Blackmagic Designによると、ショートアニメ作品「エフェメール」の制作にDaVinci Resolve StudioおよびBlackmagic Cloud、Fusion Studioが使用されたという。同作の制作はアニメスタジオ株式会社ノーヴォと株式会社スタジオエイトカラーズが共同で行った。
「エフェメール」は繊細で美しい世界観で多くのファンを持つイラストレーターである旧都なぎ氏がコンセプトデザインを手がけたショートアニメ。星座や天体をモチーフとした旧都なぎ氏のコンセプトアートをもとに、人類が惑星に移住できる未来を舞台に天王星のとあるホテルで、ウタとポーラというふたりの束の間のふれあいを描いた作品だ。
同作品は文化庁のアニメーション人材育成調査研究事業、「あにめのたね」から助成を受けて制作された。このプロジェクトには10分程度の短編オリジナルアニメを作って、その作品制作を通して人材育成するプログラムがあり、「エフェメール」を含む4作の企画が助成金の対象作品として選ばれた。通常のアニメ作品では珍しい旧都なぎ氏独特の繊細なイラストのタッチをアニメーションで再現した同作は、その編集やエフェクトの作成にDaVinci Resolve Studioが使用された。
同作品の制作にはDaVinci Resolve StudioとBlackmagic Cloudのワークフローが活躍しており、株式会社スタジオエイトカラーズのアニメーターがいる高知県と監督の清水理央氏と同作の撮影(合成)および編集を担当した株式会社ノーヴォの小町直氏がいる東京との2拠点をベースに作業が進められた。
小町氏は、次のようにコメントしている。
小町氏:僕も清水さんも基本的には自宅で仕事をして、必要なときに集まるという感じでした。もともとローカルデータベースを使ったコラボレーションのワークフローは構築してあったんですが、リモートでやるとVPN環境の構築やマシン間の相互通信が一台でも外れていると通信が弾かれるなど、導入当初から頭を悩ませていました。
その点、Blackmagic Cloudはインターネットに繋がっていて素材の共有さえできていれば、簡単にクラウドワークフローが実現するので利便性をとって今回の作品で使うことにしました。
監督の清水理央氏は、次のようにコメントしている。
清水氏:プリビズやビデオコンテの段階からDaVinci Resolveを使いました。僕が素材チェックを兼ねてタイムラインに素材を並べておいて、小町さんに定例チェックや編集時にオペレーションをしてもらうという流れでした。
DaVinciのマーカー機能はよく活用していて、タイムライン上に情報を集約するという使い方ができます。気になる部分にマーカーを入れて、こういう処理をしたいといったメモをつけていくことが、打ち合わせのときにリアルタイムでできるんです。
色のチェックなど作業終盤のチェック時は清水監督と小町氏は編集室で作業し、そのほかのスタッフはその結果をクラウド上で確認することでマシンや作業場所に縛られず作業を続けることができたという。
清水氏:僕自身はDaVinciが使えるので自分でタイムラインを構築したりもしますが、使えない人とでもプロジェクトの共有のメリットはあります。ムービーの書き出しなどの段取りを踏まずに常に最新のタイムラインを確認できるのでかなり(クラウドの)利点を活かせると思いますね。
小町氏:編集インデックスをCSVで書き出せるのも便利でした。絵作りに関わるフィードバックがほとんどなので、フィードバックをDaVinci上で全て完結させて編集インデックスをCSVで書き出してマーカー部分だけを残してスタッフに渡しておくことで、DaVinci Resolveを使わないスタッフにも情報を共有できました。
また、高知にいるスタジオエイトカラーズのスタッフともプロジェクト共有をして作業を進めたという。
小町氏:アニメ作品の場合、タイムラインを最初に作るときに、カットナンバーを画面の隅に入れたり、ボールドと言って、キャラクターが喋るところに、キャラの名前を画面上に表示させたりする作業があるんです。そういった作業を高知のスタッフと一緒にやることで、作業を効率的に進めることもできましたし、二人でやることで相互チェックができてミスを防ぐこともできました。
さらにオンライン編集では、DaVinci ResolveのカラーやFusionページの機能も大いに活躍したという。
小町氏:編集段階において、あまり目立たせたくないキャラクターに対して輝度を落としたり、フレアを付けたり、逆にフレアの効果を弱めたりといったことや、コントラストの調整などもよくやりました。また、画ブレといって実写の手ブレのようなカメラワークをわざとつけたりしています。
ほかにも、鳥がぴょんぴょん飛び跳ねているシーンがあるのですが、動きを抑えたかったので、Fusionページで動きのタイミングを調整しました。このような作業は、一般的なアニメワークフローだと一つ前の工程の撮影が担うのですが、撮影時では原則カット個別での作業になるので、タイムラインに並べた上で前後見比べつつ細かい調整ができるのは大きな利点だと思います。
また、作品中の天候ドームの空が変わっていくショットとオーロラのショットでは、小町氏がFusion Studioを使ってエフェクトを作成した。
小町氏:天候ドームのシーンは、Fusionでマット素材を作りました。デジタルの規則的な動きではなくてランダム感が欲しかったので、かなり試行錯誤しました。作り方を考えながら作業していたので動作が軽快なFusion Studioを使いました。
DaVinci Resolveはワークフローに対してフレキシブルに対応しやすいです。編集のみで使うつもりでも、いざ始まってみると本来コンポジターにリテイクを依頼するような作業や編集中に新しいアイデアが出てきたときも、DaVinci Resolveでサクッと対応できました。