富士フイルムは、シネマライクな映像表現と放送用レンズの操作性を両立した放送用ズームレンズ「Duvoシリーズ」から、初のポータブルタイプとなる「FUJINON HZK24-300mm」(愛称「Duvo Portable」)を3月下旬より発売する。希望販売価格は、オープン価格。
FUJINON HZK24-300mmは、2つの大型センサー※1に対応するデュアルフォーマット方式を採用したレンズ。撮影現場で頻繫に使用される焦点距離24-300mmをカバーする12.5倍ズームながら、全長270.5mm・重さ2.95kgの小型軽量を実現し、高い機動性を発揮するという。
同社は、2023年3月に発売した箱型タイプの「FUJINON HZK25-1000mm」(愛称「Duvo Box」)に、ポータブルタイプの「FUJINON HZK24-300mm」をラインアップすることで、三脚はもちろん、ステディカム※2・クレーンを使った撮影や肩担ぎでの撮影など幅広いスタイルに対応。スポーツや音楽ライブ、リアリティショーなどさまざまなジャンルの撮影で、浅い被写界深度によるボケ味を生かしたシネマライクな映像表現を実現する。
現在、放送業界では、ボケ味やハイダイナミックレンジを生かした没入感のある映像を表現するために、シネマ業界で採用されている大型センサーを搭載したカメラによる撮影が増えているという。撮影に使用されるレンズには、大型センサー対応のシネマカメラ用レンズが主流だが、こうしたレンズは映画やCMなどの撮影用途に最適化されているため、放送用レンズと比べてズーム倍率が限られてる。また、フォーカス操作専門の人員も必要であるなど、放送業界での撮影と異なるオペレーションが生じる。
そこで同社は、2つの大型センサーに対応するデュアルフォーマット方式を採用し、シネマライクな映像表現と放送用レンズの操作性を両立した放送用ズームレンズ「Duvoシリーズ」を展開。製品ラインアップの拡大を進めているという。
同社は、2024年4月14日~4月17日に、米国・ラスベガスで開催される世界最大規模の国際放送機器展「2024 NAB Show」にて、今回発売のFUJINON HZK24-300mmを出展する。さらに、現在開発を進めている、焦点距離14-100mm・軽量が特長の広角ズームレンズ「HZK Wide」も参考出展する予定だという。
※1 スーパー35mmセンサーと35mmフルサイズ相当のセンサー。
※2 手持ち撮影時に生じるブレを抑え、安定した映像を撮影するための機材。
主な特長
- 焦点距離24-300mmをカバーする12.5倍ズームと小型・軽量を両立
焦点距離24-300mmをカバーする12.5倍ズームと全長270.5mm・重さ2.95kgの小型・軽量を両立し、高い機動性を発揮。
レンズに内蔵されているエクスパンダー※3を使用することで、焦点距離を望遠側に1.5倍伸ばした36mm~450mmにシフトさせることが可能。遠く離れた場所からでも被写体を意図どおりの大きさでとらえることができる。
※3 イメージサークル(レンズを通った光が結像する円形の範囲)の拡張と焦点距離の望遠側への伸長が可能な機構。 - 2つの大型センサーに対応したデュアルフォーマット方式を採用
通常はスーパー35mmセンサーに対応。内蔵のエクスパンダーを使用すると、イメージサークルの大きさを1.5倍拡大できるため、スーパー35mmセンサーよりもさらに大きい35mmフルサイズ相当のセンサーを搭載したカメラにも使用可能※4。
35mmフルサイズ相当のセンサーを搭載したカメラとの組み合わせでは、優れた光学性能を最大限引き出しながら、スーパー35mmセンサーと同等の画角での撮影が可能。
※4 スーパー35mmセンサーを搭載したカメラとの組み合わせでは、ズーム全域で28.5mmのイメージサークルを、35mmフルサイズ相当のセンサーを搭載したカメラとの組み合わせでは、ズーム全域で41.3mmのイメージサークルをカバーすることが可能。 - 美しいボケ味を生かしたシネマライクな映像表現が可能
高精度に研磨された大口径非球面レンズ・スーパーEDレンズの採用により、各種収差を徹底的に抑制。8K相当の光学性能を発揮する。さらに、ゴーストやフレア、色にじみを抑えることで、高精細かつ自然な描写を実現。
大型センサーに対応する高倍率レンズながら、広角端24mmから207mmまでT2.9の明るさを実現。屋内コンサートなど低照度環境下での撮影が可能。
アウトフォーカス部をいくつかのレイヤーに分けてボケの質感を検証し、ピント面から背景にかけて自然に溶けていくボケ味を実現。被写体を際立たせたシネマライクな映像表現が可能。 - 各種アクセサリーを用いた操作に対応
ポータブルタイプの放送用ズームレンズと同じドライブユニットを搭載。ズームデマンドやフォーカスデマンドを用いた、放送用レンズと同じ撮影スタイルで操作ができる。
複数台のカメラで同時に撮影を行うマルチカメラオペレーションにも対応。効率的な映像制作をサポート。
映画・CMなどの制作現場で使用されるワイヤレスレンズコントローラーに接続することで、フォーカス/アイリス/ズームの遠隔操作が可能。シネマ業界で主流の撮影スタイルである、フォーカス操作専任者によるピント合わせにも対応。
フォーカスリングのギアピッチ※5は0.8M(モジュール)を採用。フォローフォーカスや外付けモーターなど、映像制作における標準的な周辺アクセサリーの使用が可能。
前枠径が114mmであるため、同梱しているレンズフードに加え、映画・CM撮影で多く使われているマットボックス※6も使用できる。
※5 歯車の歯と歯の間の距離。
※6 フィルターの装着が容易で遮光調節の自由度が高い大型のレンズフード。 - 快適な撮影・編集をサポートする機能を搭載
フォーカス時に生じるブリージング(画角変動)を自動的に補正する「Breathing Compensation Technology」を搭載。撮影中の被写体サイズが変わらないため、自然な映像を実現。
カメラやロボティックのコントロールパネルを通じてリモートでフランジバック※7を調整する「Remote Back Focus(RBF)」を搭載。スタジオや中継車などの大きなモニターを見ながら精度の高いバックフォーカス調整を実現。
カールツァイス社 が/i Technology※8に準拠して開発した「ZEISS eXtended Data(ツァイス・エクステンデッド・データ)」に対応。撮影時のレンズメタデータを外部出力できるため、撮影後の編集作業を効率化。
※7 レンズの取付基準面からセンサーまでの距離。
※8 /iはCooke Optics Limitedの商標、または登録商標。