txt:猿田守一 構成:編集部
VENICEの表現力、FS5の機動・操作性、αの高速AF機能・ハイフレームレート撮影などを踏襲した「FX6」
編集部よりFX6のインプレッション記事筆耕依頼が入り、後日実機が届いた。3辺合計80cm程度の段ボール箱1個のみが到着した。レンズだけ先に来たのかな?と開梱してみるとその箱の中にちゃんとレンズを含めたワンセットが入っていた!とにかく「ちっさ~!」「軽い~!」となった。
早速本体の重量を計ってみた結果880gほどしかないではないか!この軽さにはかなりの衝撃を受けた。しかしながらハンドグリップやLCDモニターなどの付属物を取り付けるとそこそこの重さとなってしまった。紐解いてみると、ほぼFS5本体と同じ重量となっているようだ。形状はFS5の後継というよりFX9を一回り小さくしたデザインで、表面の塗装はFX9と同じグレーのざらっとした塗装でマグネシウム合金製である。
外観を見ているとグリップ部分の大きな冷却用グリルが目につく。中にはセンサーの冷却用に巨大なフィンが見える。これはかなりの冷却効果をもたらす構造ではないか!またレンズマウント上部には「α」のロゴと「FULL FLAME」の文字が!
ソニー公式YouTubeチャンネル「Get ready for Cinema Line」
9月上旬、ソニー公式YouTubeチャンネルで「Get ready for Cinema Line」という動画を目にされた方は多いのではないだろうか。当の筆者もこの動画を見てFX6の存在を知ったのだが、本機のαのロゴを見て??と思った。中身はもしかするとα7S IIIのムービーカメラ版なのか?という疑問が沸いた。
今回送られてきたパッケージには取説は付いておらず、詳しい仕様は何も分からないままテストしている状況だ。しかし、本機の外観の小さなサイズとは正反対にポテンシャルの高さを感じることが出来る。今回返却までの時間が短くサッと触った程度であるがインプレッションとして書いていきたい。
外観での大きなポイントは上記の通り“軽量コンパクト”。このサイズならドローンへ搭載や、ジンバルに載せて、はたまたVENICEやFX9での収録時のサブカメラとしてなど、幅広い制作領域で活躍できそうである。
側面部を見てみるとほぼFX9と共通のボタン配置や、可変NDなどのつまみ類が採用されている。FX9のメニュー操作はそれまでのソニー製小型業務機で採用されていた“クルクルピッ”のダイヤルが廃止され操作性が向上したのだが、本機では同じ機構はサイズ縮小化によるためなのか搭載されず。
操作部分はハンドル上部とFS5と共通で、スマートグリップに搭載されている十字方向に動くボタンで操作を行う。FS5と違いビューファインダーは搭載されていない。本体のみだとまさしくトレンドでもある箱型カメラだ…。
本体上面にはカメラ用のアクセサリーを取り付けるための1/4インチネジ穴が多数切ってある。音声入力用のCanonXLR端子は本来には設置されず、お馴染みのハンドグリップ部分に搭載されている。小型機ならではの最適化がなされていると感じるデザインだ。
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FS5と共通のスマートグリップは180°6段階の角度で固定可能で、手持ちでのローアングルから背伸びをしたハイアングルまで多岐にわたる撮影ポジションに柔軟に対応できる。本機ではアサイナブルボタン5にメニューが割り振られており、右手はグリップしたまま直ぐ下の十字ボタンで操作出来る。この機能でシャッタースピード、F値、ISOなどに素早くアクセスすることが出来る。また人差し指が掛かるところにあるダイアルでF値をコントロールする事も可能となっている。
また上部ハンドルにも同じような事ができるようにボタン類が配置されている。
本機はFX9と同じフルサイズ35mm(FFモード)とSuper 35(S35モード)を搭載している。FX9の6kサイズ1900万画素のイメージセンサーとは共通ではないようで、1020万画素の裏面照射型センサーを搭載している。この画素数からしてα7S IIIとは少し異なるようである。
また消費電力も18Wと、FX9の35.2Wと比べるとほぼ半分だ。ここまで消費電力を抑える事が出来たということはかなりの技術的革新があったのではないだろうか。とは言っても本体への外部電源電圧はFX9と同じく19.5Vとなっている。バッテリーに関しては今まで通りのBP-Uシリーズが使用できる。
メニューボタンを押すとLCD画面にはクイックメニューが表示されるようになった。各ページにカメラ、オーディオなどそれぞれ関連する項目が10ページにまとめられている。このLCDはタッチ式となっているので、この画面から必要な項目をタッチして変更可能となっている。またこのメニューボタンを長押しすることで従来通りのメニューが表示される。
ハンドル部にはLCDモニターを取り付けるためのネジ穴が前方1箇所、後方2箇所備わっており、撮影スタイルに合わせてモニター位置を変えることが出来る。この3.5インチLCDモニターはFS5 IIの156万画素から276万画素にアップグレードされているのでかなり精細に映像を確認することが出来る。
裏面照射型センサーの感度が上がったことにより今までより、より広ダイナミックレンジとなった。ソニー発表では15stopを確保できているという。これはVENICEと同じダイナミックレンジという結果をもたらした。またベース感度もISO800とISO12800となり、FX9のISO800とISO4000と比較すると高感度化した事が伺える。今回HLGで撮影したフッテージをいくつか紹介したい。EDIUSから切り出したのだが、色関係は弄っていないプレーンなものだ。
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特に注目していただきたいのは竹藪を撮影したフッテージだ。ISOはなんとISO25600まで上げて撮影した。静止画なのでノイズの乗り方は分かりにくいと思うが、ここまで上げてもざらつきが少ないのにはちょっと驚いた。通常そこまでISOを上げて撮る事はないと思うのだが、このフッテージで本機のS/Nの良さがある程度感じ取れて頂けるのではないだろうか。
CineAltaからのS-Cinetoneによる、特に人の肌に注視した中間色や色合いをより自然なトーンに仕上げるモードはデフォルトで搭載されている。
撮影モードはカスタムとCINE EIの2モードがある。カスタムではSDR(BT709)とHDR(HLG)を選択できる。またCINE EIモードではS-Gamut3とS-Gamut3 cine(色域)が選択出来るようになっている。
デュアルREC可能なSDXCカードスロットを装備。記録方式はクラス300のSDXCカード使用する事によりXAVC-I 422 10ビットまで可能。またDCI 4K/QFHD 60Pまで記録することが出来る。ハイフレームレート収録ではDCI4K/60fps QFHD/120fps FHD/240fpsまで撮影できる。いよいよQFHDでも240fpsまで撮れる時代になったのかと驚きである。
ファーストインプレッション総括
ざっとではあるが短い時間のなかでのインプレッションとなったのだが、本機のポテンシャルを感じずにはいられなかった。そこでさて、本機の実態とは何ぞや?というところだが、画質ではVENICEの表現力を踏襲した血統、機動・操作性ではFS5の流れ、そして高速AF機能・ハイフレームレート撮影・レンズマウントはα譲りという、いいとこ取りをした小型シネカメラという位置付けなのかもしれない。
まさしく今回ソニーが提唱した「Cinema Line」という言葉の意味はVENICEからFX6まで映画からクリエイターまで、どのレベルからでも本格的なCINEMAを撮影できるラインナップを揃えましたよという認識なのかもしれない。とても魅力を感じるカメラだと思う。