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©CAPCOM

ヒビノ株式会社は、日本環境アメニティ株式会社等のグループ企業と連携し、大阪・関西万博の大阪ヘルスケアパビリオンにて株式会社カプコンが体験型コンテンツ「モンスターハンターブリッジ」を出展するミライのエンターテインメント体験施設「XD HALL」の音響・映像・床振動システムの設計・施工を担当した。

「夢と現実が、ひとつになる。」というモンスターハンターブリッジのコンセプトを音と映像の持つ力で叶えるため、床面直径約12m×天井高約5mの円筒形ホールに、スピーカーが見えないイマーシブサウンドシステム、新開発の音響透過型高精細LEDディスプレイ・システムおよび4Kプロジェクターによる360°シアター、床振動を組み合わせた超没入型ソリューションを提案し、納入に至った。

体験者の全周囲を包み込む高精細映像とその動きに精密に追随する音響、床振動、専用ARデバイスの映像・音声情報を融合させた、世界に類を見ないイマーシブシアターによる臨場感あふれる超没入体験を実現しているという。2025年4月13日の開幕より運用が開始されている。

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かつてない臨場感が楽しめる未来のエンターテインメント体験施設「XD HALL」

XD HALLは、円筒型シアターの壁・天井・床の全方向に映し出される高精細映像、壁面と天井の裏にくまなく配置した89.1チャンネルのスピーカーによるイマーシブサウンド、床振動、体験者が装着する専用ARデバイスの映像・音声が融合する超没入型のこれまでにない体験施設だ。映像の中から本当に音が出ているかのような究極の臨場感を提供する。

モンスターハンターブリッジのコンセプト「夢と現実が、ひとつになる。」と大阪ヘルスケアパビリオンのテーマ「REBORN」に込められた意味「新たな一歩を踏み出す」を踏まえ、まだ誰も経験したことのない新たなエンターテインメント体験を提供する施設としてヒビノグループが音響・映像・床振動システムの設計・施工、内装工事を行った。

前後左右、頭上、足下まで全周囲に展開される「モンスターハンター」シリーズの世界を全身で感じ、アイルーとのふれあいや迫り来るモンスターの驚異など、ここでしか体験できない特別な「モンスターハンター」を味わうことができる。

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モンスターハンターブリッジ ©CAPCOM
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XD HALL内部イメージ 提供:(公社)大阪パビリオン
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XD HALL外観

新開発の音響透過型LEDディスプレイ・システムとプロジェクターによる前後・天地・左右の全周囲シアター

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円筒型シアター内の側面と天面には、新開発の音響透過型高精細2.5mmピッチLEDディスプレイ・システムChromaVision025を納入した。画面サイズは、高さ4.8メートル、内周37.76メートルの完全リングと直径12.7メートルの天面だ。画面の後ろに設置したスピーカーの音を透過できる、シアタースクリーンに最適な高精細・高画質LEDディスプレイ・システムとなっている。

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従来、LED素子が密に配置されている高精細モデルでは、パネルに透過穴を設けることが難しく、現状の市販品は、横のみを高精細2.5mmピッチ、縦を5mmピッチにするなどしてパネルに透過穴の施工領域を確保しており、完全な高精細とは言えなかった。

同社は基盤を新設計し、縦横同一2.5mmピッチによる完全な高精細表示の音響透過型高精細LEDディスプレイ・システムを業界に先駆けて開発した。

多くのスタジオの音響設計・施工を行うグループ会社の日本音響エンジニアリング株式会社で音響計測・評価を実施し、高い音響透過性能と十分な音質を確認しているという。さらに、視野角の広い設計により、体験者は美しい作品世界を視界いっぱいに捉え、深い没入感を味わうことができる。

また、画素ピッチが精細になるにつれ、高度な施工技術が求められる完全リング設置及び水平設置についても、卓越した施工技術により均一で視覚的に美しい巨大ディスプレイを形成した。

さらに、完全リングLEDディスプレイの2ヵ所に、体験者が出入りする片開き扉の機構を設けた。厚さ40cmの扉の開閉に必要となる扉と壁の隙間を極限まで狭めた設計により、扉を閉めた際にLEDディスプレイのつなぎ目がほとんど目立たず、体験者に扉の存在を感じさせない。一貫した美しい映像でシアター内を覆うことを可能とした。

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LEDディスプレイ扉
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開扉時
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閉扉時

床面に対しては、シアター天面に4Kレーザープロジェクター6台を設置し、投影先である床スクリーンの設計・施工も行った。異なる映像表示装置を用いる「床面」と「壁面・天面」の表示を精密に調整・整合するとともに、プロジェクターの投影に適した床材の検証により、間近に高輝度LED発光があるなかでも黒の再現性とコントラストの高い鮮やかな映像表示を実現した。

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天面プロジェクター投影口6つ
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床スクリーン

また、体験者の手の動きにコンテンツが連動するインタラクティブ要素があるため、映像の遅延は臨場感に影響する。超低遅延伝送を実現するべくSDVoE規格※を採用し、4K 60fps×12系統の映像信号を限りなく低遅延でLEDディスプレイ及びプロジェクターへ伝送している。

※SDVoE規格とはイーサネットを使用したAV over IP伝送規格

映像と一体化するイマーシブサウンドがコンテンツに命を吹き込む

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スピーカー配置イメージ

イマーシブサウンドシステムは、LEDディスプレイの後ろから体験エリアを包み込むように配置した側面70台、頭上19台のイマーシブスピーカーとサブウーファー4台で構成する89.1チャンネルの立体音響だ。

体験者にスピーカーを一切見せることなく、大人から子どもまで体験エリアのどこにいても、均一な音量、音質、音像定位(音の位置や距離)を提供できるよう設計した。

また、LEDディスプレイ越しに体験エリアへ理想の音を届けるため、透過時に損失しやすい高音域の再現性能に優れたCODA AUDIOフルレンジ・スピーカー「D12」を採用。同軸スピーカーの利点を活かした明瞭かつ安定した音像定位の描写により、音の輪郭を感じられるような立体的な音響を実現。映像の中から本当に音が出ているかのような究極の臨場感を提供する。

また、静寂なシーンの表現にもこだわり、騒音源となり得るプロジェクターのファン、床吹き出し空調に消音装置を設計・施工した。これにより、映画館の基準に限りなく近い静音性を実現したことで、大迫力から静寂のシーンまで、コンテンツに没入し続けられる音響空間となっている。

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赤枠:オンイヤーサウンドデバイス(画像:カプコン提供)

さらに、体験者が装着する専用ARデバイスのオンイヤーサウンドデバイス(イヤホン)は、株式会社トクミとの共同開発製品だ。

演出上、イマーシブサウンドとARデバイスの音声を同時に楽しめることが重要であるため、高音質で豊かな低音再生を可能とする音響性能と外部の音を取り込める構造に設計している。イヤホンが耳の穴をふさがないよう位置を調整できる可動式の仕様で、一人ひとりの耳の位置に合わせた調節できるため、すべての人に優れた音響体験を提供する。

コンテンツの迫力と没入をさらに高める床振動システム

体験エリアの床は、演出に合わせて振動する床振動システムを設計・施工した。振動源によって効率的に振動し、意図する揺れ表現を実現できる床でありながら、振動機能の不使用時の防振にもこだわり、振動体験と安定した歩行を両立している。

床振動によりコンテンツのリアルな触感・衝撃を演出し、全身で味わう臨場感と没入感を提供する。

シアターの安定稼働を支えるリモート管理システム及び保守体制

同社は、音響・映像・床振動システムを安定運用するため、信頼性あるシステム設計に加え、その稼働状況を常時遠隔にて監視・制御できるリモート管理システムを構築し、保守サービスと合わせて提供している。

シアターにはスピーカーの音声トラブルを検知するマイクロホンや映像表示を監視するカメラを配備、マシンルームの設備も複数のカメラで異常の有無を監視する。

また、マシンルームからシアターへ音と映像の信号を送る送出システム一式は、いかなる場合にも本来の機能を維持できるようメインと予備の二重にシステムを構築しており、異常が見られた際は遠隔制御で瞬時に切り替えるなどの復旧支援が可能だ。

同社グループの豊富な実績に裏打ちされた信頼性の高いシステムと保守体制により、シアターの安定稼働を支える。

ヒビノグループ「音と映像で、世界に感動をクリエイトする」

ヒビノグループは、大阪・関西万博において大阪ヘルスケアパビリオン「XD HALL」をはじめとする50カ所以上のパビリオン・施設・イベントに音響・映像・照明等の幅広いソリューションを提供している。

グループの総合力で大阪・関西万博の成功に貢献するとともに、音と映像におけるエンターテインメント分野のリーディングカンパニーとして、これからも挑戦と技術革新を続け、まだ誰も体験したことのない新たな感動の創出に取り組んでいくとしている。

納入概要

  • 顧客:株式会社カプコン
  • 納入施設:大阪・関西万博「大阪ヘルスケアパビリオン」XD HALL
  • 展示(上映内容):「モンスターハンターブリッジ」
  • 運用開始日:2025年4月13日(日)

業務範囲

ヒビノ株式会社 機材納入・システム設計
[LEDディスプレイ・システム]
・製品名:ChromaVision025
・画面サイズ:[側面]高さ4.8m×幅(内周)37.76m(約181㎡)、[天面]直径12.7m(約140㎡)
・解像度:[側面]縦1,920ピクセル×横15,104ピクセル、[天面]5,120ピクセル×5,184ピクセル
・画像ピッチ:2.5mm
・視野角:水平160°、垂直±80°
・透過率:10%

[イマーシブサウンドシステム]
・CODA AUDIOフルレンジ・スピーカー「D12」(89台)
・サブウーファー「APS-SUB」(4台)
・パワーアンプ「LINUS 14」(23台)
・Sonifexオーディオインターフェイス「AVN-AO16R」(10台)
・その他:Panasonicレーザープロジェクター「PT-RQ35KJ」(6台)
HIBINO・TOKUMI共同開発ARデバイス用オンイヤーサウンドデバイス(200台)
BEHRINGERパワーアンプ「NX4-6000」(11台)等
日本環境アメニティ株式会社 内装工事・建築音響工事
・床振動システムの設計・施工/鉄骨下地(メインフレーム)の設計/鉄骨下地(LEDディスプレイ用サブフレーム)の設計・施工/LEDディスプレイ扉開閉機構の設計・施工/床スクリーンの設計・施工
・空調消音工事/プロジェクター消音装置の設計・施工
・音響・映像設備に関する工事管理、プロジェクター及びLEDディスプレイの施工
ヒビノスペーステック株式会社 ・イマーシブサウンドシステムの施工