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2025年2月13日、「Adobe MAX Japan 2025」が東京ビッグサイトで開催された。前回のAdobe MAX Japanは2023年11月16日に同会場で開催されたが、Inter BEE 2023と同日程での開催となり、PRONEWSは取材できなかった。今回は約1年半ぶりの現地取材となった。
2025年のAdobe MAX Japanは、チケットが1か月前に完売した。これほど早く完売することは今までなかったという。いろいろなクリエイターに話を聞くと、「前回参加して良かった」「今回も行きたい」という声が多く、開催回数を重ねるごとにクリエイターからの期待感が高まっている。
内容もさらに充実している。今回は「ジェネラルセッション」を行う大きな会場から、「フォーカスセッション」を行う少人数(60人程度)の会場まで、様々な会場が用意されており、ステージ数は5つだが、小規模のルームが8つに増えている。ブレイクアウトセッション数は、前回は約70だったが、今回は約80に増えている。
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さらに今年から、クリエイター同士が自由に情報交換できる「コミュニティラウンジ」が設置された。クリエイターがステージで話すだけでなく、新設されたコミュニティスペースで「自分はこういうふうに使っているよ」といった軽いプレゼンテーションができるような場所が用意されている。
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Adobe MAX Japanといえば、アドビ製品の最新情報をお伝えする「キーノート」が注目される。今年のキーノートでは3つの発表が行われた。
1つ目はクリエイティブ分野で、新しくなったFireflyビデオモデルの発表。2つ目はクリエイティブとマーケティングをつなぐGenStudioの披露。3つ目はクリエイティブと生産性の分野で、日本語対応されたAcrobat AIアシスタントの紹介。ここでは、クリエイティブ分野のハイライトをピックアップして紹介する。
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アドビCEOが語る、クリエイティブの未来
アドビCEOのシャンタヌ・ナラヤン氏は、Adobe MAX Japan 2025の基調講演で、日本市場における30年以上の歴史と、パートナーやコミュニティとの連携によるイノベーションを強調した。ナラヤン氏は、InDesignの日本市場向け製品の開発や、大手企業への導入実績を挙げ、出版・印刷業界への貢献をアピール。
また、Expressの日本向け改良や、IllustratorとPhotoshopの高い利用率を紹介し、日本のクリエイティブ市場への貢献を強調した。
![Adobe MAX Japan 2025レポート。Fireflyビデオモデルが映像制作の未来を変える説明写真](https://jp.static.pronews.com/pronewscore/wp-content/uploads/2025/02/250213_adobemax_-1223430.jpg)
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今年をクリエイティブ変革の年と位置づけ、生成AIの進化と影響を指摘。アドビはAIを活用して創造性を解放し、クリエイターを支援すると述べた。新しいFireflyアプリケーションを発表し、画像、ベクター、動画、音声を一箇所で生成できるようになったことを紹介。Creative Cloudとの連携により、シームレスなワークフローを提供する点を強調した。Firefly Videoモデルのパブリックベータ版リリースも発表し、その商業的な安全性をアピールした。
マーケター向けには、デジタルマーケティングプラットフォームを提供していることを紹介。Adobe Senseiを活用し、マーケティング活動のスピードと効果を高めることができると述べた。AIへのアプローチとして、人間の創造性を補助・拡大するツールとしてのAIの重要性を強調。Fireflyの開発では、ライセンス許諾されたコンテンツやパブリックドメインのコンテンツで学習させることで、安全なソリューションを提供している点を強調した。AIに関連する知的財産権等の問題にも言及し、クリエイターの権利保護を支援することを説明した。
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ナラヤン氏は、アドビのミッションは、世界をパーソナライズされたデジタル体験に変えることであり、デジタル体験のあらゆる局面でクリエイティブを活かすことであると述べた。
その中で注目の的は、グローバルリリースされた新しいFireflyアプリケーションである。画像、デザイン、ビデオ、ベクター、オーディオといった多様なメディアに対応し、アイデア出しからプロダクションまでをシームレスに繋ぐ。特に、生成AIを実現するFireflyビデオモデルは、テキストプロンプトのみで高品質なビデオを生成することが可能であり、映像制作の可能性を大きく広げる。
Photoshopはパワーと精度を向上させつつ時間短縮を実現し、Illustratorはスピードアップと日本語フォントの追加により利便性を高める。Premiere Proにも革新的な機能が導入され、3Dデザインツール「Project Neo」は、直感的かつパワフルな操作性でデザイナーの創造性を刺激する。
アドビは、クリエイターがビジョンを実現するための力とツールを提供し、インスピレーションをどこでも形にできる環境を追求している。新しいテクノロジーを既存のワークフローに組み込み、クリエイティブコントロールを最大限に提供することで、クリエイターを支援する姿勢を明確にした。
生成AIで映像制作を支援
ナラヤン氏の次に、マーケティング戦略およびコミュニケーション担当バイスプレジデント、ステイシー・マーティネット氏が製品デモを行い、具体的な活用事例を紹介した。
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Fireflyの最新情報と、進化を続けるクリエイティブツール群が披露された。Fireflyビデオモデルは、テキストプロンプトから高品質なビデオを生成する。静止画からビデオクリップを作成したり、複数の画像を組み合わせてユニークなエフェクトを生み出したり、映像制作に新たな可能性をもたらす。
生成されたビデオは、Premiere ProやAfter Effectsとスムーズに連携し、既存のワークフローに組み込むことが可能。Fireflyアプリケーションは、画像生成に加え、動画生成にも対応し、多様なクリエイターのニーズに応える。
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さらに、Photoshopは生成塗りつぶしや生成拡張などの機能強化により、表現の幅を広げ、Illustratorはスピードアップと日本語フォントの追加で利便性を向上。3DデザインツールProject Neoは、直感的な操作性で3Dデザインを身近にする。
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アドビは、生成AIの進化と共に、コンテンツの信頼性確保にも注力している。コンテンツ認証イニシアチブを通じて、コンテンツの来歴情報を付与し、透明性を高める。アドビは、AIを活用したクリエイティブツール開発と、コンテンツの信頼性確保の両面から、クリエイターを支援していく姿勢を明確にした。
キャプション翻訳で世界へ
製品担当のアドビ・田中玲子氏によるPremiere Proの最新機能も見逃せなかった。まずは、ユーザーからの要望が多かったキャプション翻訳機能から紹介した。日本語素材を読み込み、文字起こしからキャプションを作成する。これは既に多くのユーザーに好評を得ている機能だが、新たにキャプション翻訳機能が追加された。
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操作言語は英語で自動検出され、翻訳言語は現在17カ国語に対応しており、日本語も選択可能。この機能の注目すべき点は、同時に複数の言語に翻訳できることだ。翻訳は瞬時に完了し、複数のキャプショントラックを表示できる。日本語字幕を見てみると、高精度な翻訳がされていることがわかる。他の言語も同様に翻訳されており、日本語素材から英語字幕を作成することも容易である。
次に、字幕を目立たせる方法を紹介した。スタイルブラウザを使用すると、プリセット登録したスタイルを一覧から選択できる。好みのスタイルを選択し、サイズを調整して字幕を目立たせる。調整したスタイルは他の字幕にも適用できる。
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日本語字幕とスタイルの調整が完了したら、再度日本語の精度を確認する。日本語の精度は高く、タイミングも適切である。これは日本のR&Dチームが工夫して搭載した実用的な機能とのことだ。この機能はベータ版で利用可能なので、気軽に試してみてほしい。
次に、大量の素材から使いたい箇所を素早く見つけられる「メディアインテリジェンス」もかなり魅力的な機能だ。メディアインテリジェンスを使用すると、読み込んだ素材にタグ付けのような処理が行われる。
メディア検索でキーワードを入力すると、該当するシーンが抽出される。例えば、「Buggy」と入力すると、バギーが写っているシーンだけが抽出される。使いたいシーンが決まったら、ソースモニターに表示する。この際、動画が長くてもバギーが写っている箇所だけにイン点とアウト点が自動で打たれる。イン点とアウト点は調整可能で、好みの箇所をタイムラインに持っていくことも可能だ。
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最後に、素材をより印象的にする機能を紹介する。スニークとしてオブジェクト選択機能を使用。Premiere Proにはオブジェクトマスクのアイコンがあり、これを使用して車体を選択。クリックするだけでオブジェクトが選択され、トラッキングもワンクリックで実行できる。トラッキングの精度は高く、高速だ。この機能を使用すると、人物の後ろにモーションテキストを入れるといった高度な表現も2クリックで実現できる。
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オブジェクト選択は Premiere Proで利用できると非常に実用的な機能となる。Premiere Proへの搭載を期待したい。メディアインテリジェンスは現在のベータ版で利用可能なので、ぜひ試していただきたい。
今回のAdobe MAX Japan 2025も盛り上がりを見せ、クリエイターの期待に応える内容で行われた。会場の拡充やコミュニティラウンジの設置など、クリエイター同士の交流を深める工夫も随所に見られたり、Fireflyビデオモデルは生成AIの新たな可能性を示し、今後のクリエイティブシーンを大きく変えることが期待される。クリエイターにとってますます最新の技術やトレンドに触れ、刺激を受けるための貴重な機会となったといえるだろう。
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