フォトロンは2025年7月30日、31日の両日、東京・千代田区の本社イベントスペース「センターステージ」にて「Viz Experience 2025」を開催した。同イベントは、同社が25年間にわたりパートナーシップを築いてきたVizrtの最新機能と世界的事例を、日本市場向けに紹介する場となった。
Vizrt最新アップデート

セミナー前半では、Vizrt製品群の最新アップデートが紹介された。主な内容は以下の通りである。
- Viz Engine 5.4対応:Unreal Engine v5.4/v5.5のサポート予定、マルチデバイス出力の強化、HDRワークフローの強化
- Viz Pilot Edge v3:テンプレートベース運用の高速化と信頼性向上、NRCSとの高い連携性
- Viz Mosart アップデート:自動送出と機材制御の拡張、UIカスタマイズ機能の強化
- Viz Now:パブリッククラウドでのシステム構築を容易化
- Viz Flowics:HTML5ベースのクラウドネイティブグラフィックツール、SNS連携やセカンドスクリーン展開に対応
Vizrtのソフトウェアは、クラウドの動作を可能にしており、CGテロップ送出を含む多くのワークフローがクラウド上で完結可能となった。これにより、設備投資を抑えながら必要な時だけ環境を立ち上げる柔軟な制作スタイルが実現する。
NBC大統領選番組事例

後半では、元Vizrtデザイナーで、台湾のDot Connector Inc.(放送グラフィックスやAR演出を手掛ける制作会社)のケネス・ツァイ氏が、2024年米大統領選におけるNBCの特番制作事例を解説した。
NBCの選挙番組は、100台以上のカメラ、13のコントロールルーム、全米100チャンネル規模という大規模プロジェクト。スタジオはキャスター席を中心としたニュースエリアと、バーチャルカメラを活用した演出エリアに分かれて構成された。
番組用に制作された都市背景CGは、候補者写真差し替え、得票率表示、優勢・劣勢を示す配色切り替えなどの要素を備え、NBC独自の集計ツール「Sync」と連携。JSON経由でViz Engineにデータを反映させ、リアルタイムで更新可能な仕組みとした。制作は半年前から始まり、フェーズ1で約8割のグラフィックを完成、残り期間で精度向上と微調整を行った。全行程はリモートで進められ、ニューヨークと台湾をオンラインで接続してリハーサルを実施した。
また、デザイン面では番組ブランドの一貫性を重視。色やレイアウトを統一し、複数のスタジオ間でも同じビジュアルアイデンティティを保つ構成とした。
ケネス・ツァイ氏のコメント

事例紹介に続き、最新のViz Engine機能を使ったデモが行われた。AIキーヤーによる自然な合成や、反射・影表現の強化を披露し、雨の渋谷スクランブル交差点を再現したバーチャルセットでは、濡れた路面の質感やライティングの変化に応じた影の追従を実演。リアルタイムCGの進化を印象づけた。
ケネス・ツァイ氏:
今回ご紹介した高度なデータ連携やリモート制作のワークフローは、日本の制作現場においても応用できると考えています。NBCの大統領選番組でも見られたように、膨大なデータをリアルタイムで反映しながら番組全体のブランドを統一していくことは、放送の信頼性を高める上で非常に重要です。
そのためにはテンプレート化と自動化を組み合わせることが欠かせません。短期間でも高品質な演出を実現することが可能になり、制作チームがよりクリエイティブな部分に集中できるようになります。