
Blackmagic DesignはBlackmagic Cloudの新たなストリーミングサービスと なる「Stream Router」と「ATEM Cloud」をNAB 2025で初公開した。
Stream Routerはクラウドビデオルーター、ATEM Cloudはクラウドスイッチャーとして機能する。Blackmagic Cloudはこれまでポストプロダクション向けのツールとして、クラウド経由での共同編集や動画ファイルの共有を主な機能として提供してきた。今回発表されたStream RouterとATEM Cloudの追加により、Blackmagic Cloudの活用範囲はライブプロダクションの分野へ拡大することが示唆される。
Blackmagic PYXIS 6K、Blackmagic URSA Broadcast G2、iPhone/AndroidのBlackmagic Cameraアプリなどのカメラは、Blackmagic Cloudへ直接データアップロードが可能である。新たなストリーミングサービスでは、これらのカメラからSRT(Secure Reliable Transport)プロトコルを用いてクラウドへストリーム伝送することで、Stream Routerを介してクラウド上での入出力割り当てやスイッチング操作が実現する。また、SRTストリームに対応していないカメラやその他の映像機器については、新製品Blackmagic Streaming Encoderを使用することで、SRTによるクラウドへの映像送信が可能となる。
現在販売されているビデオルーターBlackmagic VideohubやビデオスイッチャーATEMの機能がクラウド上に実装されることで、ハードウェアが存在しない環境においても、受信した映像の出力先指定や、従来のスイッチング、カメラコントロールなどの機能が利用可能となる。

具体的なシステム運用としては、Blackmagic Cloudのポータルサイト上にあるStream Routerを使用し、各種カメラなどからエンコードされた映像を受信し、任意の出力先を指定する。出力先としては、クラウド上のスイッチャーであるATEM Cloudをはじめ、コンピュータやスマートフォンで使用可能なアプリケーションDaVinci Remote Monitor、新製品Blackmagic Streaming Desoderなどが選択できる。クラウドスイッチャーからYouTubeへの直接配信も可能であり、単方向のストリーム伝送に留まらず、カメラ側へのタリー信号やカメラコントロール信号の返送も可能である。
ATEM Cloudはクラウドスイッチャーとして、従来のハードウェア版と同様にATEM Software Controlを使用した操作が可能である。機能面においてもATEMスイッチャーと同様に、トランジションを伴う映像切り替え、PinP(ピクチャーインピクチャー)合成、クロマキー合成などが利用できる。さらに、ATEM Micro PanelやATEM Camera ControlといったATEMスイッチャー用のハードウェアコントロールパネルにも対応する。ATEM Cloudの入出力はStream Router内に構成され、マルチビュー出力やプログラム出力はStream Routerの入力ソースとして再利用できる。このシステムにより、例えばホテルの室内からラップトップを用いて、大規模なライブプロダクションのスイッチングやモニタリングを行うといった運用も想定される。

サービスの正式なリリース時期や利用料金は現時点では未定であるが、今後のクラウドベースの映像制作ワークフローの可能性を大きく広げるものと期待される。
