txt:Matthew Allard(NEWSSHOOTER) 構成:編集部

EZ-1/EZ-2の運用をさらに効率化するために

AngenieuxのMSU-1ユニバーサルシネサーボは、EZ-1/EZ-2ズームレンズ専用に作られた製品である。3つのモーターとワイヤレスモジュールにより、ENGスタイルの撮影を可能にする脱着型レンズ駆動ユニットで、Movcam社がAngenieux向けに供給している。

サーボ・ズームを使用するブロードキャスト・スタイルのENGカメラユーザーが、大判センサーのデジタルシネマカメラへと移行していくにつれ、親しみやすく利便性の高いレンズの需要が高まっている。

筆者はいつも脱着可能なハンドグリップサーボズームを良いアイデアだと思ってきた。今回の本題であるAngenieux MSU-1 Universal Cine Servo。一般的なENGスタイルのレンズコントロールグリップとしての全ての機能を提供する一方、いくつかの驚きがあった。MSU-1は一見、これまで見たことがあるENGサーボズームコントローラーと変わらない。このタイプの設計は非常に長い間行われているが、サーボズームコントローラーは今でも同じように構成されている。本製品を製造するMovcam社は、“If it ain’t broke don’t fix it(うまくいっているものには手を加えるな)”という哲学を守っている。

機能と製造品質

このシネサーボのハウジングは、テフロンコーティングを施したマグネシウム合金で構成され、ハンドストラップはナイロンとレザーでできている。ハウジングは比較的軽量であるにもかかわらず頑丈な造り。ボタンとズームロッカーは、B4 ENGズームレンズで見られるものと非常によく似ている。

従来のズームロッカーは可変スピードコントロールで増大されるのに対し、ハンドルのラン/ストップボタンはカメラをトリガーする。グリップ部はヒロセ電機およびLEMOコネクターを用いての拡張コントロールが可能。内蔵ワイヤレスモジュールにより、有線接続なしでサーボドライブを制御できるほか、標準的なENGレンズ用パンハンドルを使ったサーボコントロールにも対応する。

このシネサーボには3つの0.8 MODギヤと、Hirose12ピン端子、Hirose20ピン端子、6ピンLEMO端子、4ピンLEMO端子が備わっている。重量は720gで最大35W。摂氏-20~55℃の温度環境で動作する。

さらに高度な機能としてオートアイリススイッチと、ズームとフォーカスの両方のオート/マニュアルを切り替えるスイッチがある。また、ズームロッカー後方のグリップ上部に、リターンビデオスイッチがある。

押下時に焦点距離のメモリポイントが設定可能な「AIFボタン」があり、AIFボタンを押すと、ズームモーターが強制的にテレ端に移動し、ボタンが押されている限りテレ端に留まる。ボタンを離すとズームモーターは以前設定された位置に戻る。

LED画面でメニュー階層に入ると、以下のパラメータを変更できる。

  • システムモード:アナログ需要、デジタル需要、ワイヤレス、ローカル
  • アイリス制御モード:自動/リモート
  • ワイヤレス周波数選択
  • ファームウェアアップグレード
  • トリガ自動較正
  • レンズデータ選択

ワイヤレスコントロール

内蔵ワイヤレスモジュールにより、Movcamワイヤレスレンズコントローラーとのインターフェースが可能になり、レンズモーターを必要とせずにアイリス、ズーム、フォーカスを遠隔制御することができる。これは非常に便利な機能で、クレーンや車載、ジンバル等で使用する場合は、レンズを簡単にセットアップして遠隔操作が可能。

■ズーム/フォーカスデマンド(20ピンアダプタケーブル接続)

  • FUJINON
  • キヤノン
  • Microforce

■リモートコントローラ(20ピンインターフェイス経由)

  • Cmotion
  • Preston

■互換性

  • キヤノンとFUJINONの標準ENGレンズパンハンドルと互換性がある
  • Hirose20ピン端子-アナログおよびリモートコントロール
  • Hirose12ピン端子-カメラのレンズポートに直接接続
  • 4ピンLEMO端子-“I”プロトコル通信
  • 6ピンLEMO端子-MBUSポート
  • Cooke I System-リアルタイムデータ転送、ストレージなし

前述のように、このシネサーボはAngenieux EZ-1 30-90mm T2およびEZ-2 15-40mm T2レンズ専用に設計されている。これらのレンズの美点は、リア光学ブロックを交換してフルフレーム/VistaVisionセンサーをカバーできる点である。EZ-2 15-40mm T2の場合は22-60mm T3に、EZ-1 30-90mm T2は45-135mm T3に変化する。

EZシリーズはコンパクトサイズで軽量な設計のため、多くのビデオグラファーにとって非常に魅力的な選択肢となっている。レンズマウントを変更したり、サーボズームを追加したりすることで、これらのAngenieuxズームは恐らく最も汎用性の高いシネズームレンズとなる。

取り付け

MSU-1はセルフアライニング方式で、3本のネジとガイドピンが取り付けられている。非常に簡単であり、数分で完了できる。レンズとの接合部にずれが起こる心配もなく、安全で好感が持てる。

価格

MSU-1は40万円前後で販売されている。ワイヤレスでのフォーカス、アイリス、ズーム制御が不要な場合は、ズーム制御のみ可能なMSU-1A(17万円前後)もある。

実際に使ってみる

筆者が最も興味を持ったのは、Angenieux MSU-1ユニバーサルシネサーボが簡単に使え、快適に操作できるかどうかである。セットアップが難解で、オペレーションが快適でなければ、購入する意義はなくなってしまう。

Super35mmサーボズームを現行世代のデジタルシネマカメラに取り付ける時の最大の問題は、カメラを肩に載せて適切にバランスを取るために必要な位置において、レンズが撮影者の頭部に近すぎるという事である。

これは、レンズグリップを握る右腕が快適なL字型にならず、腕が後方に曲がっていることを意味する。これは人間工学的に非常に不快であり、腕や手首の疲労を引き起こす。いまだに2/3″ B4タイプのENGカメラは、手持ちの使用には人間工学的に最もフレンドリーで、そのデザインが25年以上も変わっていない理由がわかる。

Angenieux MSU-1 Universal Cine Servo example footage

今回はEZ-1 30-90mmとEZ-2 15-40mmの二本で、ソニーFS7 IIを使ってMSU-1とのシステムを試すことにした。Angenieux純正のソニーEマウントリングを用いれば、アダプタを介さず装着できる。FS7 IIはロッキング機構付きのEマウントを採用しているため、ロッドとレンズサポートを用いる必要はなかった。

FS7 IIとEZレンズシリーズ+MSU-1の組み合わせで、合理的でコンパクトなENGスタイルは実現できるのだろうか?先述の通り、多くのSuper35mmサーボズームをデジタルシネマカメラに取り付けた際、カメラ位置がかなり後方になり、サーボグリップを握った位置が損なわれるのである。幸いなことに、EZ-1/EZ-2に純正Eマウントリングを取り付けると、レンズ部が実質的に数センチ長くなる。この延長分により、サーボグリップの位置が手持ち撮影にとって適切なポジションとなるので、実際に有益である。

Vocas社のユニバーサルスライドベースプレートとVマウントバッテリープレート、そしてLCDビューファインダー延長ブラケットを追加することで、FS7 IIとEZレンズシリーズ+MSU-1とのバランスをとることができた。過去に試した他社製品とは異なり、腕は理想的なL字型を保て、カメラを持つ手首に余計なストレスは感じなかった。

残念なことに、シネズームとサーボグリップとの理想的なバランスを取るためには、カメラのプラットフォームを長尺化し、重量も増す必要があり、アクセサリーをすべて手に入れるためにはある程度の予算を費やす必要があるということである。

MSU-1の筐体は造りが良く、握り心地も快適だ。B4 ENGレンズを使用した人なら誰でも、MSU-1の機能性と手慣れた操作感に親しみを覚えるであろう。また、Angenuiexのレンズフードもとても使いやすかった。これを使うと、レンズの前面に左手を添えながらピントを合わせることが可能だ。フードを左手で持ち、右手でサーボグリップを支えると、快適かつ実用的なシューティングが行える。

FS7 IIにおいてAngenuiexのシステムは非常にうまく機能するが、他のデジタルシネマカメラではどうなのか?取り分け、適切な重量配分を作り出すことに関して、筆者はまだ疑問を持っている。時には、実際にどうなるかを見極めるために、試行錯誤を行うこともある。

以上、カメラとレンズにまつわる人間工学について述べたが、実際のサーボズームの動作感はどうだろうか。ここにおいては、少し当たり外れを感じる。

3,500ドルで売られている製品ならば、完璧に動作するだろうと期待している。確かにスピーディーなズームの際はうまく動作するが、ゆっくりとズームしようとすると、動きが引っかかりがちで、滑らかではない。これはズームイン時よりもズームアウト時にはっきりと分かる。理由はわからないが、MSU-1の内部モーターが、低速動作時もレンズ鏡筒をスムーズに駆動させるほどには強くないのではないか。筆者がテストしていたユニット固有の問題だと思われる。

もう一つ、意識すべき点は、MSU-1の電源を入れるたびにレンズを再びキャリブレートする必要があることで、最大で約20秒を要する。ペースが速い環境で作業している場合は、これを勘案しておく必要がある。

筆者が最後に行った実践テストは、Movcamのワイヤレスレンズコントローラーで実際にどのように動作をするかの確認である。MSU-1にはワイヤレスモジュールが内蔵されているので、レンズモーターを必要とせずにアイリス、ズーム、フォーカスを遠隔操作できる。外部モーターやケーブル、インターフェースボックスが無いため、セットアップは非常に簡単だった。筆者は実際にジブ、クレーン、カーマウントショットでこのシステムを使用している自分の姿が浮かぶ。

限られた焦点範囲のレンズにサーボズームを用いるのはなぜ?

限られた焦点距離のレンズでサーボズームを使おうと思うか、実際にその価値があるかどうかは、ユーザーの仕事の種類によって決まる。もし、制約の多い撮影環境でテレビのリアリティ番組を撮影するなら、サーボズームを装着したEZ-2 15-40mmは理にかなっているだろう。19~90mmや17~120mm、20~120mmのように、焦点距離範囲が非常に広い場合を除き、個人的にはハンドヘルド構成のレンズではサーボを使用しないことがある。たとえばカメラをクレーンやジブ、またはカーマウントに搭載した場合、EZズームで使用する可能性が高くなる。

MSU-1の製造品質は良い。人間工学に基づいて、最新のデジタルシネマカメラでサーボズームを使えるようになっている。実際、多才なEZズームレンズをさらに魅力的なものにしている。欠点は、スローな動きにおいてスムーズなズームができないことである。

メーカー側が自社製レンズ向けオプションとしてサーボズームを作るのは良いことだ。Carl Zeiss社の例があるように、それは確かに簡単な仕事ではない。3,500ドルの価格は、全てのユーザーが魅力を感じるには厳しいし、購入して所有するというより、レンタル業者で目にする可能性の方が高くなる。多くの点で、17万円前後のズームのみのサーボMSU-1Aのほうが良い選択肢になるだろう。

もしあなたがEZズームレンズを所有または使用しているなら、MSU-1は確かに価値があるが、完璧な製品とは限らない。本来、この価格帯ならば本来完璧に動作するはずだが、今回に関してはそうではない。サーボ・ズームは正確でスムーズなズーミングが不可欠である。残念ながら使用したテスト機のMSU-1では、この重要なポイントが達成されていなかった。改修、改善を期待したい。

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出典:Newsshooter
協力:タレスジャパン株式会社(Angenieux)

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