この5年ほどだろうか、海外メーカーの交換レンズを展示するブースがCP+の会場で増えはじめたのは。その多くは中国製で、単焦点レンズがほとんどを占める。光学性能に不足はなく、しかも廉価。この記事を読んでいただいている読者のなかにもこのようなレンズを所有するひとは少なくないことだろう。今回のCP+でも以前から中国製のレンズを展示するブースに加え、これまで聞いたことのなかった海外メーカーもいくつかブースを構える。破竹の勢いとはまさにこのことだ。

一方、この中国製のレンズを迎え撃つのが、コシナ、シグマ、タムロン、トキナーの国産レンズメーカーである。イケイケどんどんの中国のレンズメーカーに対してどのように対抗していくのか、今回それぞれのメーカー広報担当の方々に尋ねてみた。CP+会場内で立ち話の延長のようなライトなインタビューであるが、それでも個々のメーカーの考えなど知ることができるかと思うので、このコーナーにお付き合い願いたい。

まず株式会社コシナの場合は、新しい製品をより積極的に展開していくと話す。毎回CP+では直前に発表されたレンズのほかに、参考出品として今後生産を行う予定のレンズの展示も恒例になっているが、それをより強化すると考えてよいだろう。さらに"ワクワク感あるレンズ"を積極的に展開することで、レンズメーカーとしての存在感を高めていきたいとのこと。

加えてカメラメーカーとしっかりと連携することで、リバースエンジニアリングでは得られない正確な情報のやりとりを行っているのもコシナの強みとしてアピールしていきたいとのことである(株式会社コシナ/佐藤和宏さんとのお話から)。

コシナのブースの様子。CP+では例年参考出品のレンズが事前の予告なしに展示されることが多く、見るものを"ワクワク"させてくれる
株式会社コシナの佐藤和宏さん。写真愛好家が"ワクワクするレンズ"を今後も精力的にリリースしていきたいと語る
発表されたばかりのツァイスOtus ML 1.4/35。左よりEマウント、Zマウント、RFマウント。マニュアルフォーカスのレンズであるが、いずれのマウントもカメラとの通信を行う接点を備える
参考出品として展示されたフォクトレンダーAPO-SKOPAR 75mm F2.8 VM。アポクロマートの光学系を採用するMマウントの中望遠レンズ
同じく参考出品のフォクトレンダーAPO-LANTHAR 90mm F4 VM。こちらもMマウントの中望遠レンズで、コンパクトなつくりの鏡筒が特徴だ
3月発売予定のフォクトレンダーSEPTON 40mm F2 Aspherical。マニュアルフォーカスのコンパクトな準標準レンズで、EマウントとZマウントを用意
こちらも参考出品のフォクトレンダーNOKTON classic 35mm F1.4。大口径の広角レンズで、ZマウントのほかRFマウントも展示。いずれも接点を備え、カメラとの親和性は高い

次にシグマは、価格と性能のバランスを取りつつ価値を高めるために、昨年からブランディングに注力。ビジュアルアイデンティティをはじめ、国内生産やパッケージングの質感などのこだわりなどで、中国製のレンズとの差別化を図っている。もちろんレンズの性能もこれまで以上に向上させることで、信頼できるブランドとしての確立を目指すとともに、ユーザーに振り向いてもらえることに対し努力を惜しまない。

中国のレンズメーカーは欧米での伸びが顕著だが、シグマとしては間違いのないようにレンズの展開を行うとともに、安易な価格競争は行わず、これまで培ってきたブランドをこれからも大切にしていくとのことだ(株式会社シグマ/畳家久志さんとのお話から)。

白を基調としたシグマのブース。シンプルな展示手法は、今やシグマのアイデンティティと述べてよいだろう。今年も同社の収蔵する写真集が手にとって見られるコーナーがつくられた
お話を聞かせていただいた株式会社シグマ・畳家久志さん。国内生産にこだわり、間違いのないシグマらしい製品をユーザーに提供し続けたいと語る
Contemporary 15mm F1.4 DCは小型軽量なAPS-C専用の広角レンズ。同じContemporaryの16mm F1.4 DCの後継モデルに位置付けられる。3月12日発売予定
シグマのArt 35mm F1.4 DG II。前モデルArt 35mm F1.4 DG DNの後継で、より光学性能を追求するとともに、高速のAFを実現しているという。4月16日発売予定
大口径の中望遠レンズArt 85mm F1.2 DG。Artシリーズでは3本目となる開放F1.2とするレンズだ。現時点では開発発表に留まるが、発売が待ち遠しいレンズである

タムロンは、ズームの展開と先般発表したTAMRON Lens Utility Mobile版 Ver. 5.0のようなこれまでにないソフトウェアの開発を積極的に行うことで、海外メーカーとの差別化を図っていくという。特にズームレンズは古くからタムロンの得意とするところなので、今後もユーザーニーズに応じたズームレンズを開発していくとのこと。

また90mmマクロなどのブラッシュアップやユニークな焦点距離のレンズの開発なども積極的に展開するとともに、動画撮影を意識したレンズの開発も今後検討している。AFや手ブレ補正機構の信頼度をさらに高め、安心してユーザーが楽しめるレンズをさらに強力に推し進めたいと話す(株式会社タムロン/西角久美子さんとのお話から)。

タムロンのブースの様子。今年のハンズオンコーナーには映画バック・トゥ・ザ・フューチャーのデロリアンを被写体として展示し話題に。毎回設けるレンズクリーニングコーナーは常に人気だ
株式会社タムロンの西角久美子さん。今後もズームレンズをメインにマクロレンズやユニークな焦点距離のレンズなど積極的に展開していくとのこと
発表されたばかりの35-100mm F2.8 Di III VXD (Model A078)。ポートレートに最適な画角をカバーするズームレンズ。発売は3月26日

最後はトキナー。中国製レンズよりも高い品質を追求し、他社が扱っていないようなレンズを積極的に展開するのがトキナーの方針だと話す。CP+の会場で参考出品として展示していた超広角ズームレンズは、やはり中国のメーカーでは見かけないもの。光学性能は精度の高さが要求される星風景撮影が誰でも楽しめる最高のものを目指すという。

また、シネレンズも積極的に展開していく。こちらは、既存の写真撮影用のレンズをシネレンズとしたものではなく、最初からシネレンズ専用として設計を行っているとのことで、映画業界では高い評価を受けている(株式会社ケンコー・トキナー/田原栄一さんとのお話から)。

ケンコー・トキナーはカメラ撮影関連のアクセサリーを多数扱うメーカーであり、商社でもある。トキナーはそのレンズ部門に位置付けられ、歴史あるブランドである
ケンコー・トキナーの顔といえばこの方、田原栄一さん。品質にこだわったトキナーらしいレンズを今後も積極的に提供していきたいと語る
トキナーのシネマレンズ。現在35本のラインナップを誇り、同ブランドを代表するレンズシリーズとなっている。光学系は写真撮影用の流用ではなく、専用設計としているのも特徴
今回のCP+で開発が発表されたフルサイズ対応の広角ズームレンズ。展示はモックモデルであったが、すでに撮影可能な試作機が存在し、その作例も展示されていた

以上が、筆者が各広報担当者との対話をもとにまとめた内容である。コシナは積極的なレンズ展開とカメラとの親和性を高め、シグマはより確立したブランディング、タムロンは得意とするズームレンズの展開や機能の充実、トキナーは中国メーカーが真似のできないレンズのラインナップなどがいわゆる"中華レンズ"に対する各社の対抗策と述べてよい。言いふるされた言葉だが、モノづくり日本の威信をかけ、今後もユーザーの期待に応えるよりよい製品を積極的に展開してもらえれば、その礎は盤石であるように思えてならない。


大浦タケシ|プロフィール
宮崎県都城市生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業後、雑誌カメラマン、デザイン企画会社を経てフォトグラファーとして独立。以後、カメラ誌をはじめとする紙媒体やWeb媒体、商業印刷物、セミナーなど多方面で活動を行う。
公益社団法人日本写真家協会(JPS)会員。