©2023 NEOPA / Fictive

Blackmagic Designによると、濱口竜介監督の最新作で長編映画「悪は存在しない」の撮影にBlackmagic Pocket Cinema Camera 6K G2、グレーディングにDaVinci Resolve Studioが使用されたという。2022年のアカデミー国際長編映画賞を受賞した濱口監督の「ドライブ・マイ・カー」に続く同作品は、株式会社キューブフィルムの北川喜雄氏が撮影し、株式会社オムニバスジャパンの小林亮太氏がDaVinci Resolve Advanced Panel を使ってグレーディングした。

第80回ヴェネチア国際映画祭コンペティション部門で銀獅子賞を獲得した「悪は存在しない」は、長野県、水挽町を舞台に便利屋として生活を送る巧とその娘、花の物語。彼らの住む近くに、とある企業がグランピング場を建設する計画が持ち上がり、その影響が巧たちにも及んでいく。

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同作の撮影を担当したシネマトグラファーの北川氏は濱口監督とは東京芸大の大学院で知り合い、その後いろいろな作品で撮影を担当している。

北川氏は、次のようにコメントしている。

北川氏:今回、Blackmagic Pocket Cinema Camera 6K G2を使って撮影しました。

Blackmagicのカメラを映画で使ったのは、濱口さんの監督した「ハッピーアワー」につぎ2回目です。他のカメラも候補に上がりましたが、スーパー35mmセンサーで撮る方が、今回の台本で表現したいことに繋がると思ったのと、トリミングやサイズ変更の可能性も踏まえて解像度の高いPocket Cinema Camera 6K G2を採用しました。

また(カラリストの)小林君からもBlackmagic RAWは色の分離がしやすいので、グレーディングがしやすいと聞いていました。

北川氏:今回の作品ではニコンのオールドレンズで、スチル用のGN Auto Nikkor 45mm F2.8をメインに使用しました。基本的にPocket Cinema Camera 6K G21台で撮影して、2カメが必要なシーンも同じカメラ2台で撮影しました。

照明を極力使わずに、自然光を生かした美しい自然が特徴的な同作は、Kodak PORTRA400のルックをシミュレートしたものだった。PORTRAでマクベスチャートを撮影したプリントデータとネガをPENTAX FILM DUPULICATORに取り付け、Pocket Cinema Cameraで撮影したデータの2つを利用し、小林氏がDaVinci Resolveのカラーマッチツールで正確な色補正をした後、細かい調整を行ってLUTを完成させた。

北川氏と小林氏は大阪芸術大学時代の先輩後輩の間柄で、濱口作品の「ハッピーアワー」でもタッグを組んでいる。

小林氏:Pocket Cinema Camera 6K G2はこのPORTRA 400リファレンスに合わせるという意味で相性が良かったと思います。撮影に使ったオールドレンズとのマッチングも良かったですし、グレインも足してはいないのですが、程よい粒子感もあっていいところに収まったなという感じです。

素材がきちんと撮られていたので、今回、そこまでグレーディングで苦戦することはありませんでした。特に雪のショットは通常、飛んでしまったり、ハイライトに色を入れると雪の色がおかしくなったりするのですが、今回はストレスなくグレーディングできました。

この作品は光が綺麗な映画です。現場で撮影していた北川さんが感じた印象をグレーディングでどう再現するかに注力しました。現場で急いで撮っているとベストな状態で撮影できないこともあります。

今回、DaVinci ResolveのHDRツールを使って、部分的なところを、ライティングをやり直すような感じでグレーディングしました。HDRツールはカメラの絞りを動かすような感じで、絞りのシミュレーションをかなり正確にできるので、肉眼での見た目と近い、いい仕上がりになります。

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