これまでのHyperDeck 4機種がリニューアル
私が代表を務めるVIVID社は、中古のテレビ中継車の買取・販売をしつつ、民放テレビ局様やケーブルテレビ局様、中継技術会社様などからご依頼を頂き、生中継やマルチカメラ収録のお手伝いをさせていただいている会社である。自社用中継車を2台、4K HDR対応中継カメラ・HD中継カメラを合計8台所有し、運用している。
弊社の中古中継車買取販売部門については以前PRONEWSで取り上げていただいたことがあるので、ぜひそちらもご参照してほしい。
今回紹介する、Blackmagic DesignのHyperDeck Studioシリーズは以下の4機種である。
- HyperDeck Studio HD Mini:税込62,678円
- HyperDeck Studio HD Plus:税込91,278円
- HyperDeck Studio HD Pro:税込125,180円
- HyperDeck Studio 4K Pro:税込186,780円
同社の製品群は、登場以来その魅力的な価格設定とユーザーニーズの正鵠を射る製品群から、またたく間に市場を席巻。いまや学生でも多数所有し、プロ顔負けの映像制作を実現するきっかけになるなど、市場に与えた影響は計り知れない。
今回は2021年7月30日に発表・同時発売された前述の4機種を、「私の目線」ということで、僭越ではあるが使用感をお伝えしていきたいと思う。
弊社は前述の通り、中継やマルチカメラの実務も行っている会社である。そんな弊社も皆様同様、同社製品には大変お世話になってきた。現在手元にあるHyperDeck Studio 12Gと比較しつつ、まずは弊社の主業務である中継での使用感・提案などをしていきたいと思う。
外観について
まず目に入るフロントマスクはどれもプロ用機材としての堂々たる面構えを持っていると言える。同社製品はいずれも価格帯に似合わない(!?)カッコよさを備えており、ひいてそれは制作者にとって一番重要な「やる気」につながっていると思う。
大手メーカーではプロ用機材も価格ランクによって材質やデザインに明確なクラス分けがあるものもあったが、同社がまさにブレークスルーとなって「見栄えのいい機材」を使えるようになったのは素晴らしいことだと思う。
モニターの色温度も統一された感じで、「どのモニターが本当の色?」ということはなくなった。触ってすぐわかる点では、キーボタンの材質等がリファインされた。
今までのものはクリック感がなく、押せていたかどうかがわかりにくかったが、新たにクリック感のあるボタンに変わったことで操作における信頼性が向上した。これは大変ありがたいことだ。
また上位3機種はボタンに色がついていることで、旧来のVTRを使ってきた世代にとっても、停止・録画などが遠目にもすぐわかるところが良いところだ。
各機種(旧機種を含め)の奥行きを比較してみた。
新型の1Uフルサイズデッキ(写真の黒色のデッキ2種・奥行236.4mm)が、一番奥行きがある。しかし、この位の奥行き感がちょうどいい感じである。
今までのデッキは、ラックマウントするとコネクタを裏から見ると、かなり奥過ぎて、コネクタを挿しにくいことがあった。奥行きがあることは機材を置いた場合も安定するし、筆者はいいことと捉えている。
小型デッキ2台について、ラックマウントするためにTeranex Mini Rack Shelfを用いて固定するのだが、もともと1/3サイズのTeranex Miniシリーズコンバータを固定するためのものだ。そのため、同サイズであるHyperDeck Studio HD Miniはそのままぴったり収まるが、HyperDeck Studio HD Plusについては、大きい割に固定出来るネジ穴が1つしかなく、一応その1個のネジで止めれば収まりが良くはなるが、心もとなさが残る。
最低でも2個、できれば4個のネジで止められれば安心なので、実際はDIYでTeranex Mini Rack Shelfに穴あけをする必要があるかもしれない。
TC入出力端子について
弊社は2016年春に自社で使う(中古販売用車両ではない、という意味)中継車として、セミトレーラー型の4K大型中継車を新車製作・運用開始した。デモ動画をぜひ観てほしい。
これは地方である長野県であっても、4Kでの中継が出来るんだ、ということを前面に押し出したプロジェクトであった。当時はまだ4K中継車は数が少なく、また日本でも数台というセミトレーラー型であることからいろいろとメディアにも取り上げて頂いた。そのトレーラー中継車で採用していた最終段の録画機器が、同社のHyperDeck Studio 12Gであった。
翌年にはDuplicator 4Kを1台追加導入し、合計すると2160/59.94Pの5系統収録環境が信じられない低価格で構築できた。HyperDeck Studio 12Gは、SSDによる録画トラブルは皆無で非常に安定して動作してくれた。
ただ、タイムコードについてはエンベデッドされた状態で12G-SDIとして入力する必要があり、そのために同社製「Teranex Mini Audio to SDI 12G」を導入していたことも事実である(同機は音声エンベッドとTCエンベデッドが選べる)。
接続というのはいかにシンプルにするか?が大事で、経由する機械が増えるほどトラブル発生確率が増える。しかしTCを合わせるためには12G-SDI対応TCインサーターとしての「Audio to SDI 12G」が必須で、それが今回の「HyperDeck Studio 4K Pro」では単独のTC入出力端子により解決したことは大変喜ばしいことだと思った。
また他の3機種にもTC入出力が備わっている、ということは同社の本気度が伺える。今回の4機種は背面のTC IN/OUTコネクタについて、小型モデルではBNC、1UフルサイズデッキではXLRコネクタと分けてある。
単純な変換ケーブルを作ればいいだけのことだが、ほとんどのシチュエーションでTCはBNCで供給されることが多い中、同じメーカーの同じシリーズ間でコネクタが違うのは少し不便かな、と思った。
さらに欲を言えば、アナログまたはAESデジタル音声が入出力(最低でも入力)できればもう言うことなしなのだが、同社はユーザーの期待を裏切らない会社なので今後に期待しよう。
USB-Cストレージへの記録
今回大変嬉しい機能の1つと言えるのが、USB-Cによる外部ストレージへの記録機能が付与されたことだ。同社指定の動作確認ができた2.5インチSSDはまだやはり高価だ。USB-CのSSDストレージであれば安価に出回っているので、それをクライアントに準備してもらえれば、持ち込み品に直接録画してその場で納品することが可能だ。
叶うならばSSDなど前面のポートと同時にバックアップ的にUSB-Cに同時録画できればベストだと思うが、そこまではできないようだ。
同時収録ができなくても、例えば収録終了後にHyperDeckだけで(PCを用いずに)SSD→USB-Cコピーができる機能があっても良かったのかもしれない。
モニター出力について
従来品はモニター出力端子からはHD映像が常時出ていた。今回の製品群では、Miniモデル以外に装備されているモニター出力端子に、各種ステータスがスーパーインポーズ出来るようになった。
これは非常に便利ではあるが、イベント会場のセッティング(後述の実際の現場でのセッティング写真参照)や、中継車内の設置場所によっては、デッキ内蔵の小型の液晶画面では、各種状態が細部まで把握できなかった(見えなかった)。
しかしこのモニター出力映像をどこかのモニターに出しておけば、遠隔地でデッキの状態を直感的に知ることができる。中継用途ではルーティングスイッチャーに入れておいて、VEが時折選択して目の前の大きなマスモニで確認したり、スイッチャーの空きポートに入れて、その入力ボタンは設定で無効にし、マルチビューのPGM画面の表示場所にPGMの代わりに、このモニター出力を表示させる(アサインする)ことで、スイッチングアウトの確認とデッキステータスの確認がマルチビュー画面上でスイッチャーさんも可能になる、という使い方もできる(下写真参考例。スーパーが邪魔するが納得の上であれば)。
音声モニター機能の追加
これまでの機種では、収録している音声を確認する術がなかった。メーターは振っているものの、ノイズのない正常な音声かどうかは判別付かないので、後段にHD-SDIからデエンベデッドして音声を抽出し、それをモニター機器に入れて確認するか、映像モニターにHD-SDIで繋いで、イヤホン端子からの確認か?しか手段がなかった。どちらも出来ない環境では、とりあえずテスト録画してみて、それをPCに取り込んでプレーヤーで再生して、PCのイヤホン端子で確認したこともある。
しかし、先に触れたように接続する機器が増えるとトラブルの元になる。そのように接続して聞いた音声にノイズが載っていた場合、デッキ音声の不良と断定するには、確認のために使ったデエンベデッド機器やモニター機器自体が正常であることを「別の信頼のおけるソースを用いて」確認しないと、デッキ音声が悪いと断定できない。接続機器が多くなるほど、確認は煩雑になる。
それが今回、内蔵スピーカーとヘッドホン端子が装備された。内蔵スピーカーについては、なかなかの音量があった。細かいノイズやチャンネルがあっているか?の確認はできないが、ないよりはあったほうがいい、ということもあろうかと思う。現場では「音を出せない」ということがほとんどだろうが、ちょっとしたチェックは可能である。もちろん、ヘッドホン端子がついたのは何よりも喜ばしいことで、自身の信頼するヘッドホンで聞くことで音声がいつもと変わらずに正常がどうかが判断付くようになる。
お金を頂く立場の私たちは、いつでも万全の状態で挑み、不安要素を排除することでトラブルなく仕事を終える事が大事である。そのベースがあって初めて、芸術性や遊びの要素、更なるステップアップがあると思うので、まずは頂いたお仕事をトラブルなく終わらせること、そのために備わった「音声のヘッドホンモニター端子」は、今回の新モデルで一番のアピールポイントだと思う。
変わった活用法
今回のデッキでは、録画と再生を高次元に融合させた使い方として、「リプレイ用デッキとして使うことが可能」だ。ソニー9ピンシリアルコントロールのプロトコールに準拠しており、様々な9ピン(RS-422)コントローラーからデッキの制御が可能になる。
もともとメーカーとしてはDuplicator 4Kの時のように、カスケード接続した最初の1台をRECにすると、数珠つなぎの全台が同時にRECを始められるという点を推しての採用だと思う。
しかしこの端子を活用すると、現在弊社がメインで使っている武蔵のMDC-70T型スローコントローラーや、ヤフオクなどでも2万円程度で探すことができる往年の名機ソニーDTR-3000などでも、デッキと組み合わせて簡易スローオペレーションが可能になる。
武蔵のコントローラーは本デッキが5台ほど買えてしまうものなので割愛するが、例えばDTR-3000などを中古で購入すると、撮って出しの簡易スローはコントローラーとHyperDeckのみでできてしまう。弊社でもMDC-70Tを購入するまで約3年間、同組み合わせにて放送用途でスロー出しをしていた。
スポーツ中継のスロー出しは、今や必須のアイテムとなった。先日も別メーカーさんからローコストで魅力的なスローシステムが発売されたが、プロ用コントロール系統のRS-422を搭載しているHyperDeckシリーズなら、単純撮って出しに機能が限定されるものの、簡単にスローオペレートができてしまう。
スローオペレーターは、それだけで食べていける職種と言われている。今までスローを用意していなかった現場でも、これからはどんどん要求が増えていくアイテムだと思われる。
電源の冗長化
電源系がリダンダント構成になったことも素晴らしいと思った。テストで2つのAC電源とDCの計3系統を接続し、録画動作中に1つ、また1つと抜いてみた。録画が止まることなく問題なくDCのみで動作を確認できた。同じくAC1つとDCを抜いて、残りのAC 1つのみになった場合も問題はなかった。
注意点はDC INについて10V~14Vとなっているところだ。満充電時の電圧が16Vを超えるVマウントバッテリーなどでは即座に影響はなくても、指定電圧を超過することは出来るだけ避けないといけない。安定化電源装置を介して12V前後にして使うのがよいと思う。
すべての電源が喪失した場合、収録中であればファイルが損傷する。そのディスクをPCにマウントすると修復を要求されるので、その指示通りに操作すると、直前の映像までを復帰させることが出来たため、最低限の素材の保全は図られるものと判断した。
ただ「今回のテスト環境において、直前の映像が生きていた」というだけで常にそうなる確証はないので、電源のバックアップとしてはバッテリーまたは別系統のブレーカーからのAC電源というように、系統を分ける必要がある。
TCの確認
12G-SDIの出るソニーPXW-Z280カメラのTCをフリーランにして、カメラの12G-SDI出力端子から4K Proデッキに入力し、MENUでTCを「ビデオ入力」に設定する。その時にデッキにメディアをセットしてあっても、収録デッキの液晶画面でTCが歩進しないので、TCを受けているのかどうか?はRECしないとわからないということが判明した。
放送用デッキではINPUT CHECKボタンやRECボタンのみを押すことで録画しようとしているTCが表示されるものだが、本機ではINPUTボタンを押すとSDI入力→HDMI入力に入力映像が変更されてしまう。更に一般的な放送用デッキではRECとPLAYの同時押しで録画開始になるものがほとんどだが、このデッキではRECボタンだけで録画が開始されてしまう。
デッキのTC設定が正しければ、録画開始後にはカメラのTC(SDIに重畳されたTC)がデッキの液晶画面できちんと歩進しているのが分かるので、同期していることが判断できるが、その確認のために1つファイルを作ってしまうのは精神衛生上よろしくない。
本機でももう少しTCを確認しやすくなればいいかな、と思った。これはデッキのTCモードが「ビデオ入力」(SDIに重畳されたTCをリジェネするモード)だけではなく、外部TC入力端子からもらったTCでも同じで、きちんとTCが入力されているかの確認のためには、実際に録画を始めないといけない点が、ちょっと気になった。
TCをカスケード接続できるデッキであるからこそ準備段階でTC同期が確認できたらいいと思う。
現場使用をしてみて
本レポート業務をお受けした当初、お借りできるのがちょうど弊社の撮影業務が無い期間であった。ところがこれも不思議なご縁だろうか。直後に福岡県の中継技術会社であるグルーヴセンス株式会社様から、ネット配信業務の技術協力のご依頼を頂いた。
やはり机上でのレポートだけではわかり得ないこともあるし、他の人の意見も聞きたいところなので、現場に持ち込み実際に収録用に使いつつ感想を聞いてみた。
現場は中継用システムカメラ1台にハンドヘルドカメラ1台、朋栄製スイッチャーHVS-100、他の素材はPowerPointやZOOM画像等のPC画像、蓋画等を出力するPC画像の5素材。
本線録画にグルーヴセンス様所有のデッキ、各素材のパラ録画に今回のデモデッキ4台を使用。約4時間の講演のライブ配信と収録を行った。
グルーヴセンス様でも同社製品群を多数採用されてるが、やはりマルチ収録でのTCの受け渡しや電源のリダンダント化、そしてSSDがなくてもUSB-Cで収録できることを大変気に入っていたご様子であった。
収録・再生機能
収録にSSDとSDカード、USB-Cストレージが使える様になったことは、多様化する持込メディアへ柔軟な対応が出来ることを意味する。ただ、4K収録に適した速度のあるメディアを用いる必要があるので、事前に十分な検証が必要である(特にメーカー検証済以外の製品を使用する場合)。
収録中に停止させずに次のメディアに移れる機能は便利だった。イベント等で、収録しながらどんどんダイジェスト編集をしていきたい場合など、任意のタイミングでアクティブドライブを移行できるので(RECボタン長押しで次のメディアに移る)、収録済メディアをいち早く編集に回すことができる。
そうして空いたスロットにまた別のメディアを挿入できる。これはSD・SSD・USB-Cのいずれでも、交換しながら収録を継続できるので、いろいろな使い方が想定できる。注意点は、もしアクティブドライブに入っているメディアの書き込み速度が足りなかった場合、RECボタンが高速で点滅して知らせてくれるが、警告が発せられてから先は、次のスロットに「普通なら正常に録画できる速度のメディアが入っていても」、一度RECボタンが点滅している状態になった後では、その適正なメディアの録画映像さえも異常な状態になってしまうという点だ。
なので、そうなってしまった時は一度録画を止めて、その適正ではなかったメディアを抜いてから、録画を再開しないといけないことがわかった。
JOG/SHTLダイヤルは、非常に良い作りで、放送用機材と同じ電磁クラッチ機構があり、SHTL(シャトル)操作時は一時停止部分にクリック感があるのと、50倍速時になるとそれ以上回らなくなるように制御している。シャトルモードは正逆ともに1/4倍速・1/2倍速・3/4倍速・1倍速~16倍速まで1刻み・32倍速・50倍速がある。これだけのステップ(21段階)があるとダイヤルをほんの少し動かすだけで速度が変わってしまうので、センシティブだな、と感じた。私個人はここまで細かい設定ではなくてもいいかな?と思った。
JOGモードではダイヤルは無限に回転する。回転量に合わせてフレーム単位で映像を探せる。SHTLとJOGのボタンの下にSCRというボタンがある。これは説明書には難しく書いてあるが、JOGモードでの移動量を更に大きくしたモード、という感じであった。感覚的に10倍ぐらいの量で動く。
SKIPボタンは次(前)のクリップに飛ぶことができる。ただ、残念ながらサムネイル表示機能などはないので、複数のクリップが収録してあるメディアを再生用途で使う場合は、どこに何が入っているか、SKIPボタンで探していくしかない。
今回は試せなかったが、せっかくProRes 4444のアルファチャンネル付きクリップの再生(2つあるSDI OUT端子からKEYとFILL別々に同時出力)が出来るようになったのだから、サムネイル表示を実装して、再生したい映像をすぐに探せるようになるとさらに強力になるかと思う(CGバンク的な使い方として)。
BNC端子について
デモ機でしたので分解・判別はできなかったが、HDモデルと4Kモデルで実装されているBNCコネクタが違うものとわかった。もちろん12G-SDIを通す4Kモデルのみが異なるのは、周波数特性から言って当然ではあるが、別の問題として「刺さるプラグ」と「ほとんど刺さらないプラグ」がある、ということが判明した。
Mini Converterシリーズでも同様に、初期モデルでは古いカナレコネクタが刺さらないということがあった。
本シリーズのHDモデルは、中心コンタクト周囲に絶縁体(白いもの)が見えるが、4Kモデルではそれがない。CANARE製コネクタであれば75Ωモデルで中心コンタクト周囲に絶縁体を配したものはないので、別のメーカーと推測される。
手持ちのケーブル各種で試したところ、CANAREのBCP-C5FやBCP-C3Fなどの旧型BNCプラグはHDモデルではかなり刺さりにくかった。刺さって回すことができるが、かなりきつい印象だ。立井のコネクタBNCP-28CHKの場合、4Kモデル、HDモデル問わず、わずかに抵抗感があるが、上記で感じたような、回せないのではないか?と思われるほどのキツさはない。
またメーカー不詳のBNCコネクタに至っては差し込むこともままならず、無理に奥まで刺して回転させようとするとコネクタにかなりのモーメントがかかり、いくら筐体ネジ留め式のレセプタクルであっても、この力の掛け方では基板側での半田のクラック等に繋がりかねないと思った。
それらチェックした全てのコネクタについて、4Kモデルだと不思議とすんなりと入ってしまう。現在主流はBCP-B5F・B51F・C3F・C31Fあたりが現場で使われていると思うが、それらは4Kモデルでは当然すんなり入るし、HDモデルでもわずかな抵抗感で挿抜出来るので影響はないと思う。
だが、お手持ちの中に古いケーブル・コネクタがある場合や、現場で見慣れないコネクタのケーブルを使用する場合は、嵌合に注意されたほうが良いかと思う。
4KモデルのMON OUTについて
4KモデルとHDモデルの違いに、モニター系の音声エンベデッド信号の質が挙げられる。波形モニター(LEADER LV5490)で計測したところ、4KモデルのMON OUTのみ、音声が常時エラー表示された。HDモデルのMON OUTではそのようなことはなかった。
また4KモデルのMON OUTは常時ダウンコン出力になるが、入力が12Gであっても1.5Gであっても、MON OUTからの音声について、Embedded Audioが正規の規格内に収まっていないという内容のエラーが波形モニター側で出てしまう。
写真で赤字になっている「Inhibit」項目が1秒に1カウントずつ増えていく。モニター内蔵スピーカーなどでそのMON OUT信号を聞くと聴感上は問題なく感じるのだが、正規のHD-SDI信号ではないことから後段の機器によっては信号自体を受け付けないことがある。
ただSDI OUT本線から出た信号ではエラーが出ないのでMON系だけだと思うが、HDモデルのMON OUTでは出ないエラーなだけに、例えば4Kで収録時にMON OUTをHDへのダウンコンバーターとして使う場合、その後段機器との相性は事前に検証する必要がある。前モデルではMPEGエンコーダーや音声モニター装置の一部機種で相性の問題か動作不安定になることもあった。
HDモデルについて
私の使用環境においては4K60Pモデルが主なので、それをベースに書いてきたが、その他のデッキについても簡単に触れていこう。
HyperDeck Studio HD Mini
1/3ラック幅のコンパクトモデル。前作が優秀であったために大きな改良はないものの、そのサイズ感からコンパクトに機材をまとめないといけない現場では重宝すると思う。このモデルにはヘッドホン端子・内蔵スピーカー・HDMI IN端子・MON OUT端子を搭載していない。
HyperDeck Studio HD Plus
1/2ラック幅となりますが、スイッチ類が上位モデルと同じになり、視認性が高くなる。
HyperDeck Studio HD Pro
4K60Pを求めない現場では1Uフルサイズでありながら更にコストパフォーマンスに優れる本機がお勧めになる。安価に依頼される配信業務などでは4Kということはそうそうないかと思うが、その場合はこのモデルで十分だと思う。
最後に
同社製品は、いまや業界になくてはならない存在となっている。既存メーカーにできないラインナップと価格設定。そして柔軟なサポート体制など、業界の勢力地図が大きく変わったこともうなずける。
本シリーズは弊社が5年前に採用した旧モデルでさえ、そのコストパフォーマンスの良さに感動したものだが、そこからTC入出力、ヘッドホン端子、電源3重化、USB-C対応、MON OUT端子にキャラ出力可能と、めざましい進化を遂げている。
完成の域に達した感のあるHyperDeckシリーズにさらに望むことといえば、やはり音声入力端子が付くことと、サムネイル画面から再生画像を選べるようになること…だろうか?
お仕事によって求められる機能は異なるので要望も人それぞれとは思うが、「ライブ中継」「放送機材との組み合わせが多い」などの現場としてはそのような点が求められると思う。
カッコ良くて所有する喜びもあり、安価でお仕事に役立つこれらの新HyperDeck Studioデッキ群は、コストを重視する現代のお仕事環境にベストマッチの機材であると思った。
大手放送局の大型中継車でさえも採用されることが多くなり、コンパクトでコストパフォーマンスが高い同社製品は、これからも多くの現場で活躍していくことと思う。皆様のお仕事での機材選定に本記事が少しでもお役に立てれば幸いである
中川賢司|プロフィール
1975年生まれ。幼少時にベータカムを見てから業務用機材に魅了され、小学生のくせにビデオα誌を読んでいた変態。今は中古中継車を販売する変わり者。業績に見合わない投資をする事で有名。結局ビデオ機材変態。