタイム編集(以下:甲子園映像編集)において、同サービスを利用して愛媛朝日テレビ(愛媛県)から遠隔で編集作業を実施し、甲子園映像編集における同サービスの適合性について検証した。
結果:同サービスを利用することで、愛媛朝日テレビの取材班の移動時間を削減できた。加えて、編集作業と現地取材の業務を分担することが可能となったため、取材班の取材時間が従来よりも1日約3時間程度長く確保できるという結果が得られた。
中京テレビとの共同実験
実施期間:2022年6月14日(火)~6月27日(月)
実施背景:中京テレビでは、2年前(2020年4月)からパブリッククラウド環境を活用したクラウド編集サービスを利用してきたが、社内システム連携や費用面等の課題から利用拡大に踏み切れていない状況にあり、他のサービスについても検討を進めていた。そこで、中京テレビとNTTビジネスソリューションズは、同サービスを活用し、リモート接続による環境下でも安定した操作性やオフィス環境と同等水準の操作性が実現できるかを評価し、同サービスの有用性を検証するため、共同で実験を実施する運びとなった。
概要:中京テレビ(愛知県)との共同実験では、大阪エリアにある編集サーバーにリモート接続し、編集作業および高精細なビデオ信号のIP伝送による遠隔地のモニター表示について、遠方地におけるリモート環境下で安定した操作性を実現できるか検証した。
結果:編集作業およびモニター表示について、名古屋エリア-大阪エリア間の約140kmの距離がある状態においても、オフィス環境と同等水準の操作性を実現することができるという結果が得られた。
ytvNextryとの共同実験
実施期間:2022年7月4日(月)~7月21日(木)、8月26日(金)~9月15日(木)
実施背景:ytvNextryでは、番組制作業務の効率化を目的として、クラウド編集サービスの導入を検討しており、場所を問わない編集作業の実現に加え、編集後に行う映像確認までをクラウド環境上で実施可能なサービスを求めていた。そこで、ytvNextryとNTTビジネスソリューションズは、クラウド環境上の編集サーバーで製作した高精細なビデオ信号を、IPネットワークを経由して遠隔地のモニターに表示させることが可能か、また、その映像品質が業務において適合可能なレベルであるか検証するため、同実験を実施する運びとなった。
概要:ytvNextryとの共同実験では、クラウド環境下で「映像素材の編集→テロップ生成および挿入→高精細なビデオ映像伝送および高画質モニターでの映像確認」の番組制作ワークフローを通した検証を行い、クラウド環境下で完全パッケージ(完パケ)映像の制作が可能かを検証した。
結果:一連のワークフローをクラウド環境下にて一気通貫で実施し、完全パッケージ(完パケ)映像の制作までを完遂できた。従来はオフィス環境で実施していた番組制作業務について、場所を問わず、リモート環境でも実施できるという結果が得られた。
今後の展開について
各社との共同実験において、概ね良好な結果を得られたことを受け、同プロジェクトでは、今後も放送局・番組制作会社との連携を広げながら、番組制作の課題把握に努めるとともに、その課題解決に資するサービスかを見極めるため、継続してビジネス性等に関して検討を進め、本サービスの事業化を目指していくという。
同サービスを放送局・番組制作会社へ幅広く提供していくことにより、番組制作現場における働き方改革の実現や、放送業界におけるさまざまな課題の解決策の一つとなるよう取り組んでいくとしている。また、今後もICTを活用したさまざまなサービスを企画・開発し、放送業界のDX実現に資する取り組みを推進していくという。
現在検討中のサービス概要
NTT西日本グループが展開するデータセンター上の編集サーバーに、編集者がリモート接続をし、映像編集が実施できるサービス。サーバー上で編集した映像は、IP伝送装置 MDP3020にて、IPネットワーク上で伝送が可能な形式(JPEG XS)に変換し、遠隔地のモニターに表示させることができる。
これにより、これまでオフィス環境で実施していた編集作業について、自宅や出先などでも実施可能となる。編集者は自宅から編集作業を行い、ディレクターはオフィス環境にて高精細映像確認を実施するといった、作業場所を問わない新たな働き方が可能になるという。
サービスの主な特長
- 高精細映像の編集、確認が可能:編集者が編集サーバー上で編集した高精細なビデオ信号をIP伝送し、遠隔地のモニターに表示させることで、クラウド環境を通じて高精細映像の確認が可能
- ユーザー設備との接続が可能:ユーザーのオフィス環境に設置されている映像素材ストレージとクラウド環境をVPN接続することにより、クラウド環境から素材ストレージのファイル参照が可能。映像素材や編集後の映像素材について、クラウド環境にアップデートすることなく、お客さまのオフィス環境にて管理可能