Blackmagic Designによると、シドニーのカラリストであるファーグ・ロザラム氏がDaVinci Resolve Studioを使用して、サメを武器として使う連続殺人犯の恐ろしい姿を描いた作品「Dangerous Animals」のグレーディングを行ったという。ジャンルがミックスされた同作にふさわしい雰囲気を演出するために、同氏はIntelliTrackやMagic MaskなどのDaVinci Resolve Studioに搭載された多数のAI機能を使用した。
2025年にリリースされたサバイバルホラーである同作は、監督にショーン・バーン氏を迎え、出演者にはジェイ・コートニー、ハッシー・ハリソン、エラ・ニュートンなどの俳優陣が名を連ねている。同作は、サメに取り憑かれた連続殺人犯と、その犯人に誘拐されたサーファーに焦点を当て、サメの襲撃と連続殺人というホラー映画の2つの偉大なジャンルを融合させている。
どちらのジャンルも、エネルギーやダークなビジュアル面で共通点が多いものの、同作は複数のジャンルのミックスであるだけでなく、アクションやホラーシーンの多くがオーストラリアのゴールドコースト近くの太陽が降り注ぐ美しい海で繰り広げられるため、ルックも雰囲気も独自なものである必要があった。
ロザラム氏は同作の準備段階について次のようにコメントしている。
ロザラム氏:物語における心理的な緊張とトーンの変化を反映するようにグレーディングに取り組みました。一見穏やかに始まり、不安感が徐々に高まり、最終的に混沌へと陥る様子を表しました。ルックは物語の内容によって変わり、緊張、危険の度合い、変化する力関係を表現するようにしました。
ジェイ・コートニー演じるタッカーが被害者たちを閉じ込めている甲板の下のルックを確立することから始めました。ビジョンとしては、意図的に汚く、不潔で、抑圧的であり、即座に不安感を呼び起こすようなルックを求めていました。これを実現するために、撮影現場における照明下での自然な形と影を強調し、グレーディングでグリーンシアンのティントを加えました。その結果、陰鬱で彩度を落とした色彩パレットが生まれ、ざらざらとした、狭苦しく、閉じ込められたような雰囲気が強調されました。
夜間のシーンでは、甲板の下と月明かりに照らされた海を区別する必要があったため、同氏はDaVinci Resolve Studioでティールとオレンジのパレットを追加した。昼間のシーンは、視聴者に誤った安心感を与えるために、鮮明で明るいルックが用いられた。
グレーディングを通して、同氏はDaVinci Resolve StudioのMagic Maskを使用して、各オブジェクトの認識・トラッキングを行い、IntelliTrackで動きの分析・トラッキングを行った。どちらも同ソフトウェアに搭載されている広範なAI機能の一部だ。
ロザラム氏:微妙な露出の変化のために顔をトラッキングしたり、肌の色を分離したり、複雑な照明の変化を処理したりする上で、これらのAI駆動のツールにより、グレーディングにおける精度と速度が大幅に改善しました。本作の作業を通して、IntelliTrackの真価を理解しました。常にスムーズで効率的な結果が得られ、セッションの流れを中断することなく各要素をきれいに分離できました。
ポストプロダクションにおけるDaVinci Resolve Studioを用いた柔軟で効率的なワークフローについて、同氏は次のように説明する。
ロザラム氏:基本的に、HDRでグレーディングを始め、後でP3で完成させました。最初からDaVinci Resolve Studio内で完結させるワークフローを構築していたので、HDRとP3の間をシームレスに移行できました。結果として、グレードが異なるフォーマット間で一貫して維持され、ハイダイナミックレンジで視聴しても、劇場上映で視聴しても同じ創造的意図が維持されました。
このDaVinci Resolve Studioを中心としたワークフローにより、水中シーンのコントラストの強調や、日中のシーンにおける自然なハイライトの維持、甲板での夜間撮影における色分解の微調整などにおいて、技術的な制約に煩わされることなく、創造面におけるより細かなディテールに集中できました。フィードバックに迅速に対応し、スムーズな反復プロセスを実現し、グレード全体を通じて勢いを維持できました。また、グレーディングの最終段階においてDaVinci Resolve StudioをVFXショットの仕上げにも使用してエレメントを統合したことにより、シーンにVFXショットが上手くマッチしました。