アドビのCTO(最高技術責任者)であるイーライ・グリーンフィールド氏は、クリエイティブプロセスを革新する「エージェント型AI」への取り組みを明らかにした。これは、ユーザーが達成したいタスクを言葉で説明するだけで生成AIがそれを具現化する「対話型インターフェイス」の発展形であり、「近いうちに創造性を何倍にも増幅する強力な手段となる」としている。
ユーザーの制作スタイルに適応する対話型インターフェイス
アドビが開発を進めるエージェント型AIは、単に画像生成や編集支援を単発で処理するだけではない。創造プロセス全体をつなぎ、ユーザーの目標を理解し、タスク間で文脈を引き継ぎながら、アイデアから最終成果物までの作り込みを迅速に支援する。グリーンフィールド氏は、これを「まるで有能なチームメイトのように、創作活動の集中を妨げるような作業を引き受けることで、ユーザーは創造的なコントロールを保ちながら、より多くの成果を上げることが可能になる」と説明する。
このAIアシスタントは、アドビが数十年にわたり深く理解してきた人々の創造プロセスに基づき、ユーザー自身の言葉で指示できる手軽さと、直接的な操作による精密なコントロールを融合。自然な会話と制作作業を自由に行き来できるハイブリッドな体験を提供するという。
対話型エージェントの実現
アドビは今年の初め、この未来に向けた第一歩をプレビューしAcrobat StudioとPDF Spacesにおける AIアシスタントの機能を拡張した。これにより複雑な文書の要約作成、インサイトの発見、検証可能な引用元の表示などができるようになった。
Adobe MAXにおいて、この未来に向けた次の段階として、クリエイティブアプリにエージェント型AIを深く統合した新機能を発表した。
- Adobe Express AIアシスタント(英語版ベータ):スキルレベルを問わず、ユーザーが内容を説明するだけで、独自のブランドやスタイルを反映した、テンプレートを超える洗練されたコンテンツを作成できる。コンテンツのあらゆる側面を再生成し、気に入った部分を失うことなく部分的な変更や微調整を進められる。
- Adobe Photoshop AIアシスタント(web版プライベートベータ):Photoshop内で直接AIアシスタントと対話し、複数のクリエイティブ作業を連続して実行したり、パーソナライズされた提案を受けたりすることが可能。エージェントとの対話と、スライダー移動などの手動ツールをシームレスに切り替え、精密な調整を行える。
「Adobe Project Moonlight」構想
グリーンフィールド氏は、「複数のAIアシスタントがアプリ内でシームレスに連携した時にこそ、本当の魔法が生まれる」と述べ、その実現に向けて取り組んでいるのがAdobe Firefly向けの「Adobe Project Moonlight」であると明かした。
Project Moonlightは、複数のアドビアプリや他社製ツールを横断的に連携できる「パーソナルなオーケストレーション的なAIアシスタント」だ。各アプリのAIアシスタントがそれぞれの領域の専門家として機能する一方、Project Moonlightはオーケストラの指揮者のようにそれらすべてを調obesさせる。
ユーザーは必要なことをProject Moonlightに伝えるだけで、複数のAIアシスタントがひとつのクリエイティブチームとして連携し、ビジョンの実現を支援する。Adobe Project Moonlightを使うことで得られるメリットとして、次のことを挙げている。
- 文脈に応じたクリエイティブインテリジェンス:Adobe Project Moonlightは、Adobe Creative Cloudライブラリやソーシャルアカウントと連携し、ユーザーのスタイル、プロジェクト、アセットを理解する。これにより、ユーザーらしさを反映したパーソナライズされたアイデアやコンテンツを提案
- 対話型クリエーション:エージェントとの会話をそのままクリエイティブコンテンツへと昇華させる。エージェントとアイデアをやり取りする過程で、ユーザーの方向性に沿った画像、動画、ソーシャル投稿を生成し、アイデアから制作までスムーズに進めることができる
- データ駆動の成長と戦略:ソーシャルチャネルと連携させることで、エージェントがパフォーマンスを分析し、トレンドを把握。オーディエンスの拡大とクリエイティブブランドを強化するコンテンツ戦略を構築
このProject Moonlightは、Adobe MAXでプライベートベータ版として初めて発表された。アドビはこのアプローチをクリエイティブエコシステム全体に拡大し、近日中にさらに多くの機能を追加する予定であり、ユーザーからのフィードバックが重要な役割を果たすとして、ベータ版への参加を呼びかけている。
アドビのアプリの今後
アドビは、「創造性は1つの場所だけで生まれるものではなく、ユーザーが作業する環境も様々である」との理解に基づき、自社のクリエイティブ機能をよりオープンな環境で利用可能にする取り組みを加速させている。
その一環として、OpenAIの「ChatGPT」をはじめとする主要なチャットボットプラットフォーム上で、アドビの対話型クリエイティブ体験を提供する計画を明らかにした。これにより、ユーザーは使い慣れたチャットインターフェイスから、アドビが誇るクリエイティブ機能へ直接アクセスできるようになる。
例えば、ChatGPT上でAdobe Expressアカウントを連携させれば、「イベント用のフライヤーを作って」といった自然言語での指示からデザインを開始できる。AIが生成したデザイン案を元に、対話を続けながらカスタマイズし、個人的なタッチを加えることが可能だ。
そして、デザインの骨子が固まったら、ワンクリックでAdobe Expressアプリ本体にシームレスに移行。そこでさらに細かなディテールを磨き上げ、完成したコンテンツをそのまま各SNSチャネルへ予約投稿するといった、一連のワークフローが実現するとしている。