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一般社団法人日本ポストプロダクション協会(JPPA)調査・事業委員会は、2024年度「ポストプロダクション設備調査」(2024年11月の設備状況)の結果をまとめた。同調査は、JPPA会員各社のポストプロダクション設備状況の動向と市場の変化を把握するため、2004年度から隔年で実施し、2019年度以降は毎年実施している。

今回の2024年度調査は、正会員社84社(2023年度調査時は89社)に対し、2024年11月現在の設備状況に関するアンケート調査を行ったもので、79社(同82社)から調査結果を得た。

調査結果によると、ノンリニア編集室は74社が684室(2023年度は78社が687室)/リニア編集室は18社が50室(同25社が89室)を保有し、合計(編集室総数)は734室(同776室)が稼働している。また、MAルームは72社が307室(同76社が314室)、グレーディング専用ルームは15社が45室(同16社が44室)を稼働している。なお、調査の回答社内訳は、会員社の新規入会・退会による増減や回答/非回答社の動向により変動がある。

編集室の総数は2020年度に初めて対前年比減となり、2023年度には3年ぶりにプラスに転じたものの、再び前年割れとなった。リニア編集室は2006年度調査の249室をピークに減少傾向が続き、2023年度には初の2桁台となる89室、2024年度は50室まで減少した。

なお、リニア編集室にはサブシステムとしてノンリニア編集システムを導入している部屋が大半を占めており、リニアシステムのみで運用している部屋はほとんどないのが現状となっている。ノンリニア編集室(オンライン)の増加については、リニア編集システムを撤収して、ノンリニア編集室に改修しているケースが大半を占めている。

また、全ノンリニア編集室のうち4K以上に対応する編集室は、54社が196室を稼働しており、高画質化が継続している結果となった。

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※オフライン/オンライン編集室の区分は、設置するシステムによる区分ではなく、ポストプロダクション事業者が申告した運用区分によるもの。
※2019年~2024年調査の回答社内訳は、会員社の新規入会・退会などの増減や回答/非回答社の動向により同一ではない。

ノンリニア編集室数増はリニアからの変更/4K以上運用編集室は196室

ノンリニア編集室(回答社:74社)の総数は684室で、その内訳は、オンライン編集室が376室(2023年度363室)、オンライン/オフライン編集室が239室(同242室)、オフライン編集室が69室(同82室)だった。

なお、オンライン/オフライン編集室の区分は、設置するシステムによる区分ではなく、ポストプロダクション各社が申告した運用区分によるものだが、編集形態はオフライン~オンラインまでシームレス化している傾向があることから、オフライン編集室全体は減少傾向にあると考えられる。また、オフラインに区分されている編集室は、NHK周辺やアニメーション特化の拠点が多く、番組全体やCMのオフライン編集室は減少している傾向が見受けられる。

ノンリニア編集室の総数は、近年では2015年度:496室/76社、2017年度:536室/80社、2019年度:630室/83社、2020年度:610室/80社、2021年度:623室/77社、2022年度:645室/81社、2023年度:687室/78社、2024年度:684室/74社と推移している。

今回、会員社減も含めて回答社数が減っている一方、総数に大きな変動がないのはリニア編集室からの変更によるものが多くを占めているのが主な要因だ。

また、調査開始初期の2006年度調査では、ノンリニア編集室は351室/72社が稼働し、専用システムによるハイエンドクラスのノンリニア編集室が約88%を占めていた。一方、2013年頃からミドルレンジクラスのノンリニア編集室が大きく増加して、ノンリニア編集室(オンライン)総数は過去最大になっている。

また、編集室の区分として「4K(以上)対応編集室」として回答しているのは196室/54社(2023年度は207室/59社)となっている。なお、4K対応とは、編集ソフトによる対応ではなく、4K対応のマスターモニター設置といった4K視聴環境が整った編集室をカウントしている。

リニア編集室の減少傾向が続く

回答のあった79社のうち、リニア編集室を保有するのは18社で、その総数は50室と調査開始以来最小となった。リニア編集室総数のピークは2006年度調査の249室で、今回は約80%減となり、この傾向は継続するものと考えられる。

なお、リニア/ノンリニアの「ハイブリッド編集室」は全てリニア編集室としてカウントしている。調査回答では大半がサブシステムとしてノンリニア編集システムを設置またはKVM運用しており、リニア編集単独での編集室は大きく減少していることがうかがえる。

MAルームは約38%がサラウンド対応に

2024年度のMAルーム(回答社:72社)の総数は307室で、引き続き堅調に推移している。307室のうち118室(2023年度は119室)がサラウンド対応で、さらに、Dolby Atmosに対応するのは21室(同17室)となっている。なお、MAルーム総数は前年と比較して減少しているが、会員社の入退会によるものだ。

グレーディング専用ルームはほぼ横ばい、編集室のマルチ化が拡大

2024年度のグレーディング専用ルームは45室(回答社:15社)で、2023年度の44室/16社と比較してほぼ横ばいとなっている。なお、グレーディングの専用室のみを区分しており、編集/グレーディングのハイブリッド型は全てノンリニア編集室としてカウントしている。

ノンリニア編集室684室のうち、グレーディングシステムを併設している部屋数は95室で、カラーグレーディングとフィニッシングをシームレスに行う編集スタイルの増加など、ワークフローの変化が背景にあり、編集室のマルチ化が進んでいると考えられるという。

JPPA会員社のポストプロダクション事業者は、テレビ番組、CM、VP、映画作品からOTTプラットフォームを含むインターネット配信向けまで、あらゆる分野のコンテンツ制作について、高精細でクオリティの高いポストプロダクション業務を提供することが可能だ。今後もさらに、制作環境の変化に対して柔軟かつ最適なポストプロダクションワークフローの構築に努めていくとしている。