朋栄内覧会「FOR-A CONNECT 2024」開催。Media over IPやクラウド、XRを始めとした最新製品・ソリューションを展示[Report NOW!]メイン写真

朋栄は、2024年6月27日から6月28日にかけて内覧会「FOR-A CONNECT 2024」を開催した。30年以上続けている毎年恒例の新ソリューションお披露目イベントで、今年はHi-RDSをはじめ、Media over IP、クラウド、XRの展示が見どころとなっていた。会場の様子を紹介しよう。

6月28日の第一会場の様子

NMOSデバイスの追加、共有を実現する「Hi-RDS」をデモ

NMOSデバイスの追加や共有がしやすくする「Hi-RDS」

今年の内覧会の一番の見どころは放送局向けの「Hi-RDS」の展示だ。簡単にいうならば、「複数の設備を共用して使えるレンタルシステムを作れる」という革新的なソリューションだ。

現在の放送局は、SDIのベースバンド信号からIP化へ向かっている最中だ。そのIP化のビデオの方式は、オープンフォーラム「AMWA」が決めた「NMOS」方式になりつつある。

そんな世の中の動向がありつつも、国内の放送局のこれまでの設備導入は縦割り中心が現状だ。例えば、マスターシステムはあるベンダーが設備を構築し、制作でニュースを扱う部屋や中継車は違うベンダーが構築を行うことが多い。それぞれが違うIPのコントローラーとシステムを導入した場合は、昔できていたある機材をみんなで使うことができないという問題が発生する。これはIPゆえの難しさであるが、できないのを乗り越えようとした技術が、階層型RDSだ。

仮想化の技術を持ち込んで、あたかもそれぞれのサブコントロールルームやアイランドに使いたい機械があるがごとく、仮想化を実現可能になる。

今時のNMOSリソースは単チャンネルではなく、多チャンネルを持つことが多いが、複数チャンネルのNMOSリソースを全てのアイランドで持つのは無駄である。複数チャンネルのデバイスは、好きな単位で仮想化を行い分けることが可能で、いろいろなところで利用が可能になる。そういったことが実現可能になるソリューションだ。

オプションソフトウェアとして回線ブッキングオプション「SOM-20BK」を使えば、指定時間にタスク切り替えが可能になる。会議室の予約のイメージで、どのマシンをどこの時間まで使用するかの振り分けソフトで使いたい時間に使うことが可能になるのも魅力だ。

これ1台で何でも処理できるマルチチャンネルプロセッサー「FA-1616」

Media over IPコーナーの注目展示は、昨年発売を開始したマルチチャンネルプロセッサー「FA-1616」だ。SDIをIPに変換するIPゲートウェイは他社からも発売されているが、FA-1616はIPゲートウェイ専用ではない。ビデオプロセッサー+IPゲートウェイを特徴としており、SDIとIPを変換しつつ、いろいろなプロセス処理ができるのを特徴としている。

SDIとIPのワークフロー間のギャップをシームレスに埋めるFA-1616

最大4Kの解像度で最大32チャンネルをサポートし、色補正やオーディオの編集も可能。オプションスロットとして、Dante、MADI、AES、アナログオーディオインターフェースを実装できる。オーディオと映像に関して、さまざまなフォーマットを入力して変換し、いろいろなフォーマットに出すことができる。これ1台あれば、なんでも対応できるという製品である。

会場の実機展示では、「IP+映像変換」と「SDI+IP混在システム」のデモが行われていた。

IP+映像変換のデモコーナーでは、IPスイッチからST-2110でFA-1616に入力し、FA-1616のプロセスによってアップコンやダウンコン、HDR、SDRのコンバートを行い、ST-2110やSDIに出力の様子を紹介していた。

SDI+IP混在システムのデモコーナーでは、IPゲートウェイとプロセッサの様子を紹介。SDI 16チャンネルを入力して、IP 16チャンネルに出力。それを別のマルチビューワー分割式で表示し、IPで入れてSDIで出力。合計で32チャンネル分のIPゲートウェイがこの1Uサイズでできることを実演していた。

IPを使うと結構遅延が大きいと思われているが、ブースのデモでは遅延を測る4Kタイムラグチェッカー「EDD-5400」を使って、どの程度の遅れが発生かを測定。決して遅延は大きくないことを、実際の数値で紹介していた。

ビデオスイッチャーからストリーミング機能まで多用途に対応可能な「MFR-3100EX」

NDI/イベント関連エリアの目玉の展示は、ルーティングスイッチャー/オールインワンライブシステムの「MFR-3100EX」だ。4RUサイズの筐体で最大で64入力、72出力のマトリクス構成が可能。I/Oモジュールの入れ替えが可能で、オーディオのボードとしてMADI、AES、アナログオーディオをラインナップし、ビデオとオーディオの混在した構築が可能なのを特徴としている。

MFR-3100EXは、4RUでルーティングスイッチャー、ビデオスイッチャー、マルチビューアー、ダウンストリームキーヤーとして可能

また、MFR-3100EXをより幅広い場面で活用可能にするオプション「MFR-31VP」を搭載することで1M/Eビデオスイッチャーの機能を実現可能だ。例えば今回はラックの展示だが、モニターを確認しつつスイッチャーを操作するといった小規模なイベントにも対応が可能としていた。

ルーティングスイッチャーがメインだが、オールインワン、ライブシステムとして入力された音声や映像を扱うことができるほか、MFR-31VPを使えばSSDを搭載して収録することも可能。小規模のライブであれば、これ1台で対応可能というコンセプトの製品になっているのはユニークだ。

接続可能なハードウェアコントロールパネル「MFR-31OU」とリモートコントロールユニット「MFR-16RUTA」とを組み合わせた例。入力16系統を分割表示可能なマルチビューワー出力を1系統搭載

手軽にバーチャル演出を実現できるバーチャルスタジオ/ARソフトウェア「VRCAM-Lite」

朋栄と言えば高品質なバーチャル演出が行える「VRCAM-NX2」の取り扱いが有名だが、その機能を抑えてよりローコストに運用できる「VRCAM-Lite」の展示も目を引いた。特徴はソフトウェアでの提供で、Brainstormの高品質なCGをノートPC1台でCGの合成とその出力が可能。ソフトウェアのみの提供で、価格も比較的ローコストなのも特徴。制限としてNDIでの入出力とカメラの接続台数は1台に限定されるが、面白い演出が可能になりそうだ。

デモでは、PTZカメラからFreeDプロトコル出力でセンサー情報とカメラ映像を出力し、NETGEARのハブを経由して1本で入力。カメラ映像に対してCG合成を行う形で送出するデモが行われていた。PTZカメラのアングルを動かすと、CGの位置情報もそのカメラの画角に合わせて連動するコンテンツ制作が可能だ。

オプションでNDI対応に対応するライブイベントにも最適なスイッチャー「HVS-190S」

もう1つNDI・イベントコーナーで気になったのは、2023年に発売した3G/HDポータブルビデオスイッチャー「HVS-190S」とI/F基板「HVS-NIF」の展示だ。スイッチャーは、標準で8入力5出力、オプションにより最大で20入力11出力まで拡張可能。

HVS-NIFのラインナップの1つに、NDI入出力カードがあり、こちらのカードを搭載することにより、SDIに加えてNDI接続の追加が可能。NDI対応PTZカメラを使えば、タリー連動や制御が可能。システム構築をし易い面もNDIのプロトコルのメリットだ。

カメラポジション情報を記録してFBX形式に変換できる「BuckTrack」公開

第2会場はXRの展示が行われていた。ここではビジュアル・グラフィックスのオープンハウス「VGI CONNECT 2024」を開催。NAB 2024でリリースされた同社取扱メーカーの最新情報を中心に、次世代映像制作ワークフローに最適なプロダクトとソリューションの展示が行われていた。

VGI側の目玉の1つは、撮影カメラのポジション情報を記録し、FBX形式に変換するコンバータソフトウェア「BuckTrack」の展示だ。

LinkBoxはカメラの動きを作画の方に送らせて映像合成を行うことが可能だが、BuckTrackはカメラトラッキングシステム「LinKBox2」と組み合わせて、カメラの動きをログファイルとしてトラッキングデータをファイルに落とし込んでリアルタイムに保存するというツールだ。

今現場では、映像素材は受け取ってもカメラの動きはわからない。そのため、カメラの動きを抽出するためにマッチムーブという処理を行うために、外部の業者に発注や他の部隊に任せて行われているのが一般的だ。しかし、手間の煩雑さや仕上がりに難を感じるというのが現状である。

BuckTrackは、トラッキングデータをファイルに落として、fbxというCGソフトでよく使われているフォーマットに変換。同時に実写の映像も同録する。この2つの素材をこのCGソフトに渡せば、後工程でそのカメラのアングルに合わせたエフェクトの追加や合成作業などが楽にできるというツールだ。

Linkbox2の展示も健在だ。モデル2になって、外部同期信号の入力に対応。オプションで、放送用レンズ バーチャル端子接続ケーブルにも対応する。キヤノンやフジノン放送用レンズに装備されているバーチャル端子とLinkBox2を接続し、ズーム、フォーカス情報を位置情報と共にFreeDでの出力が可能になるという。

スペインのLEDメーカーAlfalite社製LEDパネルを日本初披露

XRのコーナーの目玉は、ヨーロッパでは老舗のLEDメーカーAlfalite社製LEDパネルの日本初披露だ。Alfaliteは、スペインに自社工場をもつLEDパネルメーカーだ。

1,900nitsの明るさを特徴としているが、デモでは明るさを抑えて展示が行われていた。絞ることで寿命の延命が可能としている。視野角は175°で、海外製の他社LEDよりも広さがあるという。ほぼ真横から確認してみたが、色やコントラストの変化はなかった。色域はREC.2020で80%以上を実現。かなりハイスペックな仕様が特徴だ。50cm四方のLEDパネルモジュール方式のモデルを、3m×2mの大きさで展示を行っていた。

Alfalite自体は、幅広いラインナップを揃えており、スタジオ向けや屋外のレンタル向けなどがあるという。その中でピッチの種類も複数あり、今回は1.9mmモデルを展示。高精細なモデルでは0.6mmもあるという。耐荷重は1トンで、床には壁と同じLEDを埋め込んだ状態で展示が行われていた。

第2会場では、Brainstormのアドバンストバーチャルシステム「InfinitySet」を使ったXRの展示も目を引いた。InfinitySetの最新バージョンでは、XRに対応する機能を搭載。大手ツールよりも安価にXRを実現できるという。通常、他社のXRソリューションでは、Unreal Engineを使用してnDisplayでXRを実現するのが一般的だが、Brainstormは独自な手法を採用していてそこに特色があるとのことだ。