Matterport株式会社(以下Matterport)と熊本県阿蘇市の阿蘇神社は、2016年4月の熊本地震で倒壊し再建中の国指定重要文化財・楼門について、今年3月に主要な復旧工事が終了し、作業用の素屋根の解体を前に期間限定で特別公開された際に、Matterportキャプチャーサービス(メーカーによる撮影代行サービス)およびPro3カメラを駆使して撮影・編集を行い、真新しく光り輝く銅板葺きの屋根など、貴重な姿を鮮明に再現するデジタルツイン※1を構築した。
再現されたデジタルツインは、以下のリンクより閲覧できる。

※1 物理空間(現実世界)に実在するものを、デジタル空間上で双子のようにリアルに再現し、モニタリングやシミュレーションを可能にしたもの。

最新技術で「二度とない姿」を捉え、遠方の支援者への報告や施工管理での活用にも期待

阿蘇神社は2000年以上の歴史を持つ古社で、「日本三大楼門」の一つとされる阿蘇神社楼門など6棟が国重要文化財に指定され、地域はもとより広く崇敬されてきた。2016年の熊本地震で、境内の社殿のほぼすべてが倒壊する未曽有の被害を受け、公的補助と地域・全国から寄せられた部材や支援金により復旧工事が進められ、楼門以外の国重要文化財5棟を含む建物が復旧を完了し、楼門も2023年12月の復旧完了を目指している。

倒壊した際の桜門

復興に懸命に取り組む中、阿蘇神社は公式ホームページで工事の詳細なレポートを定期的に公開するなど、支援者への報告や、神社として甚大な自然災害を乗り越えていく過程の記録と発信に努めているという。その阿蘇神社で今回公開に至ったMatterportによるデジタルツインの特徴、および今後の運用面で期待されることは以下の通り。

最新技術を結集したコンパクトな機材で「歴史的瞬間」の細部から全体像までを再現可能に

  • 期間限定の特別公開でしか見られない姿を遠方の支援者にも共有

阿蘇神社では素屋根が解体される前の3月5日から12日の間、楼門の特別公開が開催され、撮影は終了直後の3月13日に素屋根を利用し実施した。

撮影に使用した「Matterport Pro3」は、LiDARとRGBセンサーを搭載し、1台で空間の写真と距離データを取得できる専用カメラで、作業用の足場の移動も含む撮影にも対応し、約2時間で楼門全体の撮影を完了した。コンパクトな機材で迅速に高精度なキャプチャーサービス※2を提供するMatterportの独自技術により、特別公開に参加できなかった支援者にも修復直後の姿をリアルに閲覧することを可能にした。

Pro3カメラ(手前)と完成直後の銅板葺きの屋根

※2 時間と労力がかかる、広大な建物や空間、遠方や海外の現場や施設の撮影は、Matteportにアウトソーシングすることが可能。メーカーのノウハウとサポート体制で、高品質な撮影結果を迅速かつリーズナブルな価格で提供。高額請求や不要な請求(月額管理費、都度の制作費)が無く、安心してご利用いただける。

  • 歴史的な復旧事業の節目の瞬間を手に取るように後世に継承

デジタルツインは、解体前の素屋根の内部や銅板葺きを終えたばかりの光り輝く屋根が含まれ、PCやスマートフォン上で、楼門全体を立体的に俯瞰することや、足場を実際に歩くように動き回り、気になるところがあれば近づいて間近に見ることなどが可能。歴史的な工事の節目の姿を、後世まで鮮やかに伝えることが期待される内容である。

輝く屋根や素屋根の内部を手に取るように見られるデジタルツイン画像

高い精度と操作の簡便性で施工記録やコミュニケーションにおける活用にも期待

倒壊した楼門の建立は江戸時代に遡り、図面等の記録が存在せず、復旧工事は残された部材や倒壊前の写真等をもとに手探りで進められた。今回のMatterportとの取り組みでは、細部の確認が可能なデジタルツインに加えLiDARで点群データも取得しているため、施工記録の高精度なデジタルデータとして、今後のメンテナンスや他の建造物の工事等への応用が期待される。

また、デジタルツイン上で「測定モード」等を活用すれば、簡単に施設や設備が計測可能。ハイスペックな機材や専門知識は不要で、直感的に操作可能な簡便性を実現。阿蘇神社側で、メモや動画などの追加・アップデート等を行うこともでき、支援者や施工業者等とのコミュニケーションに活用することもできる。

今回は、楼門と同日に阿蘇神社の社殿を屋外から撮影したデジタルツインも公開した。熊本地震で楼門同様に倒壊し既に復旧を終えた拝殿、ボランティアスタッフにより制作された拝殿再建までを記録したビデオ、楼門の素屋根の外観なども含め、着実に復興に向かう阿蘇神社の姿を閲覧することができる。

阿蘇神社では2023年7月28日(金)に、コロナ禍で中止していた最大規模の年中行事の1つである「御田植神幸式」が4年ぶりに開催される予定で、この際に楼門の素屋根の撤去が完了し、修理を終えた楼門を実際に見ることができるという。

阿蘇神社 権禰宜 池浦 秀隆氏は次のようにコメントしている。

阿蘇地域をはじめ多くの皆様にご協力をいただき復興事業を進める中で、阿蘇神社の存在の大きさを改めて感じ、支援者様に復興の歩みを細やかに伝え、心の安泰にも繋がるような報告方法を探していました。Matterportの圧倒的な臨場感を見て、最適なコミュニケーションツールになると思い撮影をお願いしました。特別公開にお越しになれなかった皆様にも、同じ姿をお届けできることを嬉しく思います。大きな自然災害を乗り越えた神社として、今回のデジタルツインを復興の記録や事例共有に活かすとともに、コロナ禍も重なり参拝や神事の継続が危ぶまれた経験も踏まえ、来訪が難しい方々とのコミュニケーションにも活用するなど、最新技術も柔軟に取り入れた、今後の新しい神社の在り方を考える契機にしたいと思います。

Matterport株式会社 執行役員 社長 蕭 敬和氏は次のようにコメントしている。

阿蘇神社様の復興を象徴するといえる楼門の復活の瞬間に、シンプルな機材で迅速に空間をキャプチャーできるMatterportの特長を活かし、デジタルツイン構築に協力させていただけたことを光栄に思います。支援者様への報告や、甚大な自然災害を乗り越えた神社としての事例共有、さらには物理的な参拝が難しい状況下でMatterportをご活用いただくことで、予測不能な自然災害が頻発する現代において、デジタルの力で、復興支援や、神社など有形無形の価値を有する施設や建造物が、新しい在り方を追求していくためのお手伝いができれば幸いです。