ゼンハイザーグループは、2025年度において4億6,310万ユーロ(約787億2,700万円)の売上高を計上した。世界経済の不安定化、需要の減少や競争の激化が見られる厳しい市場環境の中でも、同グループは堅調な事業基盤を維持した。また、重要な戦略的取り組みを継続するとともに、研究開発への長期的な投資も続けている。
さらに、世界初の広帯域双方向デジタルワイヤレスエコシステム「Spectera」は、2025年に提供を開始した。利息および税引前利益(EBIT)は1,940万ユーロ(約32億9,800万円)となった。
CEOのAndreas Sennheiser氏は、次のようにコメントしている。
Andreas氏:2025年は、経済面および地政学的な観点の双方において、再び厳しい年となりました。私たちは早い段階で、当社を取り巻く市場の変化が一時的なものではないと認識していました。
全体として、同グループの売上高は前年比5.9%の緩やかな減少となった。2026年1月1日付で同グループの取締役会会長に就任したDaniel Sennheiser氏は、次のように付け加える。
Daniel氏:だからこそ、変化に柔軟に対応し、重要プロジェクトを着実に前進させ、カスタマーに寄り添い続けることが、これまで以上に重要でした。明確な方向性と、世界各地のチームの尽力により、それを実現することができました。そしてそれが、未来に向けた重要な基盤を築くことにつながりました。
地域別の収益推移
EMEA(ヨーロッパ・中東・アフリカ)地域は再び売上高で最大の市場となり、2億1,580万ユーロ(約366億8,600万円)を計上した。これは前年と比較して7.0%の減少となった。本拠地であるドイツ市場では、全体的な経済環境の低迷による需要の伸び悩みが影響し、11.8%の減少となった。
AMERICAS(アメリカ大陸)地域では、売上高が5.2%減少し、1億4,260万ユーロ(約242億4,200万円)となった。米国市場では、政治的状況や経済的な不確実性を背景に購買行動が慎重になったことが、収益の減少につながった。同地域は総売上高の約30%を占めており、同グループにとって引き続き戦略上の中核市場だ。APAC(アジア太平洋)地域では、売上高が1億470万ユーロ(約177億9,900万円)となり、前年から4.5%減少した。一方でインドは再び好調に推移し、同地域における重要な成長市場であることを示した。
Daniel氏:2025年度における地域別の業績は、世界的に経済環境の不安定さが続いていることを反映しています。私たちは国際的に事業を展開しているからこそ、各市場の動向をきめ細かく把握することができます。また、各地域のチームを通じて、それぞれの地域におけるカスタマーのニーズを理解し、的確に対応することが可能です。
Andreas氏:AMERICAS地域では、競争圧力が高まる中でも、特に放送やイマーシブオーディオといった分野において、引き続き大きな機会があると考えています。APAC地域では、大学、公共機関、企業拠点における技術導入の拡大により、インドが大きな可能性を示しています。
80年にわたるイノベーションと未来への投資
2025年、ゼンハイザーは創立80周年を迎え、社内イベントをはじめ、1945年の創業以来ゼンハイザーを特徴づけてきた独自のサウンド体験と技術革新に焦点を当てた幅広い対外キャンペーンなど、年間を通じてさまざまな活動を展開した。
2025年という節目の年においても、ゼンハイザーは未来に向けた投資を続けた。研究開発は引き続き重要な注力分野だ。2025年、同グループは製品ポートフォリオのさらなる開発、ソフトウェアソリューション、ハードウェアとサービスの統合に、売上高の約10%にあたる4,810万ユーロ(約81億7,700万円)を投資した。また、ドイツおよびルーマニアの自社生産拠点にも約580万ユーロ(約9億8,600万円)を投資した。これらの投資は、経済的に厳しい時期においても、イノベーションと持続的な成長に向けて長期的に取り組む同グループの姿勢を示すものだ。
こうした研究開発への長期的な投資を象徴する具体例が「Spectera」だ。世界初の広帯域・双方向ワイヤレスシステムである「Spectera」は、10年以上にわたる開発を経て、2025年に提供を開始した。
AndreasV氏:私たちにとって「Spectera」は、単なる新製品ではありません。まったく新しいアプローチです。このシステムは進化を続けており、ソフトウェアを通じて新機能を追加できるほか、カスタマーからのフィードバックも今後の開発に直接反映されます。これにより、今までにない新たな開発サイクルが生まれています。
同時に、同グループは業務プロセスのデジタル化と最適化も引き続き推進した。特に、デジタル・バリューチェーンのさらなる発展や新たなカスタマー接点の創出、バックエンド業務の刷新、クラウド基盤の整備に注力した。サステナビリティの面でも進展があった。
2025年、ゼンハイザーはDIN EN ISO 50001に準拠したエネルギーマネジメントシステムを導入し、企業戦略で定めた気候目標の達成に向けた取り組みを継続した。
成功した市場投入
同グループは、プロフェッショナル向けオーディオソリューション事業に引き続き注力している。この方針は、2025年における複数の製品展開にも表れている。「Spectera」の提供開始に加え、ステレオショットガンマイク「MKH 8018」の投入や「EW-DX」プラットフォームの機能強化により、ポートフォリオを拡充した。
また、ゼンハイザーは「TeamConnect Ceiling Medium Ceiling Tile」により、対面とオンラインを組み合わせた会議環境向けの製品ラインナップを補完した。さらに、戦略的パートナーシップと特定の環境に依存しないソリューションを通じて、世界各地での活用領域も拡大した。
Neumannは、イマーシブオーディオ制作の分野に新たな可能性をもたらした。「RIME(Reference Immersive Monitoring Environment)」は、ヘッドホンを通じてDolby Atmosなどのマルチチャンネル形式でイマーシブモニタリングやミキシングを可能にするソフトウェアだ。
また、「VIS(Virtual Immersive Studio)」は、AR環境における空間オーディオ制作に新たな可能性をもたらす。Apple Vision Pro向けに設計されており、Mac上のLogic Proなどを直感的に操作できるようにする。
Sennheiser Mobilityは、2025年に特に高い成長を遂げた事業分野となった。その成長をけん引した主な要因として、顧客基盤の拡大と製品展開の成功が挙げられる。
主な取り組みには、AMBEOベースの信号処理を採用した「Sennheiser Signature Sound System」のsmart #5 Premiumおよびsmart #5 BRABUSモデルへのグローバル展開、smart #1への継続的な展開、Morgan Supersportへの導入、そしてCUPRAとのパートナーシップが含まれる。さらに、ライセンス事業も追加収益の創出に貢献した。
展望
同グループは、当年度も不安定な状況が続くと見込んでいる。
Daniel氏:経済的および地政学的な環境が短期間で改善するとは考えていません。だからこそ、堅調さを維持し、先を見据えて明確に行動することが、これまで以上に重要です。独立したファミリー企業である私たちは、長期的な視点に立って意思決定をおこなうことができます。それにより、将来にわたる成長力を持続的に強化することができるのです。
Andreas氏:そうした意思決定の1つが、2026年初頭に従来の事業部門であるPro AudioとBusiness Communicationを統合することです。現在、カスタマーは主にアプリケーションやワークフローを軸に考えており、あらゆる接点においてシンプルで一貫した体験を期待しています。
この取り組みにより、私たちはカスタマーの視点に立ち、ハードウェア、ソフトウェア、サービスを統合したソリューションを、より一貫した形で開発・提供できるようになります。これにより、市場における同グループの競争力を高め、カスタマーとともにオーディオの未来を築くための重要な基盤となります。