
Blackmagic Designは、2025年5月15日と16日に、渋谷のライブ&イベントスペース「LUSH HUB」において、先月のNABで発表された新製品を紹介するプライベートショー「Blackmagic Day」を開催した。
Blackmagic Designは2022年以降、主に4月のNAB開催後に、東京都渋谷区の「LUSH HUB」にて新製品の実機展示を中心としたプライベート展示会を定期的に開催している。今回もNAB 2025で発表された「PYXIS 12K」「Extreme ISO G2」「Micro Camera Panel」などが国内で初めて展示され、発売が待たれるこれらの新製品を直接確認できる機会とあって、多くの来場者を集めた。イベント初日の19時には、DaVinci Resolveのプロダクトマネージャー、ピーター・チェンバレン氏が来日し、ユーザーとの交流会が催された。以下に、本イベントにおける注目点をレポートする。

Blackmagic URSA Cine 12Kの詳細と周辺機器
カメラコーナーでは、「Blackmagic PYXIS 6K」「Blackmagic PYXIS 12K」「Blackmagic URSA Cine 12K」の3機種が展示された。「Blackmagic URSA Cine 17K」および「Blackmagic URSA Cine Immersive」の展示はなかったが、Blackmagic URSA Cine 17Kについては、後日改めて発表の機会が設けられる予定である。

まずはBlackmagic URSA Cine 12Kについて紹介する。URSA Cine 12Kは、RGBW 36x24mmセンサーを搭載しており、大きなフォトサイトにより16ストップのダイナミックレンジの実現を最大の特徴としている。基本的なレンズマウントはPLマウント仕様である(オプションとしてEFマウントが同梱されており、EFレンズマウントにも対応可能)。カメラの右側はアシスタント用のステーションで、2つ目の5インチHDRタッチスクリーンも備わっており、主に大規模な映像作品やコマーシャル撮影での使用を想定したプロフェッショナル向けのシネマカメラである。
競合製品としては、ソニーのVENICEやBURANO、ARRIのALEXAなどが挙げられる。参考として、VENICE 2 8K(本体のみ)の税込価格は約6,800,000円、VENICE 2 6K(本体のみ)の税込価格は約6,200,000円である。これに対し、URSA Cine 12K LF Bodyの税込価格は1,168,000円、URSA Cine 12K LFの税込価格は2,498,000円と、際立ったコストパフォーマンスが特徴である。

今回の展示では、これまで公開される機会が少なかったBlackmagic Media Module 8TBやBlackmagic Media Dockのデモンストレーションを見ることができたので紹介する。
Blackmagic Media Module 8TBは、URSA Cineシリーズ専用の記録メディアモジュールである。URSA Cine 12KにはUSB端子が搭載されており、将来的にSSDでの収録も計画されているが、12Kという高解像度に対応するため、専用メディアによる記録方式が採用されている。

また、オプションの「Blackmagic Media Module CF」はデュアルCFexpressスロットに対応しており、既存のCFexpressメディアを使用することも可能である。Blackmagic Media Module CFを購入し、手持ちのCFexpressカードを挿入して収録するという運用が想定される。

Blackmagic Media Moduleで記録されたデータは、Blackmagic Media Dockという専用のリーダーを用いて読み込むことができる。Blackmagic Media ModuleをBlackmagic Media Dockに接続することで、10Gイーサネットポートを介してコンピューターとの接続が可能となる。
従来のリーダーの接続方式として一般的であったThunderboltやUSBとは異なる。10Gイーサネットによる接続は、SMB(Server Message Block)のファイル共有に対応しており、Mac環境においては、ネットワーク経由でアクセスし、収録素材を取り出すことが可能となる。

URSA Cine 12Kの特筆すべき点として、バッテリーマウントがVマウントではなくBマウントである点が挙げられる。Bマウントを採用することにより、24Vのバッテリーの使用が可能となる。

「Blackmagic URSA Cine Battery Plate Gold」や「Blackmagic URSA Cine Battery Plate VLock」といったオプションも提供されているが、これらのプレートを介して12Vのバッテリーを使用した場合、最大フレームレートが60fpsに制限されるなどの制約が生じる。24Vのバッテリーを使用することで、URSA Cine 12Kの性能を最大限に引き出すことが可能と言える。
URSA Cine 12Kと同じセンサーを搭載した「PYXIS 12K」登場
PYXIS 12Kは、先に紹介したBlackmagic URSA Cine 12Kと同様のセンサーを搭載した新しいモデルだ。センサーの性能はURSA Cine 12Kと同一であり、解像度を12K、8K、4Kに変更してもクロップによる画角の変化は発生しない。これには改めて驚きである。

主な特徴として、ダイナミックレンジの向上が挙げられる。PYXIS 6Kのダイナミックレンジが13ストップであったのに対し、PYXIS 12Kは16ストップのダイナミックレンジに対応する。

URSA Cine 12Kは比較的高価格帯の製品であるのに対し、PYXIS 12Kは税込832,800円と、より現実的な価格設定となっている。PYXIS 12Kの発売により、12Kや16ストップのダイナミックレンジといった、これまで体験できなかったクラスの性能が100万円以内の価格帯で利用可能になることから、映像制作業界内で高い関心を集めることが予想される。
Pro HandleとPro Gripによる拡張性と操作性
PYXIS 6Kは、NABで発表された新しいアクセサリーである「Blackmagic PYXIS Pro Handle」と「Blackmagic PYXIS Pro Grip」と組み合わせて展示されていた。

PYXIS Pro Gripには、ファインダー、マイク、収録ボタンが搭載されている。また、対応する一部のズームレンズにおいては、ズームイン・アウトの操作が可能である。展示機はモックアップであり、ズーム機能は体験できなかった。対応するズームレンズは、キヤノンの特定機種や、ENGレンズの一部の電動サーボ付きモデルとなる。
Blackmagic PYXIS Pro Handleの価格は税込156,800円、Blackmagic PYXIS Pro Gripの価格は税込19,980円。

Television Studio HD8相当の機能をコンパクトに
次に、ライブプロダクションコーナーについて紹介する。
このコーナーで注目を集めていたのは「ATEM Mini Extreme ISO G2」だ。価格は税込332,800円。本製品も、多くのユーザーから高い関心を集めている。

製品の概要として、高機能スイッチャーである「ATEM Television Studio HD8」とほぼ同等の機能を、よりコンパクトな筐体で実現している点が挙げられる。
その中でも気になったのは、音声調整用の専用画面が新たに搭載されたところだ。従来のTelevision Studioシリーズでも、物理的なつまみによる調整は可能であったが、本製品では専用の画面上で、より細密な音量および音声調整が可能となる。

さらに、背面の端子一覧の中に収録用のCFexpressスロットを搭載していることも注目される点である。従来のATEM Television StudioシリーズにおけるSSDの外部接続では、ケーブルの緩みや抜けといった懸念があった。Extreme ISO G2ではメディアスロットを搭載することで、ケーブル接続による不安定さが改善されている。
HyperDeck Shuttle 4K Proはプレビュー機能による確実なクリップ選択が可能
次に注目したのは、レコーダー兼プレーヤーである「HyperDeck Shuttle 4K Pro」である。価格はHyperDeck Shuttle 4K Proが税込248,800円。HyperDeck Shuttle 4K Pro 2TBが税込310,800円。
同製品の特性として、スローモーション再生やリプレイ機能が挙げられる。記録されたメディア内のクリップを視覚的に確認し、選択して再生することが可能なため、簡易的なポン出し機としての利用も考えられる。
従来、ATEMスイッチャーとの連携によって同様の機能を実現することも可能であったが、HyperDeckではサムネイル表示ができなかったため、そのような用途には適さない面があった。しかし、本製品ではクリップの内容を確認しながら選択・再生できるため、より確実な操作が可能となる。

リプレイ機能については、バスケットボールなどのライブ配信中に頻繁にリプレイ映像が挿入されるような用途ではなく、eスポーツの試合間や休憩時間などに、直前の試合のハイライト映像を流すといった用途に適していると考えられる。具体的には、プログラムアウトを録画しておき、得点シーンなどの見どころだけを再生するといった方法で便利に使えるかもしれない。
ATEM Micro Camera Panelは低価格かつ一台で複数カメラ制御が可能
小型化されたATEM Micro Camera Panelも、注目度の高い製品である。Blackmagic Designのカメラコントロールシステムは、従来、「ATEM Camera Control Panel」やソフトウェアの「ATEM Software Control」を通じて、カメラの色味などを調整することが可能である。

しかしながら、ATEM Camera Control Panelは、主にATEM Constellationのような大規模スイッチャーとの連携を想定した設計のためか、税込価格が498,800円と高価であった。ATEMスイッチャーのソフトウェアコントロールによるズームや色味の調整機能は高く評価されており、ATEM Camera Control Panelも高評価を得ているものの、約50万円という価格が導入の障壁となっていた。
ATEM Micro Camera Panelは、税込価格98,980円であり、上記のような課題を解決する可能性を持つ。一台で複数のカメラを切り替えて制御できるため、利便性が高いと言える。
IP関連やストリーミング関連製品の登場にも期待

今回のBlackmagic Dayにおいては、2110 IP関連製品、ストリーミングエンコーダーおよびストリーミングデコーダーの実機展示は行われなかった。しかし、これらの製品群も業界から高い注目を集めている。PRONEWSでは今後、実機を見られる機会が得られれば、その詳細について紹介する予定である。

