Apple IntelligenceをiPhone、iPad、Macで提供開始

Appleは、iPhone、iPad、Macユーザー向けのApple Intelligenceの初期機能が、iOS 18.1、iPadOS 18.1、macOS Sequoia 15.1のリリースで無料のソフトウェアアップデートとして提供開始した。新しいApple Intelligenceの機能は2024年12月に提供開始され、さらに多くの機能が今後数か月の間に提供予定。

AppleのCEO(最高経営責任者)、ティム・クック氏は次のようにコメントしている。

Apple IntelligenceとともにiPhone、iPad、Macの新しい時代が幕を開け、まったく新しい体験とツールが提供されることによって、ユーザーが達成できることが一変します。

Apple Intelligenceは、Appleの生成モデルをApple製デバイスの中心に据えるために、AIと機械学習での長年にわたるイノベーションをもとに開発されており、プライバシーを保護しながら、使いやすいパーソナルインテリジェンスシステムをユーザーに提供します。Apple Intelligenceは、Appleだけが実現できる方法で提供される生成AIであり、私たちはユーザーの生活を豊かにする機能に非常に期待しています。

システム全体で使える作文ツール

iOS、iPadOS、macOSにわたって緊密に統合されている作文ツールにより、ユーザーは、メール、メッセージ、メモ、Pages、他社製アプリなど、ほとんどすべての文章を書く場面で、書き直し、校正、要約を通じて、言葉づかいに磨きをかけることができるという。

「書き直し」を使うと、Apple Intelligenceによってユーザーは自分が書いた文章の様々なバージョンから選ぶことができ、読者や作業中のタスクに合わせて、表現方法を「プロフェッショナル」「簡潔」「フレンドリー」に調整可能。「校正」は、文法、言葉づかい、構文をチェックするほか、編集の候補をその説明とともに提案するため、ユーザーは確認したり、すばやく承認することができる。また、テキストを選択して、読みやすい段落、箇条書き、表、リストなどの形で要約可能。

より自然に会話ができるSiri

Siriはより自然で、文脈に即し、緊密にシステム体験に統合されている。iPhone、iPad、CarPlayで作動している時は、画面の縁を囲うように光り輝く、新しいデザインを採用。Macでは、デスクトップの好きな場所にSiriを置いて、作業中に簡単にアクセスできるようになっている。iPhone、iPad、Macでは、Siriにいつでもタイプ入力でき、Siriを使いながらテキストと声をスムーズに切り替えて、日々のタスクをよりすばやくこなせるようになるとしている。

より豊かな言語理解の能力を備えたSiriは、ユーザーが言葉につまづいても話についていきながら、1つのリクエストから次のリクエストへと文脈を保てるという。さらにSiriは、膨大な製品知識にもとづいて、Apple製品の機能や設定に関する何千もの質問に回答でき、画面収録の方法からWi-Fiパスワードの簡単な共有方法まで、あらゆることを学ぶことができる。

さらに賢くなった写真アプリ

写真アプリは新機能により、自然な言葉づかいで検索でき、「Maya skateboarding in a tie-dye shirt」など、探しているものを説明するだけで、ほぼどのようなものでも検索可能だとしている。ビデオでも検索できるため、ビデオの特定の部分で起きたことを検索して、すぐにそのシーンを表示可能。検索では、ユーザーがすばやく検索を完了できるよう、入力補助の候補も提供される。

iPhone 16 Proで写真アプリに表示されている新しい検索機能。写真アプリで探しているものを説明するだけで、ほぼどのようなものでも検索可能

不要な対象物や人物が写真のフレームの中に写り込んでしまった場合、クリーンアップツールを使って、撮影の瞬間の意図を忠実に保ちながら、不要な要素を削除可能。

メモリー機能により、ユーザーは説明を入力するだけで、見たいムービーを作成可能に(メモリームービーの作成はiPhoneとiPadで利用でき、今後数か月の間にMacでも利用可能になる予定)。言語と画像を理解する能力を活用して、Apple Intelligenceはユーザーの説明にもとづいて最高の写真とビデオを選び、写真から特定されたテーマにもとづいてチャプターに分かれたストーリーラインを作成し、独自の流れのある物語のムービーに仕上げるとしている。

iPhone 16の写真アプリに表示された、メモリームービーを作成するよう促すメッセージ。ユーザーの説明にもとづいて、Apple Intelligenceは写真とビデオを選択して組み合わせ、独自の流れのあるムービーに仕上げることが可能だという

優先順位を付けて集中する新しい方法

Eメールの管理がこれまで以上に簡単になった。優先メッセージにより、メールアプリの受信ボックスの先頭に表示される新しいセクションは、当日のランチの招待や搭乗券など、最も緊急性の高いEメールを表示。ユーザーの受信ボックス全体でメッセージを開くことなく要約を確認でき、長いスレッドの場合は「要約」をタップまたはクリックするだけで関連する詳細を表示可能。さらに、スマートリプライは、すばやく返信するための提案を提供するほか、Eメール内の質問を特定してすべてに確実に回答できるようにするとしている。

Apple Intelligenceは通知の要約によって、ユーザーが優先順位を付けて集中できるよう手助けする。通知の要約で、長い通知や積み重なった通知をすばやく確認でき、グループチャットでのやり取りが特に頻繁になった時などに、ロック画面に重要な詳細情報が表示される。新しい集中モードの「さまたげ低減」は、すぐに確認する必要がある通知のみを表示。

メモアプリと電話アプリでは、音声の録音、文字起こし、要約が可能。電話アプリで通話中に録音が開始されると、参加者に自動的に通知が届き、通話が終了すると重要なポイントを思い出せるようにApple Intelligenceが要約を生成する。

ユーザーは、電話アプリとメモアプリで音声の録音や文字起こしができ、Apple Intelligenceが文字起こしを要約します

多くの機能が登場予定

Apple Intelligenceは、ユーザーが自分らしさを視覚的に表現する新しい方法をもたらすとしている。絵文字はまったく新しいレベルに引き上げられ、説明を入力するだけでオリジナルのジェン文字を作成することが可能に。また、友人や家族の写真を使って絵文字をパーソナライズすることも可能。Image Playgroundは瞬時に楽しい画像を作成する。画像マジックワンドは、ラフスケッチを美しい画像に作り変えて、メモを視覚的に一段と魅力的なものにするとしている。さらに、何もない空白部分に円を描くと、周囲のコンテクストを使用して画像を作成可能に。

2024年12月には、作文ツールにおいて、ディナーパーティの招待状をより印象的な文体にしたり、履歴書により快活な動詞を追加するなど、文章に適用したい具体的な変更を説明できる機能が加わる。さらに、ツール間を行き来せずに、作文ツールとSiri内でChatGPTの幅広い世界に関する知識にアクセスし、画像と文書を理解する能力の恩恵を受けられるとしている。

また、12月には新しいビジュアルインテリジェンス体験がApple Intelligenceを基盤として実現し、iPhone 16のラインナップの新しいカメラコントロールにより、ユーザーは対象物や場所について瞬時に学べるようになる(カメラコントロールは、iPhone 16、iPhone 16 Plus、iPhone 16 Pro、iPhone 16 Pro Maxで利用可能)。

例えば、テキストをある言語から別の言語に翻訳し、目の前にあるレストランに関する詳細を把握し、情報を活用可能。また、カメラコントロールはある商品を買える場所を探すためにGoogleで検索したい場合や、ChatGPTの問題解決スキルの恩恵を受けたい時などに、特定分野の専門性を備えた他社製ツールへのゲートウェイとしても機能するという。他社製ツールを使用するタイミングやどの情報が共有されるかは、ユーザー自身が管理可能。

さらに、今後数か月の間に優先通知が最も重要なことを知らせるようになる。Siriはユーザーのパーソナルコンテクストを参照してユーザーに合わせたインテリジェンスを提供できるようになり、またSiriにオンスクリーン認識が加わることで、Appleと他社製のアプリ内やアプリを横断して何百もの新しいアクションを実行できるようになるとしている。

Apple TV+アプリでアクションを実行しているSiri。Apple Intelligenceにより、Siriはユーザーのパーソナルコンテクストを参照して質問に回答可能

プライバシー保護

あらゆる段階でユーザーのプライバシーを保護するように設計されたApple Intelligenceは、デバイス上の処理を使用しているため、それを動かすモデルの多くは完全にデバイス上で実行される。より多くの処理能力を必要とするリクエストの場合は、プライベートクラウドコンピューティングがApple製デバイスのプライバシーとセキュリティをクラウドにまで拡大し、さらなるインテリジェンスを活用できるようにする。

プライベートクラウドコンピューティングを使用する場合、ユーザーのデータをAppleが保存したり、共有することはないとしている。データはユーザーのリクエストに応えるためにのみ使用されるようだ。このプライバシーに関する約束が守られているかを継続的に検証するため、独立した専門家がAppleシリコン搭載のサーバ上で実行されるコードを調べることが可能で、AIにおけるプライバシーが大きく前進するとしている。

ユーザーは、Siri、作文ツール、またはカメラコントロールのビジュアルインテリジェンスの一部として提供されるChatGPTの統合を有効にするかどうかを選択できる。ユーザーは、アカウントを作成しなくても無料でChatGPTにアクセス可能。プライバシー保護が組み込まれており、ユーザーのIPアドレスは匿名化され、OpenAIはリクエストを保存しない。自分のアカウントとの連携を選択したユーザーには、OpenAIのデータ利用に関するポリシーが適用される。