NHKは、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)が中心となって進めている火星衛星探査計画(MMX; Martian Moons eXploration)の探査機搭載スーパーハイビジョンカメラ(4K・8Kカメラ)をJAXAと共同で完成したことを発表した。

本カメラを用いて、火星と火星の衛星「フォボス」・「ダイモス」の4K・8K撮影に挑み、MMXを鮮明なスーパーハイビジョンで記録・映像化するとともに、放送などのメディアで広く伝えることを目指すという。

JAXAは、火星の衛星の起源や火星圏の進化の過程を明らかにすることを目的に、2026年度の打ち上げを目指して探査機の開発を進めている。MMXでは、火星と火星の衛星「フォボス」・「ダイモス」の科学観測を行うとともに、フォボスに探査機を着陸させ、その表面から表層物質のサンプルを採取し、地球に持ち帰ることを目標としている。

NHKは、史上初のMMXの挑戦を超高精細なスーパーハイビジョンで記録・映像化するとともに、放送などのメディアで広く視聴者に伝えするため、2020年にJAXAと共同開発協定を締結し、宇宙空間で撮影が可能なスーパーハイビジョンカメラの開発を進めてきた。

今回完成したスーパーハイビジョンカメラは、探査機の進行方向を撮影するための8Kカメラと、探査機の進行方向に対して側面方向を撮影するための4Kカメラの、合わせて2台の超高精細カメラで構成されている(写真1、2、図1)。

NHKとJAXA、火星衛星探査計画の探査機に搭載するスーパーハイビジョンカメラの完成を発表説明写真
写真1:8Kカメラ
NHKとJAXA、火星衛星探査計画の探査機に搭載するスーパーハイビジョンカメラの完成を発表説明写真
写真2:4Kカメラ
NHKとJAXA、火星衛星探査計画の探査機に搭載するスーパーハイビジョンカメラの完成を発表説明写真
図1 スーパーハイビジョンカメラの搭載位置

ロケット打ち上げ時の振動・衝撃や宇宙空間での過酷な環境に耐える設計となっており、JAXA の規定に基づく耐環境試験をクリアしている。火星と地球との間の通信速度の制約から、データ量の大きな4K・8K 映像をそのまま送ることは難しいため、撮影間隔は10秒に1回とし、連続的に撮影した静止画を地球へ伝送した後に滑らかな映像に変換する方式とした(表1)。


表1:完成したスーパーハイビジョンカメラの諸元
項目 8Kカメラ 4Kカメラ
画素数(水平×垂直) 7,680×4,320画素 3,840×2,160画素
撮影画角(水平) 65°
撮影間隔 10秒間隔
画像データ形式 JPEG
画像データサイズ 9MB/枚程度 4MB/枚程度
探査機搭載位置 探査機の進行方向 探査機の側面方向
主な撮影目標 火星・火星衛星の高精細映像、
フォボスへの着陸
フォボスへの着陸、
着陸後のフォボス表面

今後、完成したスーパーハイビジョンカメラは探査機に取り付けられ、探査機とのシステム結合試験を行う。2026年度の探査機打ち上げに向け、引き続き準備を進めていくという。

なお、2024年5月27日~29日にNHK放送センターで開催される「NHK Tech EXPO 2024」では、探査機に搭載するスーパーハイビジョンカメラと同じ形状・構造を持ち、実際の耐環境試験にも使用された試作機を展示する。