txt:猿田守一 構成:編集部
小型・軽量で高性能なバッテリー「Imicro-150」「Imicro-98」登場
今回IDX社よりA-Vmicro2(Micro 2ch Hot swap Adaptor)を含むmicro Battery Systemをお預かりしたのでレポートをお届けしたいと思う。
昨年行われたInterBEE2019のIDXブースに参考出品されていた製品がいよいよ発売となる。例年出展しているIDX社は本年も出展し、同製品も展示予定だったが、アメリカ・ラスベガスで毎年4月に開催されているNAB Show 2020が今年は新型コロナウイルスの影響により中止となってしまい、お披露目の機会を失ってしまった。今回の新型コロナウイルス騒動により例年にない出来事が世界中で勃発している事で早い終息を願うばかりだ。
IDX社のVマウントバッテリーを運用しているカメラマンや技術会社、放送局はかなり多い印象がある。中でもPowerLink機能を搭載したE-HL9は色々な現場で使用されているのを目にしている。
数年前からビデオカメラ業界もENGスタイルからシネマスタイルまで、運用スタイルの幅はかなり広くなり、特にシネマ系カメラではカメラ以外に外部モニターや外部収録機、レンズコントローラーなど、カメラ以外のアクセサリー類への電源供給などが問題となってきた。また、大判センサー搭載の4K、6Kカメラの登場によりカメラ自体の消費電力増加も撮影現場では大きな問題となってきている。
IDXはリチウムイオンバッテリーのさらなる高性能化によるそれらの諸問題の回答として、Micro Li-ionバッテリーをリリースした。このMicroシリーズはとても多機能コンパクトで軽量なのが第一印象である。150WのIPLシリーズと比較した場合、IPL-150が970g、Imicro-150が750gとおよそ20%軽量化されている。
また98Wタイプでの比較では、IPL-98が745g、Imicro-98が550gとこちらは25%ほど軽量化されている。容量はImicro-150が145Wh(14.5V/9.93Ah)、Imicro-98が97Wh(14.5V/6.62Ah)、出力においては最大出力154W(14A 11V/H)と、かなりの高出力に対応している。
VL-DT1本体上部にはD-Tap端子を2つ装備。1か所あたり最大100W(16.8V~11V)までの容量があるため、外部モニターやレコーダーなど、十分給電可能な仕様となっている。写真を見ていただいてわかるとおり、2つあるD-Tapのうちの片方は水色の端子となっている(Advanced端子)。この端子は外部電源からの充電に対応しており、VL-DT1を使用する事により大型の充電器を持ち歩くのが困難な撮影現場などで簡易的な充電が可能となる。
LEDの点灯と点滅の組み合わせで10%刻みの残量表示が可能
セルの劣化状態表示モード
バッテリー残量は残量表示チェックボタンを押すことで5つのLEDで10%ずつの10段階表示となっている。また残量表示チェックボタンを5秒以上押すことで、バッテリーセルの劣化具合を3段階に分けて表示可能となっており、バッテリーの管理も簡単に行える。
本バッテリーはデータ通信機能を搭載しており、IBモードとSBモードの2種類のデータ通信モードを切り替えて使用可能となっている。IBモードはIDX機器とのBMS通信を行うモードとなっており、またSBモードはSMBus通信を行える機器とのデータ通信が可能となっている。
ちなみに、筆者所有のSony PMW-350では残量表示がしっかりとファインダー内に表示することが出来た。カメラ側の設定でパーセント表示と電圧表示にすることが出来たので通信状態は問題ないようだ。
本機の多機能ぶりの機能の一つとして、定格以上の高電流や高電圧を放電や充電時に検知した場合、充電量を表示するLED5つが全て点滅するアラーム機能を持っている。またバッテリー内部温度が基準値より高い場合もアラーム機能が作動する仕様だ。
小型軽量で多機能と、IDXの意欲作というところではないだろうか。ちなみに残量チェックボタンを2回連打すると、Vマウント金具側に搭載されているLEDが点灯するギミックが搭載されている。いざという時にはとても役に立ちそうな装備ではないだろうか。
ユーザー目線のアクセサリー類も充実
Imicroバッテリーを最大限に活用できる3つの専用プレートも用意されているので紹介しよう。
■A-Vmicro2 Micro 2ch Hot swap Adaptor
今回新たに発売されるA-Vmicro2 Micro 2ch Hot swap Adaptorは写真からもわかる通りVマウントバッテリープレートとほぼ同じサイズのところにImicroバッテリーを2個装着可能なアダプターだ。
特筆すべきところはホットスワップが可能で、2本装着時は1本ずつ出力し、バッテリーがなくなったら自動で切り替えを行ってくれるため、長時間撮影でもカメラを止めることなく撮影し続けることが出来るアイテムとなっている。本体上部にはD-Tap端子が2つ搭載されており、側面にはUSB-C端子が1系統搭載されている(5V 2.3A)。
1ch・2chとバッテリースロットがあるのだが、最初にバッテリーを装着したchが優先的に通電する。また2本装着時、中央の切り替えボタンを押すことにより1/2chを通電しながら切り替えることが出来る。片方のバッテリーがおよそ12.0Vになると自動的にchを切り替えてくれるので、カメラへの給電を止めることなくバッテリーを交換できるシステムとなっている。
また、IDX製の充電器を使用する事により本機にバッテリーを2個搭載した状態で順次充電可能となっている。
このmicro Battery Systemは特に海外ロケなどにはもってこいのシステムといえる。現在航空機内へのリチウムイオンバッテリーの持ち込みは厳しく制限されており、100W以下であれば機内持ち込み数が20個までとなっている。キャリーバッグを含めた重量制限があるのでうまく引っかからないように持ち込む量を調整する必要がある。
本製品は98Wタイプと150Wタイプなので、98Wタイプなら機内持ち込みは問題ない。また150Wタイプでも航空各社により機内持ち込みが数量限定で可能であったりするので、航空機を利用する場合は事前に航空会社のHPで確認することをお勧めする。
最近の筆者の体験であるが、機内持ち込みバッグの重量計測を行われてかなりヒヤッとした経験がある。アメリカ就航路線だと機内持ち込み可能な重量は10kg前後が多いが、今年に入って利用した中華航空では7kgとなっており、荷物預け入れカウンターで機内持ち込み用の手荷物の重量検査をさせられた。10kg程度に詰め込んできたので当然アウトとなってしまった。いくつかの機材を預け入れ用のスーツケースに詰め替え、それでもオーバーな分は同行者の荷物に詰め込んでもらい何とか通過できたという事があった。航空会社により対応がまちまちなので海外に行く際は十分ご注意いただきたい。
そんな折、このバッテリーシステムであれば小型軽量というアドバンテージがあるので海外に持ち出すにはもってこいという印象を強く受けたのでした。
■P-Vmicro V-Mount Micro Plate
microシリーズに合わせたマイクロサイズのVマウントプレート。このサイズの小型プレートにもD-Tapが2つとUSB-Cの出力端子を装備する。D-Tapからの出力はMAX80WまたUSB-Cは5V 2.3Aとなっている。
■A-CPmicro Micro Cheese Plate
P-VmicroとA-CPmicro(Micro Cheese Plate)を組み合わせることにより、カメラサポートシステムの15mm標準ロッドに取り付け可能となる。Cheese PlateにはUNC 1/4が18か所UNC 3/8が5か所あるので、工夫次第で補器類を取り付け可能だ。
リチウムイオンバッテリ―もニッカドバッテリーから置き換わった当初に比べると、かなり性能がUPされている。近い将来リチウム全個体電池の実用化もされるだろう。その頃にはどのような高性能なバッテリーが登場するのか楽しみである。