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中継現場の様子 ©フジテレビ

KDDIは、株式会社フジテレビジョンとともに、2023年3月5日に行われた東京マラソン2023において、5Gスタンドアローン(以下:5G SA)商用ネットワークでSLA(Service Level Agreement)保証型ネットワークスライシングを活用した地上波放送の番組制作活用の実証試験に成功した。

※5G SAとは、5G基地局に5G専用に開発したコアネットワーク設備を組み合わせるシステム

同実証では、従来と比較し簡易な設備構成で、安定的に中継可能であることを確認。これにより今後、映像制作・中継の幅が広がることが期待できるとしている。

なお、RIC(RAN Intelligent Controller)を活用したSLA保証型ネットワークスライシング技術を、地上波放送の番組制作に活用したケースは世界初だという。

※RAN Intelligent Controllerは、O-RAN ALLIANCEで規定されているRANの高度な制御を行うコントローラー。AI・機械学習と組み合わせた高度な制御により通信品質の向上が期待されている。

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実際の放送画面 ©フジテレビ

KDDIはフジテレビとともに、より簡易な設備で視聴者に高品質な映像を届けることを目的に、2022年5月から5GやMECなどを活用した映像中継に関する技術検証と映像の高度化に取り組んできたという。KDDIは今後も、エンターテインメント領域における新たな体験価値の向上を目指し、検討を進めていくとしている。

同実証の背景

従来、スタジオ以外の他拠点から安定した映像を生中継するには、現場に専用機器を搭載した中継車を持ち込む場合が多く、複雑なオペレーションを要したという。LTE回線を利用する場合はベストエフォートの通信品質となり、テレビの生中継映像に必要な高速かつ安定した通信の提供が課題だった。

SLA保証型ネットワークスライシングを用いることで、映像中継に必要な通信品質を安定的に提供可能となり、映像中継装置の一部など専用機材の置き換えによるコスト削減のほか、スマートフォン内蔵カメラの活用などによる新たな映像体験の提供が期待できるとしている。

同実証について

概要

東京マラソンのスタート地点(新宿)およびフィニッシュ地点(丸の内)において、放送用カメラ、スマートフォンカメラの映像を5G SAでフジテレビ本社に伝送し、番組制作に活用した。

RICを活用したSLA保証型ネットワークスライシング(放送用カメラ専用スライス、スマートフォンカメラ専用スライス)により、観客などが利用する一般のスマートフォンのネットワークと論理的に分離し、各映像中継に必要な通信品質を確保した。

上記ネットワークによる映像中継を行い、従来と比較し簡易な設備構成で、安定的に中継可能であることを確認した。スマートフォンは、小型軽量の特性を生かし通常の放送用カメラの設置が難しい沿道カメラとして使用できるため、今後、映像制作の幅が広がることに期待できるとしている。

構成

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同実証の構成
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