オランダ・アムステルダムの撮影監督たちによって設立されたELYSASは、新たなシネマレンズ「MUSE PRIME」シリーズをIBCにて発表した。NABで先行公開されたこのレンズは、現在フル生産体制に入り購入可能である。
同レンズは比較的コンパクトかつ軽量でありながら、フルフレームを超えるイメージサークルを持つ。富士フイルムGFXセンサーの16×9モードも完全にカバーする。ヴィンテージの柔らかさと現代的なシャープさを両立した画質が特徴である。ボケは滑らかに溶け込み、ほのかに渦巻くような描写で被写体を自然に際立たせる。
現在のラインナップは、25mm T1.8、32mm T1.8、40mm T1.8、50mm T1.8、75mm T1.8、100mm T1.8、135mmマクロ T2.8の7本で構成される。

ELYSASは、デジタル時代の撮影監督がMTF曲線よりも感情表現を重視するという考えに応える。「溶け込むボケ」と称する描写は、フレーム内の5つの領域(前景・焦点面・背景・中心部・周辺部)を個別に制御し、収差を調整することで、視聴者を引き込む映像表現を意図したものである。




レンズ開発において軽量化は重要な要件であったという。同時に、堅牢で信頼性の高いメカニズムと、業界標準である95mmのフロント径を持つレンズを目指した。社内の開発チームは、機械設計、光学設計、材料科学の観点から重量を削減した。その結果、良好な操作感を維持しつつ、各焦点距離で900g未満という軽量化を実現している。これによりMUSE PRIMESは、95mmフロント径のT1.8 PLマウント大判シネマレンズとして市場で最軽量クラスとなり、ジンバルやステディカム、ショルダーマウント、ドローンでの使用に適しているという。

全ての焦点距離で、ラージフォーマット(LF)センサーおよび富士フイルムGFXセンサーの16:9モードをカバーする。広角側の一部レンズではわずかな周辺光量落ちが見られるものの、GFXのオープンゲート撮影にも対応可能であり、これは多くの撮影監督にとって許容範囲であるとELYSASは説明している。
大判フォーマットの持つイメージと「溶け込むようなボケ」の組み合わせは、従来の同フォーマットのカメラでは表現が難しかった、層を成す立体的な映像表現を可能にする。

ELYSASは重量と性能だけでなく、カスタマイズ性も重視している。MUSE PRIMESは、工場での個別カスタマイズに対応し、所有者独自のレンズに仕上げることが可能である。追加費用で、レンズボディをカスタムカラーで塗装し、独自の外観にすることができる。
また、「Melted Bokeh」ロゴを入れない選択も可能である。さらに、シャープネス、ボケの形状、コントラスト、フレア特性の調整も注文できる。撮影監督の要望に応じてレンズコーティングを変更することも可能である。これらのカスタマイズは追加料金のサービスであり、価格は要相談となる。

MUSE PRIMESの希望小売価格は1本あたり2,399米ドルであるが、期間限定の特別価格として1,999米ドルで提供される。
