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撮影スタジオの様子。LEDディスプレイと美術セット

「メタバース プロダクション」に参画するヒビノ株式会社、株式会社オムニバス・ジャパンは、Unreal Engine 5.1を使用した国内初となる全編バーチャルプロダクション撮影の配信ショートドラマに制作協力した。

メタバース プロダクションは、映像制作ワークフローにおける"温室効果ガス削減"と"プロセス効率化"の実現を目指し、バーチャルプロダクションの一つである「インカメラVFX」撮影の利用シーン拡大に取り組んでいる。

Unreal Engineとは

Unreal Engine(以下:UE)は、Epic Games社により開発されたゲームエンジンで、フォトリアルなビジュアルと没入的体験を作り出すリアルタイム 3D 制作プラットフォーム。今回使用したUE5.1は、2022年11月にリリースされ、バーチャルプロダクションに関するツールも新たに追加されたことによって、リリース後、メタバース プロダクションでの実装について、多くの問い合わせがあったという。

企画と受注の経緯

今回の配信ショートドラマ「ひとひらの初恋」は、テレビ東京の社内から企画を募った「トライ企画」の一環として実現された。報道局の松並百合愛プロデューサーの企画を、昨今、映画やドラマで導入が広がるLEDディスプレイ・システムと3DCGを活用した最新鋭のバーチャルプロダクション技術「インカメラVFX」を使用し、全編を大型LED常設スタジオstudio PX HIBINO(Hibino VFX Studio)にて撮影している。

ヒビノは兼ねてよりテレビ東京の番組でリアルとバーチャルを融合させたオンラインならではの映像体験を実現するxR演出システムを担当している。高品質なバーチャル演出を実現するシステムおよびオペレーション技術が評価され、今回の挑戦的なドラマ制作への協力が決定。メタバース プロダクションでCG制作を担当するオムニバス・ジャパンと共にバーチャルプロダクションの制作協力を行った。

バーチャルプロダクションの制作協力について

インカメラVFXを使用したバーチャルプロダクション撮影では、事前に背景用の3DCGを完成させる必要があるなど、従来の合成撮影とワークフローが異なる。インカメラVFXの特徴であるハイクオリティな合成を実現するには、制作、撮影、照明、美術など各部署との密なコミュニケーションが不可欠だという。

今回、企画の段階から相談があり、各部署に対するインカメラVFXの制作方法や特徴の説明、香盤への提案を行い、撮影時もバーチャルプロダクションの側面から監督、撮影部、照明部等のサポートや提案を行った。各部署の協力もあり、スムーズかつ高品質なバーチャルプロダクション撮影を実現したとしている。

撮影背景となる3DCGアセットは、メタバース プロダクションが提供するPXサービス「Virtual House Studio」にラインアップする「Vocument Series/教室」をUE4.27からUE5.1にアップデートし、新たにUE5.1で「花屋」アセットを制作した。

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UE5.1で制作した3DCGアセット「Vocument Series/教室」
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UE5.1で制作した3DCGアセット「花屋」
UE5.1で制作した3DCGアセット「花屋」

UE5.1の新機能であるNanite、Lumenを活用することで、光の表現力が格段に向上すると共にライティングの調整にかかる時間の短縮にもつながったという。また、UE4では不安定になりがちだった高負荷な処理に対する安定性も実証でき、UE5.1の実用化によってインカメラVFXの映像表現はさらに広がるものと確信しているとした。

※Nanite:3Dモデルを効率的かつ高速にレンダリングする高性能なシステムで、人間が知覚できる必要な部分だけを自動処理する機能。

※Lumen:間接光や光の反射を考慮したライティングの計算をリアルタイムで行えるシステム。よりリアルな世界観を表現することが可能になる。

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撮影スタジオの様子。LEDディスプレイと美術セット

ICVFX TD 日野恵夢氏(ヒビノ)は次のようにコメントしている。

日野氏:今回、テレビ東京様の「トライ企画」というところで受注したことから、弊社としてもなんらかのトライを!との気勢でプロジェクトをスタートさせました。その最たる例がUnreal Engine 5.1の実用だったわけですが、この結果は視聴者がストーリーに没頭できるかによって初めてその真価が問われるところなので、配信後の反響を楽しみに見守りたいと思います。オムニバス・ジャパンさんとは、継続的なトライを!という意識を共有し、インカメラVFXを活用した映像制作ワークフローの定着に共に注力してまいります。

また、VP SV 徳重岳浩氏(オムニバス・ジャパン)は次のようにコメントしている。

徳重氏:UE5.1は実案件では初めての使用になり、全カットVPドラマ作品ということで、かなりのチャレンジ企画でした。そして、限られた状況の中でも完成できたポイントは、監督、撮影部、照明部、制作部をはじめ全スタッフがVPという新しい撮影への前向きな取り組み姿勢と順応性、そして車座でコミュニケーションが取れたことだと思っています。まだまだ黎明期、進化中の撮影方法ですが、これからもチャレンジしていこうと思っています。

今後も"映像制作の新たな選択肢"として選ばれ続けられるよう、先端テクノロジーを駆使した新たな表現手法の高度化を推進し、Production Transformation(映像制作トランスフォーメーション)につながるPXサービスの拡充・拡張に努めてまいります。