Blackmagic Designによると、ネットワーク・システムの構築・運用保守などを手掛ける株式会社インターネットイニシアティブ(通称:IIJ)が自社のスタジオに多数のBlackmagic Design製品を導入したという。
同社は日本で初めての国内インターネット接続事業者として創業され、携帯電話向け通信サービス「IIJmio(アイアイジェイミオ)」や企業向けにネットワークサービスなどを展開する傍ら映像配信のシステムインテグレーション事業も行っている。
同社が映像配信をはじめたのは97年。きっかけは当時、すでにインターネット上には画像や動画が流通していたことがあり、これらの大容量の情報をコンテンツプロバイダーとISP間で高速でつなぐサービスが必要になってくることを想定したことであるという。
同社は現在は主に自社の決算発表会やメディア向けの発表会、自社のYouTube撮影などでスタジオを利用しているが、最近は他社にスタジオを貸す事業も展開している。
同社配信ビジネス課長を務める渡辺文崇氏は、次のようにコメントしている。
渡辺氏:当初は社内の有志が配信機材を揃えて、会議室などから配信を行っていましたが、我々の配信映像を見た方から映像が綺麗だと言われたことをきっかけに、さらに高品質な配信を行うため、スタジオを構築しました。
2022年に完成した自社スタジオ「IIJ Studio TOKYO」は、同社のオンラインイベントなどの外部発信の拠点として活用されている。また、同スタジオをベースに、法人顧客のイベントやセミナー、製品発表会などの配信および収録を配信エンジニアのサポートと合わせて提供するサービスも展開している。インターネットとの接続に関しては同社のバックボーンネットワーク直結の高速専用回線を備え安定した配信環境が用意されている。
同スタジオには、Smart Videohub12G 40×40ルーター、VideoHub Master Control Pro、SmartVew 4K 3Gモニター、Audio Monitor 12G、HyperDeck Studio 4K Pro、HyperDeck Studio HD Pro、UltraStudio 4K Extreme、Video Assist 7’12G、Web Presenter 4K、Blackmagic MultiDock 10G、Teranex AV およびTeranex Express、Teranex Mini SDI to Audio 12G、Teranex Mini SDI Distribution 12G、Mini Converter UpDownCross、Micro Converter BiDirectional SDI/HDMI 12Gといった数多くのBlackmagic Design製品が導入されている。
渡辺氏:編集にはDaVinci Resolve StudioとDaVinci Resolve Speed Editorを使用しています。動作の軽さと機能の豊富さ、そしてVideo Assistで再生させる動画の書き出しで使用できる点が気に入っています。
IIJ広報部担当者は、次のようにコメントしている。
IIJ広報部担当者:技術説明会や決算発表会をオンラインで視聴された記者の方から、映像がとにかく綺麗だとおっしゃっていただくこともあります。それが話題となり、記事になったこともあります。
同社は自社スタジオからの配信だけでなく、コンサート会場などでのライブ配信事業も展開している。中でも毎年春に上野の東京文化会館で開催される「東京・春・音楽祭」に関しては2013年から配信を担当しており、今年の3月から38日間にわたり開催された同音楽祭では、約20名のチームで、ATEM Television Studio Pro 4K、Video Assist 7’12G、コンバーター類、Teranex AV、Teranex Expressが使用された。
会場に設置した1台のカメラからの映像、動画素材や画像素材などをスイッチングし、そこからエンコーダをとおしてIIJ Media Sphereサービス(IIJのクラウド型動画配信サービス)へ映像・音声を入力して専用サイトに配信したという。
渡辺氏:ATEM Television Studio Pro 4Kに関しては、手軽に持ち出せるサイズでSDIが接続できるというところですね。特に施設の管理者が自治体だったりすると、機材を常設できない場合もあるので、そういう時に持ち運びやすい機材だったというのも導入理由の一つでした。
Blackamgic Design製品は、機能と価格のバランスやユーザーが多いことによるノウハウの量が多いことも導入の決め手になりました。
続けて、ライブ配信環境を構築する上で大切にしていることとして、渡辺氏は次のようにコメントしている。
渡辺氏:持続性を大切にしています。音楽ライブの配信は人手も少なく、有名なアーティストでない限り、収益を上げることも難しいことが多い中で、継続的に続けられるような配信環境を構築する必要があると考えています。ただ、品質を落とすわけにはいかないので品質とコストのバランスを鑑みた上でより良い品質の映像を届けることが大切だと考えています。
また、配信ビジネス課でエンジニアを務める伊澤高氏は、次のようにコメントしている。
伊澤氏:私は前職から現場で配信を担当していたのですが、その観点から言うと、いかに安定した配信を行うかが大切だと思います。こちらが破綻してしまうと、実際に見てくれてるエンドユーザーさんたちに1番迷惑がかかってしまうので、自分たちが安心・安全に配信できるシステムや機材構成を考えることが大切だと考えています。
渡辺氏:弊社がネットワークの会社ということもあり、個人的にはできるだけリモートで配信できると良いと思っています。
例えば、物理的な機材がどこにあるかをあまり気にせずに、オペレーターだけが現地に行って、パソコンとモニターだけでスタジオの設備とか機材とかを制御できるといった様な形にできると、現地に機材に落ち込まなくても、配信が可能になるので、配信の幅が広がると考えています。
もう少しネットワークを活用して、リモートでできる配信を増やしていければ嬉しいです。