左は折りたたみで持ち運びやすくなった新製品の「OSMO MOBILE 3」、右は既存製品のハンドヘルドカメラ「OSMO POCKET」
txt:市井義彦 構成:編集部折りたたみで持ち運びやすくなった「OSMO MOBILE 3」とハンドヘルドカメラ「OSMO POCKET」の違いをチェック
ドローンメーカーとして躍進を遂げてきた「DJI」。
そのドローンで培ったスタビライズの技術を活かしたジンバル、それが「OSMO」シリーズだ。
カメラ一体型の「OSMO」を皮切りに、スマートフォン用ジンバル 「OSMO MOBILE」、そして超小型ジンバルカメラ「OSMO POCKET」、多彩な防水アクションカム「OSMO ACTION」など
その人気と多様性はとどまることを知らない。
中でもコストパフォーマンスの高さで人気を博していたのが「OSMO MOBILE」。
手持ちのスマートフォンをカメラとして利用し、アプリと連携することでパフォーマンスを下げることなくリーズナブルな価格で安定した映像撮影を可能にしている。
2019年夏、大人気のこのシリーズから新たに発売されたのが「OSMO MOBILE 3」。
3軸ジンバルを搭載したDJIお得意のスタビライズ機能の優秀さはもちろんのことながら、今回、特筆すべきはなんといってもこの「折りたたみ構造」。
前機種の「OSMO MOBILE 2」までは、全長約30cm、専用ケースに入れればもっと大きなサイズになっていた。それなりの「撮影用機材」感がいなめず、手軽に持ち運べるイメージではなかったのだ。特に複雑な形をした軸部分はジンバルの肝なだけに、構造上バラすことも難しかったのだろう。
しかし、今回ついに「折りたたみ」が可能になった。それによってなんと約半分のサイズに。
重さも約16%軽くなり、ちょっとしたおでかけにもサクッと持ち運べるガジェットとして生まれ変わったのだ。こうなるともう、必要性がなくても思わず持ち歩きたくなってしまう、ジンバルフリークにはたまらない便利アイテムだ。
OSMO MOBILE 3コンボにはOsmoキャリーケースが付属する。折りたたんで収納したところ
もちろんサイズ以外も当然のごとく進化しており、優位性は高い。値段も安くなり、Bluetooth5によりスマートフォンとの連携も、より簡単になり安定性も向上した。買い替えを検討されている方にはぜひオススメしたい。
しかし、今回個人的には…。比較対象は前機種の「OSMO MOBILE 2」ではない気がする。
そう「OSMO POCKET」だ。
手軽でコンパクト、4K60Pも撮れる高性能。昨年、一世を風靡した超小型スタビライズカメラ。その大人気ぶりにアクセサリ製品の供給が追いつかないと話題になったほどの小さな巨人だ。コンパクトになった「OSMO MOBILE 3」がどこまで追随できるのか。また、どこにポイントを置いて使い分けるべきなのか…。
そんなわけで今回は、いくつかポイントを絞って、POCKET vs MOBILE3 の比較をしてみた。
コンパクト性
POCKETの全長は12cmあまり、重さは120gを切る、そのコンパクトさは尋常ではない。重量比較においても圧巻の差。MOBILE3も前機種に比べ軽量化されたとはいっても、やはりPOCKETには到底及ばない。
OSMO POCKET | OSMO MOBILE 3 | |
本体サイズ(約) | 3.69×2.86×12.19cm | 10.3×12.5×28.5cm 4.6×13.0×15.7cm(折りたたみ時) |
重量(約) | 116g | 405g |
バッテリー
バッテリーの駆動時間は、それぞれ本体で比較すると圧倒的な差がある。
これは、ジンバル+カメラ(収録)であるPOCKETと、ジンバルのみの機能であるMOBILE3の差だ。もちろんMOBILE3の場合はスマートフォンのバッテリーを気にする必要があるので、一概にどちらが優れているとは言えないかも知れない。
OSMO MOBILE 3はバッテリー内蔵。電源ケーブルで充電できる(USB Type-C)
OSMO POCKET | OSMO MOBILE 3 | |
駆動時間 | 140分 | 15時間 |
操作性
POCKETの方がコンパクト性優位なのは間違いないのだが、小さい分やはり操作性には欠ける。
POCKETの液晶画面のサイズはわずか約19mm×21mm。タッチパネル操作は全てその小さな画面でやることになる。MOBILE3は、ジョイスティック・ズームスライダー・トリガーなど物理的なインターフェイスが豊富で、操作性がとても高い。実際に触ってみるとわかるが、撮影しながらのコントロール性は圧倒的だ。
POCKETも、スマートフォンを接続することでスマホ画面で操作することが可能になるが、その分コンパクトではなくなるし、それでもタッチパネル操作なので、それなりの操作性になってしまう。POCKETのアクセサリはいろいろ発売されているので、その拡張性の進化に期待したい。
とりわけ現状ではMOBILE3の操作性の高さに魅力を感じる。
撮影性能
実際に同時撮影を行い比較をしてみた。
うーん、スタビライズ性能に関してはほとんど違いを感じられなかった。やはりその辺りは同様の機構なのかもしれない。ただ、MOBILE3の撮影映像は、オートフォーカス性能のせいか、微妙にブレのようなものを感じる。これはカメラの性能も大きく起因するので、どのようなスマートフォンを使うかによっても変わってくると思う(今回はiPhone8 Plusを使用)。
もろもろの撮影安定性という意味では、やはりカメラ付属タイプのPOCKETの方が一歩上を行っている気がする。
コストパフォーマンス
導入コストとしては、やはりMOBILE3の低価格が魅力的だ。MOBILE2になった時点で限界まで価格を下げたイメージがあったが、さらに今回も下げてきた。
POCKETとの比較においては3倍以上の差があることになる。スペックにおけるメリット・デメリットは双方にあるけれど、やはり導入において避けては通れないポイントなので、ここも注視したい。
OSMO POCKET | OSMO MOBILE 3 | |
価格(税込) | 44,900円 | 13,500円 |
まとめ
今回ご紹介した「OSMO MOBILE 3」は、スマートフォン用ジンバルとしての有能性と、コストパフォーマンスの良さは、王者DJIらしい安定感がある。
そんな中でもやはり「折りたためる」というのは衝撃的な変化だ。「カタチ変わる セカイ広がる」というコンセプトは、手に取ると納得せざるを得ないほどの説得力があった。
初めてジンバルを手にするという人にとって導入しやすく使いやすい機種であることは間違いないだろう。