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アーザス株式会社は、汎用NASを映像制作向けに最適化し、収録と編集を同時に行ういわゆる「追っかけ編集」(Edit-while-Ingest)に対応した共有ストレージ環境を構築する独自技術「deStage Manager(以下:dSM)」を発表した。

dSMは、汎用NASのLinuxカーネル、メモリ、書き込みキャッシュ、RAID、およびI/O挙動を、映像制作ワークフローに合わせて最適化する技術だ。

現場の規模と予算に応じた汎用NASを活用しながら、マルチチャンネル収録、複数端末からの同時編集、追っかけ編集などに必要な共有ストレージ環境を構築する。

dSMは、すでに国内の放送・映像制作現場において複数の導入実績があり、実際の制作ワークフローで活用されているという。

初期対応プラットフォームはSynology製NASで、Softron社のMovieRecorderを併用することで、Blackmagic DesignのDaVinci Resolveを使用した追っかけ編集ワークフローにも対応する。

汎用NASを、追っかけ編集に対応した共有ストレージへ

映像制作の現場では、収録した素材をすべて書き終えてから編集を開始するのではなく、収録を継続しながら、すでに記録された部分を並行して編集する「追っかけ編集」が求められるケースがある。

ニュース、スポーツ、イベント、番組制作など、時間的制約の厳しい現場では、以下の処理が同一の共有ストレージ上で同時に発生する。

  • 複数チャンネルからの継続的な収録書き込み
  • 編集端末からの映像読み出し
  • プロジェクトファイルやキャッシュの更新
  • 複数ユーザーによるランダムアクセス
  • 素材のコピー、書き出し、バックアップ処理

一般的なNASは、ファイル共有、バックアップ、クラウド連携など、幅広い用途を安定して処理できるよう設計されている。

一方、収録と編集が同時に走る映像制作環境では、単純な最大転送速度だけでなく、読み書きが激しく交錯する状況での応答性、I/O競合の抑制、書き込み負荷の平準化が重要になる。

dSMは、汎用NASが持つコストメリットや標準機能を活かしつつ、映像制作特有の負荷に合わせてストレージの挙動を最適化する。

deStage Manager(dSM)とは

dSMは、アーザスが独自開発した共有ストレージ最適化技術だ。NASへ到達する書き込みデータは、即座にディスクへ記録されるのではなく、一度メモリ上のキャッシュに蓄積された後、一定の条件に従ってストレージへ書き出される。

標準設定では、キャッシュにデータを蓄積してから大きな単位で書き出すことがあり、映像収録や複数端末からのランダムアクセスが重なった際に、ディスク使用率の急上昇や応答時間の変動が発生する場合がある。

dSMは、こうした書き込みキャッシュの蓄積量、バックグラウンド書き込みの開始条件、フラッシュ間隔、データ保持時間などを詳細に調整する。

大量の書き込みが一度に集中する状態や、読み出しと書き込みが複雑に交錯する状態を整え、ストレージへの書き込みを継続的かつ安定した流れへと制御する。

主な技術要素

  • RAM I/O挙動の最適化:メモリ上に蓄積される未書き込みデータの量と保持時間を調整し、大量のデータが一度にディスクへ書き出される状態を抑制する。
  • バックグラウンド書き込み制御:書き込み処理を早い段階から継続的に開始することで、キャッシュの過度な蓄積と突発的なディスク負荷を抑える。
  • 混在I/Oの安定化:収録による連続書き込みと、編集によるランダム読み出し、プロジェクト更新などが重なった際のI/O競合を抑制する。
  • RAIDおよびストレージ構成の最適化:RAIDレベル、ドライブ数、メモリ容量、NVMeキャッシュ、ネットワーク帯域などを、想定する収録チャンネル数と編集端末数に合わせて設計する。
  • リアルタイムモニタリング:ストレージ負荷を監視し、メモリ、書き込みキャッシュ、RAID、ネットワーク、I/O待ちなどの状態を確認する。
  • ワークフロー単位のチューニング:単一の設定をすべての環境へ適用するのではなく、収録形式、ビットレート、同時アクセス数、編集方法、バックアップ運用などに応じて個別調整する。

DaVinci Resolveによる追っかけ編集にも対応

dSM搭載のSynology NASは、Adobe Premiere Pro、Apple Final Cut Pro、Avid Media Composerのみならず、Blackmagic Designの「DaVinci Resolve」を使用した追っかけ編集ワークフローにも対応可能だ。

※本ワークフローを実現するためには、収録ソフトウェアとしてSoftron社のMovieRecorderを使用する。

MovieRecorderを使用することで、収録中の映像素材を共有ストレージへ継続的に記録しながら、DaVinci Resolveから記録済み部分へアクセスし、編集作業を開始できる。

これにより、収録完了を待つことなく、素材確認、カット編集、カラー調整、書き出し準備などを並行して進めることが可能となり、ニュース、スポーツ、イベント、番組制作など、納品までの時間が限られる現場におけるワークフローの効率化につながる。

なお、追っかけ編集の対応可否および動作条件は、使用する収録機器、ファイル形式、コーデック、ネットワーク構成、各社のNLEアプリケーションのバージョンや運用方法によって異なる。導入にあたっては、実際のワークフローに基づいた構成確認および事前検証を実施する。

※安定した運用のため、アーザスより各種NLEアプリケーションの推奨バージョンを案内、または指定する場合がある。

最大転送速度ではなく、実運用時の安定性を重視

dSMは、ベンチマーク上の最大転送速度だけを追求する技術ではない。映像制作の実運用においては、単独の大容量ファイルを連続的に転送する性能以上に、以下の挙動が重要となる。

  • 収録を継続できること
  • 複数の編集者が同時に作業しても応答性を維持できること
  • 読み書きが重なっても応答性が大きく変動しないこと
  • 書き込みキャッシュが過度に蓄積しないこと
  • ストレージ使用率が長時間100%付近で推移しないこと

dSMは、ハードウェアのスペックだけに依存するのではなく、ストレージ内部のデータ処理を調整し、実運用時の待ち時間や動作の不安定化を抑えることを目指す。

限られた予算でも共有編集環境を構築

従来、追っかけ編集や複数ユーザーによる同時編集に対応する共有ストレージでは、1000万円規模以上となる専用システムも多かった。一方、制作会社、地方局、CATV局、小規模スタジオ、イベント制作現場などでは、高額な設備投資が難しいケースも少なくない。

dSMは、汎用NASの価格面でのメリットと、アーザスが放送・映像制作分野で培ったシステム設計のノウハウを組み合わせることで、制作規模に応じた共有ストレージ環境を構築する。

高額な専用システムの導入だけに頼るのではなく、現場に必要な構成を選定し、コストを抑えながら適切な環境を構築することを重視している。

初期対応プラットフォーム

dSMの初期対応プラットフォームは、Synology製NASだ。

Synology製NASは、ファイル共有、ユーザー管理、バックアップ、スナップショットなどの機能を備えたストレージプラットフォームである。

アーザスは、対応機種の中から映像制作に適したハードウェアを選定し、メモリ、RAID、NVMeキャッシュ、ネットワーク、およびdSMの設定を組み合わせた「検証済み構成」として提供する。

dSMは、アーザスが主体となって開発、構成、検証およびサポートを行う独自技術だ。現時点ではSynology製NASに対応しているが、今後は他のプラットフォームへの拡張も検討していく。

提供形態

dSMは、アーザスが検証済みのNAS、ドライブ、メモリ、ネットワーク、およびキャッシュ構成を組み合わせた共有ストレージパッケージとして提供する。標準提供内容には、以下を含む。

  • 用途に応じたNASおよびドライブ構成の選定
  • RAID設計
  • メモリおよびNVMeキャッシュ設計
  • ネットワーク構成
  • dSMの導入と初期設定
  • 映像制作ワークフローに応じたチューニング
  • 動作確認
  • 監視環境の構築
  • 導入後の技術サポート

単にソフトウェアをインストールするだけでなく、対象のワークフローに合わせて構成全体を設計・調整した状態で提供する。

構成ラインナップ

制作規模に応じて、デスクトップ型からラックマウント型まで複数の構成を用意している。

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想定チャンネル数および編集端末数は、1映像チャンネルあたり約100Mbpsを基準とした構成目安だ。実際の対応数は、コーデック、解像度、ビットレート、同時処理負荷、ネットワークおよびドライブ構成によって異なる。

想定する利用シーン

  • ニュース収録と追っかけ編集
  • 番組制作におけるマルチカム収録
  • DaVinci Resolveを使用した共有編集
  • 複数編集者による同時作業
  • スポーツおよびイベント中継
  • ポストプロダクション
  • 地方局、CATV局、小規模スタジオ
  • 企業内映像制作部門
  • 期間限定の制作拠点
  • オンサイト編集