株式会社サンフレッチェ広島は、株式会社ビジュアル・プロセッシング・ジャパン(以下、VPJ)が提供するデジタルアセット管理(DAM)システム「CIERTO」において、AI顔認証による選手写真の自動タグ付け機能の本格運用を開始した。
撮影された写真に「誰が写っているか」をAIが自動で判定して選手名を付与することで、必要な写真を選手名から瞬時に探し出せる環境を実現する。
同取り組みでは、マーケティング・データ・AIを軸に戦略から実装までを一気通貫で担う株式会社TONIQが、AI導入の設計・構築から運用までを支援した。
本件は、2026年7月に発表した「CIERTO」導入(デジタルアセット管理基盤の構築)に続く取り組みである。導入発表時に明らかにしていた「AIを活用したメタデータ付与の自動化」が、選手写真の顔認証タグ付けという形で実現したものだ。
同取り組みのポイント
- トップチームの全選手・監督の顔をAIが学習し、写真に写る人物を自動で判定
- 1枚の写真に複数の選手が写り込んでいる場合も、それぞれの顔を認識し、写っている全員にタグを付与
- 過去に蓄積された写真への選手タグ付与を完了。すでに選手名での検索が可能
- 新たにアップロードされた写真を24時間自動処理し、最短数分でタグ付け
- 実際の試合写真での検証において、別の選手や観客への誤ったタグ付けはゼロ
- 担当者が手作業で付けたタグを尊重し、AIが上書きしない設計
背景:一元管理の「次」にある、「探す・活かす」の高度化
2026年7月のCIERTO導入により、撮影者ごとに分散していた写真・映像は、クラブ公式の単一基盤に集約された。一方で、「どの写真に、どの選手が写っているのか」という情報の整理は、依然として担当者の手作業と記憶に頼らざるを得なかった。1試合で撮影される写真は数百枚にのぼり、その数は年々増え続けている。特定の選手の1枚を探すのに時間がかかる、過去の名場面をすぐに掘り起こせない。こうした「探す」段階の負荷が、写真という資産の活用を妨げていた。
SNSやデジタルメディアを通じた発信の重要性が増すなか、写真を「いかに速く、いかに的確に」活用できるかは、クラブの情報発信力を左右する。今回のAI顔認証タグ付けは、一元管理という土台の上に「探す・活かす」を高度化する取り組みである。
取り組みの内容:AIが写真の「中身」を理解する
今回本格運用を開始したAI顔認証タグ付けは、写真の「中身」(そこに誰が写っているか)をAIが判定し、選手名を自動で付与する仕組みである。次の4つを特長としている。
全選手・監督を学習したAIによる自動判定
あらかじめトップチームの全選手・監督の顔の特徴をAIに学習させ、写真に写る人物を見分けられるようにした。写真がアップロードされると、AIが顔を検出し、学習済みの選手データと照らし合わせて人物を特定する。
24時間稼働し、アップロードから最短数分で自動処理
新しく撮影された写真は、これまで通りCIERTOへ登録するだけで、最短数分のうちに自動でタグが付与される。担当者による追加の操作は不要だ。
複数選手の同時判定と、選手名での横断検索
1枚の写真に複数の選手が写っている場合も、写っている全員を判定してタグを付与する。これにより、「選手名で検索すれば、その選手が写っている写真がすべて見つかる」環境が整った。
「確信が持てなければ付けない」判定設計
同システムは確信度の高い判定のみを採用し、判定に迷う写真にはあえてタグを付けない。誤った情報を残さないことを優先した設計である。
精度と、顔情報の取り扱いについて
本格稼働にあたっては、実際の試合写真を用いて精度を検証した。逆光や選手が密集する場面、大勢の観客が写り込む場面を含めても、別の選手や観客に誤ってタグを付けることはなかった。前述の通り、判定に迷う写真にはタグを付けず、担当者が手作業で付けたタグをAIが上書きすることもない。
選手の顔情報および写真データは、クラブが管理するシステムの範囲内でのみ利用する。第三者に提供されることはない。
導入効果:写真を「探す時間」から「活かす時間」へ
広報・制作の現場では、特定の選手の写真を探す作業が、数分から数秒へと短縮される。具体的には、次のような場面での活用が期待される。
- SNS・オウンドメディア:試合直後でも、狙った選手の写真をすぐに見つけて発信できる
- メディア対応:報道機関からの写真提供依頼に、迅速に応えられる
- パートナー・スポンサー企画:特定選手を起用した素材の抽出が容易になる
- 周年・レガシー企画:過去の名場面や選手の軌跡を、埋もれさせずに呼び出せる
「探す」ことに費やしていた時間を、写真を「活かす」ことに振り向けられるようになる。
今後の展望
3社は今後、同機能の活用範囲の拡大を検討していく。新たに加入した選手の顔をAIに追加学習させることで、シーズンをまたいでも高い精度を維持する。あわせて、女子チーム(サンフレッチェ広島レジーナ)やアカデミーの写真、さらには映像への応用可能性についても、順次検討を進めていく方針だ。
また、学習対象を現在の所属選手にとどめず、クラブの歴史を彩ってきた過去の所属選手へと広げていく。ネガフィルムや現像写真のデジタル化はすでに完了しており、こうしたレガシー写真にも顔認証タグ付けを適用することで、クラブが積み重ねてきた歴史的な資産の活用をさらに進めていく。
サンフレッチェ広島、VPJ、TONIQの3社は、「100年続くクラブのアセットを、未来へ繋ぐ」を合言葉に、クラブが積み重ねてきた記憶を「生きた資産」として活用する取り組みを継続していく。