Blackmagic Design導入事例:Prime Video「On a Wing and a Prayer」の場合

Blackmagic Designによると、Prime Videoによる、実話を基にした信念と生存のストーリー「On a Wing and a Prayer(原題)」の撮影にURSA Mini Pro 12Kが使用されたという。

同作品は、飛行中にパイロットが突然死したことを受け、飛行機を無事に着陸させるために極限で奮闘する家族を描いている。キングエア双発機の操縦経験がないダグ・ホワイト(演:デニス・クエイド)は、家族全員を悲劇から救おうと奮闘する。遠く離れた"天使たち"の助けを借りながら、時間や天候と競争するホワイト一家は、自分自身やお互いのこと、そしてシンプルな信念がもたらす奇跡について多くを学んでいく。同作はショーン・マクナマラ氏が監督を務め、デニス・クエイド、ヘザー・グラハムらが出演している。

同作の撮影や、実用的な飛行機のセットで撮影するための独自のアプローチについて、クリスチャン・シェベット撮影監督は次のようにコメントしている。

シェベット撮影監督:ショーンと私は長年の友人であり、多くの長編映画を作成してきました。「レーガン」という作品を一緒に作っていた時に、ショーンからデニスが出演する次の作品を撮影してくれないかと持ちかけられました。この「On a Wing and a Prayer」という作品は、ストーリーの大部分が、小型のプライベート飛行機の中で展開されます。大きなチャレンジであり、ぜひとも引き受けたいと思いました。ショーンとの仕事を楽しんでいることは言うまでもありません。

撮影予定の約半年前に、ショーンと私はラスベガスに飛びました。Scroggins Aviationの工場には、彼らが私たちのために購入してくれた、キングエア200の機体がありました。この映画の実質的な「主人公」です。主翼、尾翼、エンジンはすでに切り落とされており、さらにコックピットやフロントガラスも別々に取り外せるようにして欲しいと頼みました。

その時に、キャビンの座席と座席の間は文字通り10cmしかなく、機内で一度に動けるのは一人だけだということに気付きました。もちろん立ち上がることもできません。キャビンの高さは150cm弱です。そしてコックピッドは、カメラを持っていなくても入るのが難しいほどでした。この作品は、複数のカメラで撮影しなければならないことは明らかでした。また、デニス・クエイドとヘザー・グラハムを、非常に狭いコックピッドに何日も座らせることの不安もありました。彼らの苦痛を減らすためには、できるだけ多くのアングルを同時に撮影する必要があると考えました。

Blackmagic Design導入事例:Prime Video「On a Wing and a Prayer」の場合

シェベット撮影監督:狭い飛行機のキャビンでの撮影には、1台のURSA Mini Pro 12Kと2台のPocket Cinema Camera 6K Pro、合計で3台のBlackmagic Designカメラを使用しました。優秀な第一カメラアシスタントのライアン・ピロンが、Mini Libraのリモートヘッドを約9mの吊り下げ式テクノクレーンに取り付け、フロントガラスを取り外した状態のコックピッドから機体の後方まで移動させることで、乗客のクローズアップを撮影するという方法を考えつきました。イケてる方法ですが、難しかったですね。これらのショットは、早い段階から実現したいと思っていた超ダイナミックショットでしたが、なんとか実現することができました。

何度かテストを重ねた後、天井にトラックを設置して、そこに取り付けたカメラで飛行機の後部からコックピット内の俳優のクローズアップショットまで撮影できるようにしました。このような狭い空間での撮影は容易ではありませんでしたが、登場人物たちが機内を移動すると、非常にダイナミックで魅力的なショットになりました。ワイドレンズで撮影すると、天井のトラックが映り込んでしまうので、ポストプロダクションで消しました。

今回の撮影におけるURSA Mini Pro 12Kのメリットのひとつは、普通に使用したり、あるいは機内のどこかに仕込んで高解像度で撮影できることでした。これで、同じアングルのショットを、別のサイズで差し込むことができます。

マルコアイランド空港(フロリダ州ネープルズ)の代わりのジョーシア州の空港で、丸2日間かけて行った撮影では、さらに1台のURSA 12Kを追加しました。例えば、墜落を想定した空港の消防隊が、ポールを滑り降り、トラックに飛び乗り、着陸地点に急行するシーケンスなどです。また、カメラマンなしのURSA 12Kを滑走路のすぐ近くに設置することで、本物のキングエア200が着陸したり地上走行する位置に応じて、柔軟にリフレームすることができました。

もうひとつ、私が満足しているショットは、現場で1週間撮影を続けた後でも実現できると思っていなかったショットです。ARRI Ultra Prime 8Rレンズを装着したURSA Mini Pro 12Kを目立たない液体ヘッドに取り付けて、キャビンの後方の床に置いて撮影しました。母親と2人の娘が、「神の介入」を期待して必死に祈っているシーンです。手を繋いで涙を流す彼らの表情を、360°の超低アングルで撮影したかったんです。第一ACのライアンが、床に横たわり、ゆっくりと継続的にカメラを回転させることで、非常に感情的でドラマチックなショットを撮影できました。もちろん映画でも使用されています。

ストーリーの大部分において、主要な登場人物たちが、狭い場所に閉じ込められて身動きできない状態であるという映画を想像してみてください。視聴者を引きつけるためには、できるだけドラマチックなショットにする必要があったんです。ショーンは、上空を飛ぶ飛行機の外観のワイドショットから、機内にいる家族のクローズアップショットに移動するというアイデアを、私が参加するよりも前から思い描いていました。約9m離れた場所(VFXの拡張によるデジタルのキングエア機体、主翼、エンジンを使用)から機内の人物のクローズアップに移れるよう、トラック上のテクノクレーンの動きを最初にプランニングしました。スペースが狭いため、撮影は非常に困難でしたが、ダイナミックで魅力的な映像が必要でした。

Blackmagic Design導入事例:Prime Video「On a Wing and a Prayer」の場合

シェベット撮影監督:Pocket Cinema Camera 6K Proは非常に小型なので、リモートでフォーカスおよびアパーチャーをコントロールできるリグを構築しました。これにより、非常に狭い場所でハンドヘルドの撮影が可能になりました。例えば、いくつかのアクションシーンを撮影した荷物室などです。また、コックピットのカバーを取り外して、Pocket 6Kを操縦桿の機構の中の、スロットルや方向舵ペダルに近い低い位置に固定しました。デニスが、家族の命を救うために複雑な操縦を行おうとしている時、彼の表情を見せることが重要でした。これは、作品内で一番難しかったシーンでした!

飛行機の状況を伝える計器のダイナミックな近接ショットを撮るために、Innovision Probe II Plusを使用しました。これは私が気に入っている素晴らしいレンズです。このレンズをURSA Mini Pro 12Kに取り付けたことで、素晴らしいアングルを撮影できました。また、管制塔のセットでPocketカメラを使用して、航空管制官たちを撮影しました。

照明に限界がある狭いセットでの撮影でしたが、様々なカメラの画質について不安は一切ありませんでした。Blackmagic RAWは本当に素晴らしいです。使用したカメラでは、優れたダイナミックレンジと洗練されたカラー処理が得られます。最終的な画は、他の高品質カメラと区別がつきません。さらにカラーサイエンスにより、カラーコレクションで余裕を持ったダイナミックレンジが得られます。

このような特殊な作品を企画する段階では、多くの課題が出てきますが、優秀な協力者たちのおかげで、すべてをクリアにしていくことができました。様々な部署から課題の解決方法が提案されました。時には思いもかけないような部署から提案されることもありましたね。この業界で起こる魔法のような真実です。人生で必ず道が見つかるなら、映画のセットでも見つかります。この作品では、ワクワクするストーリーを視覚的に伝えています。作品を見た人が、登場人物や制作スタッフと一緒に「搭乗」し、忘れられない体験をしていただければと思います。

Blackmagic Design導入事例:Prime Video「On a Wing and a Prayer」の場合