ソニーは、シネマカメラ用アクセサリーの新製品として、VENICEエクステンションシステムMini「CBK-3621XS」を発表した。発売は2025年夏頃を予定しており、市場想定価格は税込430万円前後。

同製品には4.5mのケーブルが同梱され、より長い12mのケーブル「CBK-12C3621」は別売アクセサリーとして提供される。こちらの市場想定価格は税込148万円前後。また、同梱されるNDフィルターのスペアとして、NDフィルターキット「CBK-ND1K」もラインナップされ、市場想定価格は税込56万円前後。

VENICEエクステンションシステムは、映画「トップガン」等の作品で多用された実績を持つケーブルシステムであり、その進化版として発表された同製品は、軽量かつコンパクトな設計を特徴とする。小型化のため、センサーはカメラヘッドに内蔵されており、専用のセンサーを搭載することで、VENICE2 8Kと同等の高画質を実現している。既存モデルの利点を継承しつつ、さらなる小型化を追求した製品である。

センサー部とボディを分離し、ボディ部にエクステンションMiniをつなぐ
約4.5mケーブルとドロップインND(0.3~2.4)が付属する

カメラヘッドの小型化と使い勝手の向上

同製品は、カメラヘッドの小型化と使い勝手の向上を主な特徴とする。従来のエクステンションシステムと比較して、新型カメラヘッドは、高さで約2/3、厚みと幅で約1/2に小型化され、体積比で約7割減、サイズは約3割減を達成している。また、重量も約6割減となり、これらの数値は小型化の成果を示している。

VENICEエクステンションシステムMini説明写真 VENICEエクステンションシステムMini説明写真
「VENICE エクステンションシステム 2」(左)と「VENICE エクステンションシステム Mini」(右)の比較。高さ約2/3、厚み約1/2、幅約1/2、重量約6割減を実現する

小型化に加え、使い勝手の向上が図られている点も同製品の特長である。従来モデルではカメラヘッドとケーブルが一体化しており、着脱が不可能であった。同モデルでは、新たにケーブルの着脱機構が採用された。データ転送量の多いケーブルの着脱は技術的に困難であったが、機構の開発に成功した。また、ケーブル自体も改良され、細径化と柔軟化が実現し、取り回しが容易になった。

コネクタ化を実現しており、ケーブル・ヘッドの脱着が可能
従来モデルよりもより細くしなやかなケーブルに。4.5mが同梱し、12mは別売

ケーブル長に関しては、従来モデルでは3.5mと12mの2種類が提供されていたが、同モデルでは4.5mのケーブルが同梱され、12mのケーブルは別売となる。

VENICE エクステンションシステム Mini用12mケーブル

小型化を活かした撮影と高画質の両立

小型化の利点を活かした撮影方法として、3D/VR撮影が挙げられる。2台のカメラを並べることで、人間の瞳孔間距離である64mmの間隔で撮影が可能となり、自然な3D映像を記録できる。センサーはVENICE 2と同等の高性能センサーを搭載しており、高画質での3D/VR撮影を実現する。

ただし、大型レンズを使用する場合は、瞳孔間距離64mmを確保できない場合があるため、レンズ選定には注意が必要である。カメラボディ自体は64mmの瞳孔間距離に対応する設計となっている。

また、小型カメラを多方向に配置して撮影を行うスティッチング撮影にも対応する。これにより、周囲の環境を高品位に記録することが可能となる。ボディサイズが大きいと合成処理が困難になる場合があるが、本製品の小型化はスティッチング撮影において有利となる。VFXプレートリグと組み合わせることで、360°VFXプレート撮影にも活用できる。

小型カメラヘッドに8Kセンサー内蔵、NDフィルターは手動でのドロップイン方式を採用

VENICEエクステンションシステムMiniは、VENICE 2 8K相当のセンサーを搭載している。従来のエクステンションシステムでは、VENICE本体のボディとセンサーを分離し、間にケーブルを接続する必要があったが、新型エクステンションシステムMiniでは、カメラヘッドにセンサーが内蔵された。本体にエクステンションシステムを接続することで、カメラヘッドのセンサーが利用可能となる。

NDフィルターは内蔵式ではなく、手動でのドロップイン方式を採用している。NDフィルターは製品に付属しており、0.3から2.4までの範囲で使用可能である。小型化を優先した結果、NDフィルターの仕様が変更された点が、従来モデルからの大きな変更点と言える。

NDフィルターはドロップインND方式。製品付属(0.3~2.4)
ドロップインNDフィルター方式を採用

新型エクステンションシステムMiniに搭載されているセンサーは、VENICE 2の8Kセンサーと同等の性能を持つ。VENICE 2では6Kと8Kの2種類のセンサーが選択可能だが、エクステンションシステムMiniでは8Kセンサーのみの提供となる。ただし、新型エクステンションシステムMiniは8Kセンサーのみだが、6Kセンサー搭載のVENICE 2本体でも利用可能である。

VENICE 2同等の8.6KフルサイズCMOSセンサー内蔵

従来モデルからの機能継承

従来モデルで好評であった機能も継承されている。カメラヘッドには水準器が搭載されており、チルトやロールの角度を正確に把握できる。VFX合成において角度情報は重要であり、撮影現場での活用が想定されている。水準器の情報はメタデータに記録され、ポストプロダクションでの利用も可能である。

アサイナブルボタンも引き続き搭載されている。従来モデルでは4個であったが、同モデルでは2個に減少した。しかし、NDフィルターが手動式になったため、ボタン数の減少による影響は少ないと考えられる。2個のアサイナブルボタンには、RECスタート/ストップやフォルスカラーなどの機能を割り当てることができる。

2つのアサイナブルボタン搭載。本体前面右下に
1つ搭載
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本体背面右下に1つ搭載
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レンズマウントは、PLマウントとEマウントの2種類が用意されており、VENICE本体と同様である。Eマウントレンズを使用することで小型化を活かした撮影が可能となり、PLマウントレンズを使用することで既存のレンズ資産を活用した高品位な映像制作が可能となる。

Eマウントモデル
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PLマウントモデル
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エクステンションシステムMiniの変更点とVENICE 2との互換性

前モデルからの主な変更点として、8Kセンサー内蔵、4.5mケーブル同梱(12mケーブルは別売)、2つのアサイナブルボタン搭載が挙げられる。

注意点として、新型エクステンションシステムMiniは初代VENICEとの互換性がない。これは、新型エクステンションシステムMiniが8Kセンサーを搭載している一方で、初代VENICE本体は8Kセンサーに対応していないためだ。対応機種はVENICE 2のみであり、VENICE 2であれば6Kモデル、8Kモデルの両方で使用可能である。

VENICEエクステンションシステム比較

製品名 VENICEエクステンションシステム2(CBK-3620XS) VENICEエクステンションシステムMini(CBK-3621XS)
センサー カメラ本体のセンサーを流用(6K or 8K) センサー付帯 8.6K×5.8K
VENICE 2 8Kセンサー相当
ケーブル長 約3mケーブル×1(付属)
約12mケーブル×1(付属)
約4.5mケーブル×1(付属)
約12mケーブル×1(別売)
チルト・ロールセンサー 利用可 利用可
アサイナブルボタン 4ボタン 2ボタン
サイズ(HxWxD) 約158mm×147mm×126mm 約103mm×64mm×60mm
対応機種 VENICE 2 8K / VENICE 2 6K / VENICE VENICE 2 8K / VENICE 2 6K
別売アクセサリー n/a NDフィルターキット CBK-ND1K
12mケーブル CBK-12C3621