ソフトウェアへ劇的な方向転換を実現しつつ、ハード製品も継承

朋栄は10月23日、千葉県千葉市の幕張メッセで開催される「Inter BEE 2024」の出展内容について説明した。「Find your NEXT innovation」をテーマに、開催概要や見どころを明らかにした。

代表取締役社長 清原克明氏が挨拶し、朋栄の目指す未来について話をした。朋栄のビジネス状況の説明では複数の新製品を展示できることに触れ、「階層型RDSの正式なリリースの発表や放送機器としてお使いいただいてきた機能をソフトウェアベースで自由に組んでいただけるFOR-A IMPULSEを発表します」と紹介。その一方で、「ソフトウェアベースやクラウド対応にかなりの勢いで方向性を転換してまいりますけども、ハードウェアをやめるわけでございません。ハードウェアは50年以上続けて製品を作ってきたメーカーであり、これまで培ってきたハードの良さ、ハードの優れたところをしっかりと継承しながら、ハードの製品開発市場にも継続して行ってまいります」と語った。

朋栄 代表取締役社長 清原克明氏

朋栄の新ソリューションや進化した製品を5つのゾーンに分けて展示

次に各担当者が展示内容について詳細を紹介した。Inter BEEの展示概要については、取締役副社長の曽我正博氏が説明を行った。

曽我氏はまず、ブースイメージを紹介。今年はよりスタイリッシュなイメージで、朋栄としての新しい取り組み、会社としての新しいチャレンジ、そんなイメージを訴求できるブースデザインを目指したという。

今年の朋栄ブースのテーマは「Find your NEXT innovation」。放送市場だけではなく、セキュリティ、監視の市場でもIPのシステムが広まっている。しかしまだSDIを使用の現場もたくさんあるし、SDIとIPのハイブリッドでデコレーションをされる現場も多数ある。朋栄は今まさに市場の転換期と考えており、転換期であるからこそユーザーに寄り添って最適な解を提供したいと紹介した。

今年の朋栄ブースの出展位置は幕張メッセのホール5(小間番号5117)。2023年の25小間から2024年は30小間にブースを広げて展示する。また、同社ブースのすぐ近くには関連会社のビジュアルグラフィックスもブースを構える。こちらにも来場してほしいとアピールをした。

主な会場構成としては、MoIP、クラウド/エッジソリューション、FOR-A IMPULSE、バーチャルソリューションの4つとプレゼンテーションエリアに分かれている。

MoIPコーナーは、マルチベンダー環境や複数のアイランド環境をつないでオペレーションを行う「Hi-RDS」を紹介する。Hi-RDSは海外で展開をしている名称で、国内では階層型RDSの名称で展開をするという。様々な機能の追加や変換変更の柔軟な対応ができる製品としている。

ソフトウェアデファインドの技術を取り入れた製品のコーナーでは、マルチチャンネルプロセッサー「FA-1616」やIP対応マルチビューワー「MV-3240IP」、IP入出力対応のビデオサーバー「MBP-1100VS-IP」など一連のソフトウェアリファインド製品を紹介をするという。

FOR-A IMPULSEコーナーでは、Inter BEEでデビューをする同新製品を紹介する。「FOR-A Integrated Media Platform with Unlimited StructurE」が正式な名称。ユーザーの制作ワークフローに衝撃を与える、劇的な変化をもたらす、そういった提案の実現を目指した思いで開発を進めているという。

クラウド/エッジソリューションのコーナーは、NTTのデータセンターと協業したデモを展示。大阪の堂島にあるNTTDATA堂島MMRにFOR-A IMPULSEを設置して、幕張の同社ブースからオールインワンライブシステムの「MFR-3100EX」あるいは小型スイッチャー、イベントプレーヤーといった製品と接続。オンプレ環境、クラウド環境をシームレスに連携して、リモートプロダクションのデモを展開する予定としている。

バーチャルソリューションコーナーは、朝日放送テレビとアイネックスとの共同、連携したデモを予定している。朝日放送とアイネクスは、自社以外にも数社のテレビ局にバーチャルの運営やコンテンツの提供を行っている。今回はアイネックスが制作をしたCGを使用してXRのデモを行う。このデモには、スペインのAlfalite社製LEDウォールを使用する。

IPパビリオンは、テレビ北海道で実際に使用されているMoIPマスター、サブ設備を使用して、幕張メッセのIPパビリオンからリモート制作を体験できる企画を行う。毎年大変好評な企画だという。

リソースシェア運用の効率化を提供する階層型RDS

本発表会では、2つの新製品の詳しい説明も行われた。

階層型RDSは、DMP事業本部の天野論氏が詳細な説明を行った。階層型RDSは「SOM-200RDS」と「SOM-20RDS Plus」で構成されるリソースシェアのソリューションの総称で、「SOM-200RDS」は共有のNMOSリソース一括で登録するためのRDSとしている。

左画面は予約管理のインターフェイス。リソースをシェアする機材に対して予約情報を時間軸で表示する。予約を入れることで時間になると該当の装置を貸し出すことが可能になる。デモでは、Aサブ、Bサブの形で割り振りをしていて、撮影時点では素材はBサブに貸出をしている状態。右側のモニターのRIEDELの右上の方に映像が映し出されている

「SOM-20RDS Plus」はRDSフィルタリングAPIで、プライマリーRDSに登録された共有NMOSリソースを各アイランドのローカルRDSに割り振り、AMWA NMOS IS-04を使って登録処理を行っていくためのソフトウェアとしている。Hi-RDSを使うメリットとして、1リソースシェア運用の効率化が可能になる点とシステム構築の柔軟性を提供できるという。

単体製品や専用製品の持つ機能をソフトウェア化したFOR-A IMPULSE

FOR-A IMPULSEは、DMP事業部の木下聡氏が詳細な説明を行った。Inter BEEがデビューとなるソフトウェアベースの機能統合型ライブプロダクションシステムで、映像制作におけるDX化、映像制作ワークフローを進化させるソリューションになると考えているという。

「IMPULSE Web Controller」の「Graph Editor」の様子。構造をカスタマイズすることが可能

IMPULSEでは、朋栄の映像制作環境向けの単体製品や専用製品の機能をソフトウェア化して共通プラットフォーム上で動作が可能になる。様々なフォーマットの入出力や朋栄の持つプロセッサービデオスイッチャー、マルチビューアー、テロップ送出機、MBPのビデオサーバーなど組み合わせてさらに変更ができるソフトウェアデファインド製品としている。

共通プラットフォームによって専用機器を減らして、メンテナンスや保守バックアップ、年に数度を利用するような機材の効率化を目指しており、最終的にはFOR-A IMPULSEのみでのシステム構築やクラウド環境への進出の提案も考えているという。構造後から変更可能で、過剰な初期投資の抑制を期待できそうとのことだ。また、複数の構造の同時稼働が可能で、配信や中継、可搬など機材の持ち出しや移動を抑えながら制作をより効率化できるものと考えているという。

最後に、「今後も次世代放送システムの構想を発展する開発というのを朋栄は続け、放送のメディアシステムのDX化に寄与するよう取り組んでまいります」と強い口調で締めくくった。