txt:松本敦 構成:編集部

人生を変えたアクションカムとの出会い

いまでこそメジャーになった「アクションカム」というジャンルであるが、僕がこのジャンルのカメラに初めて出会ったのが2011年。同僚からラフティングに誘われたのがきっかけだった。せっかく遊びに行くなら動画で残したいと思い、最初は防水のスマホケースを探していたところ、GoProというまだ「アクションカム」という言葉すらなかった特殊なカメラに出会った。

当時はまだ画質もそこまでよくなかったものの、いままで見たことのないアングルに衝撃を受けた。ちなみに当時筆者はサラリーマンをしていたのだが、このアクションカムで動画作りに夢中になった。自転車に取り付けて旅動画を撮ったり、イベントの模様を撮影したりなどをしてYouTubeにアップすることがいつしかライフワークに。

自転車GoPro映像の集大成として2013年に制作した「BROMPTON TOURING TO SHIMANAMI」は海外の方からも多く視聴いただき、実際にこの映像がきっかけでしまなみ海道に訪れたというメッセージも多数いただいた(撮影ではGoPro以外も使用)。

このような活動がきっかけとなり、2014年にはなんと14年勤めていた会社を辞めて、映像クリエイターとして独立することになってしまうのだから、人生は分からないもの。あくまで個人的な経験になるが、「アクションカムには人生を左右させてしまうくらいの魅力がある」ということが言いたいがための長い前置きとなった。

GoProユーザーから見たSonyアクションカム「FDR-X3000R」

今回レビューするのはライブビューリモコンの付属する「X3000R」だが、そもそも出会いがGoProだったので、実はSonyのアクションカムに触れるのは今回が初めて。ということで「GoProユーザーから見たSonyアクションカム」という視点でレビューしていく。

後発だけに、よく練られた嬉しい機能が満載

GoProとの大きな違いとしては、手ぶれを軽減させる「空間光学ブレ補正」、機能手元で操作が簡単にできる「ライブビューリモコン」の2点が挙げられる。アクションカムとしては後発だけに、他にもユーザーとしてかなり嬉しい機能が追加されているので、実際に使いながらその機能を検証してみた。

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大きさ比較

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「旅映像を記録するカメラ」としてX3000Rを使ってみる

今回、このカメラの性能を検証するにあたり「旅カメラとして」というテーマで使ってみようと思う。アクションカムといっても、おそらく使う人が全てエクストリームスポーツをするわけではなく、むしろ使うのは一般的な方で、実は筆者も「旅カメラ」としてGoProだけを持って旅動画などを作っている。普段仕事の撮影などではたくさんの機材を持ち歩いているため、プライベートな旅ではできるだけ少ない機材で身軽に動きたい。とは言いながらも、出来ることなら高機能なカメラで出来るだけ楽しく記録に残したという矛盾をこのカメラが果たして解消してくれるのか?そんな願いも込め今回「旅カメラ」としてX3000Rを使用した。

「旅カメラ」に求める3つのポイント

  1. 小型であること
    旅の目的はあくまで「身軽に動けること」小型であればあるほど望ましい。
  2. 起動が早いこと
    何が起こるか分からないイベントの道中に準備に時間がかかってはせっかくのチャンスを逃してしまう。
  3. おまけ機能が充実していること
    通常の撮影機能だけでなく、タイムラプスなど「特殊撮影」のおまけ機能があると単調になりがちな映像にリズム感を出してくれる。

この3つの条件が揃うことで、気持ちよく旅の記録を残すことができるだろう。果たしてSony X3000Rの性能はいかに!

奈良県の国立公園「大台ヶ原」撮影の道中で使ってみた

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今回の貸し出し期間の間に、奈良県の国立公園「大台ヶ原」の撮影があったので、X3000Rを旅の記録として持って行った。

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標準装備としてコンパクトな自撮り一脚Velbon Ultra Stick50に取り付けてバッグに入れて移動して使ってみた。

完成した映像はこちら。

編集はFinal Cut Pro Xを使用し、色味や速度などを調整してみた。

小型、機動性、おまけ機能という「旅カメラに求める3つのポイント」としても申し分のない性能が十分に揃っていたと言える。そしてこれらのポイント以外でもおすすめの点があったので紹介する。

ビデオカメラのように使えるズーム機能が嬉しい!

実は、これが一番驚いた機能だった。アクションカムというと「広角」1択のようなイメージで、そういうものだと思っていたのだが、「旅カメラ」という視点になるとやはりちょっと寄りたい時もある。ズーム機能をオンにすると最大3倍までズームが効くので、ちょっと遠い被写体に寄りたい時には非常にありがたい機能となる。

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被写体から30cm離して撮影

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ズームW(ワイド)

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ズームT(タイト)

空間光学ブレ補正で酔いにくい映像に

以前、GoProを手持ちで歩いて撮影した際に、歩く衝撃をもろに拾ってしまいガクガクしていた記憶があるのだが、X3000Rはかなり補正してくれた。とは言ってもいわゆる「スタビライザー」のようにヌルヌル動くというよりは、「衝撃を吸収する」という方が正しい。歩き方をすり足のようにすれば比較的なめらかになるものの、滑るように撮れるというわけではないのでご注意を。ただ「旅の記録」という点においては十分かと思われる。

スロー撮影が楽しい!

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高速道路でスローでズームした場合は非常に粗い映像になってしまった

GoPro最上位機種HERO4と同等の1280×720サイズで240fpsのハイスピード(スロー)映像が撮影可能。さらにこの撮影の最中にも上記同様にズームができる。4K映像と組み合わせると画質的には劣るものの、何気ない風景もスローにすることでいつもと違う景色になったりする。このような遊びのバリエーションを加えると旅動画も面白くなる。

ただし、もともと解像度が低い上に暗部に非常に弱いので、場所によってはズーム機能と併用するとかなり粗い画像になるのでご注意。

4Kタイムラプスが美しい!

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撮影した日が運よく快晴で、大きな雲が空を覆っていた。4Kタイムラプスで撮影すると雲が立体的に映り、迫力のあるタイムラプスを撮影することができた。旅動画にちょっと加えるだけでもスパイスになるタイムラプスが高画質で撮れるのはかなりポイントが高い!

ライブビューリモコンが便利!

腕時計型の液晶モニター付きのリモコンを初体験。スマホ接続でも同様にコントロールできるものの、今回の登山のような場面では非常に重宝した。ペアリングした状態であればリモコンのスイッチを入れると連動して本体のスイッチが入るために手間がかからず、すぐに撮影にスタンバイできるのがありがたい。また3mの防水機構になっているので、ラフティングなどの水遊びなどスマホは使用できないような環境下でも重宝するだろう。今のところ別売りしていないので、必要な方にはこちらのリモコンがセットになったモデルをおすすめする。

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今回は試していないものの、ライブビューリモコンと本体を接続させる「フィンガークリップ」を使用すれば「超小型ビデオカメラ」としても重宝しそうだ。

気になった点や購入前の注意点など

以上、かなり感動したポイントを挙げてきたが全てが完璧というわけではない。使っていていくつか気になった点もあったのであげていく。

■メニュー操作がちょっと分かりにくい

目的のメニューまでたどり着くのに、一苦労。操作を覚えてしまえば問題ないが、ボタンが限られているので何度も押して目的のメニューにいくのが割と面倒だった。たとえば4Kの撮影をしてすぐにスロー映像を撮りたい場合は、一度「4K」メニューから「FHD」メニューに入ってからでないと選択ができない。また同じ画質でもビットレートの種類が分かれているなど、プロユースとしてはありがたいものの、初めて使う人にとってはこのメニューを理解するのでもハードルが高いことだろう(シンプルにそぎ落としたアクションカムの宿命ではあるが…)。

色温度やホワイトバランスまで調整できるのは嬉しいが、使用する人にとっては使わない機能が多いかもしれないので、例えば「シンプルモード」「プロフェッショナルモード」のようにスイッチを切り替えて、使えるメニューを替えるようにできればもっと使いやすくなるのかもしれない。

■ハイスペックのmicroSDが必要

高画質100Mbpsで撮影する際にはUHSスピードクラス3が必要となる。性能を十分に引き出した撮影をしたい場合は、こちらの準備も忘れずに。

■4K撮影時の連続撮影時間
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レビュー等でも話題になっていた「熱暴走」についても検証してみた。

  • 撮影は4K30p100mbps
  • ライブビューリモコン接続
  • 室内温度27度前後

上記条件で連続撮影したところ、10分ほどで本体が熱くなってきたものの連続40分撮影され、32GBのmicroSDにフルに撮影することができた。確かに本体がかなりの熱を持つので撮影の条件次第では熱で落ちることも考慮する必要がありそうだ。

FDR-X3000Rは旅に出たくなるカメラ

以上、気になる点も含めて個人的に感じた魅力をお伝えした。しっかり使ったのは2日間と短期間だったが、「このカメラでもっと遊んでみたい」というのが正直な感想。そして個人的にはSonyがこのようなスペックで出してきたいま、GoProの新製品がどのようなスペックで対抗してくるのかにも期待をしたいところだ。

WRITER PROFILE

松本敦

松本敦

映像クリエイター。企業VPからスポーツイベント撮影まで幅広く手がける。アクションカムやドローンなどの特殊ガジェット好き。