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Blackmagic Designご協力のもと、URSA Broadcast G2カメラのレポートの機会を頂いたので、私なりのポイントでレポートをさせていただく。

当初はカメラ本体のみの依頼であったが、以下の内容を揃えていただいた。

  • URSA Broadcast G2(新製品カメラヘッド):税込499,180円
  • Blackmagic URSA Viewfinder(覗きタイプのファインダー):税込186,780円
  • Blackmagic URSA Studio Viewfinder G2(新製品7型液晶ファインダー):税込186,780円
  • Blackmagic URSA Mini Shoulder Kit(肩当てやハンドル等のキット):税込49,478円
  • Blackmagic Camera Fiber Converter(光カメラアダプター):税込373,780円
  • Blackmagic Studio Fiber Converter(光ベースステーション):税込373,780円
  • ATEM Camera Control Panel(4カメ分の卓上カメラリモコン):税込373,780円
  • Zoom Demand(新製品ズームリモコン):税込30,778円
  • Focus Demand(新製品フォーカスリモコン):税込30,778円
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必要なカメラセットが、なんと税込2,105,114円!

国内メーカー製4Kシステムカメラであれば、1セット安くて500万円、高いと1,000万円以上(しかも4台揃える場合、Blackmagic Design社であれば、カメラリモコンは1台だけで済む!)。もうBlackmagic Design社製品を語るのに、価格の話をするのはナンセンス。すでに1つのレンジとして確立した感がある。

弊社は生中継やマルチカメラの業務を行うことが多い会社であるので、今回はこのカメラを中継カメラとして使った場合の感想を紹介しよう。

B4放送用レンズマウントを搭載したカメラヘッド「URSA Broadcast G2」

Blackmagic Design社が提唱する3つの使い方「放送プロダクションカメラ」「ライブスタジオカメラ」「デジタルシネマカメラ」。この3パターンについて簡単に紹介しよう。

「放送プロダクションカメラ」とは、一般的にはENGカメラと置き換えてもいいかと思う。普段使いの取材用カメラ。テレビ局の番組取材でもハンドヘルドタイプのカメラが一般的になり、手頃な価格の「担ぎカメラ」が無い中、本機が担う本分野としては、とてもリーズナブルで高画質な取材カメラを構築できる。

「ライブスタジオカメラ」とは、今回のテストセット(上記画像)に近い状態での運用で、テレビスタジオや中継用途でのスタイルである。

そして以前からのURSAシリーズが得意としている「デジタルシネマカメラ」の使い方。弊社は残念ながらデジタルシネマカメラとしての使い方は業務的に皆無であるものの、本機の潜在能力としては、各種マウントアダプターを介してシネレンズを装着することで、6Kまでに対応したデジタルフィルムカメラとして映画撮影も対応できるパフォーマンスを備える!

2/3インチセンサーが主流のスタジオ・中継カメラでは浅い被写界深度を作ることは叶わないので、ラージセンサーを搭載した本機は、多目的に機材を使いたい、という方にとって合理的な選択肢といえる。

操作感については従来の放送用カメラを使ってきた人からすると若干戸惑う面がありながらも、最初からこのカメラを使うことになった人や、下位機種からのグレードアップで使うことになった人にはすんなり受け入れられると思う。

高品質な映像の確認が出来る覗きタイプのファインダー「URSA Viewfinder」

こちらは以前のURSAから存在していた機種であるが、ENGスタイルでの撮影に必須のファインダーである。有機ELパネルの黒が締まった映像はフルHDパネルであることと相まって、高品質な映像の確認が出来る点でとても有用であると言える。

ソニー製放送用ビューファインダーのHDVF-EL20やEL30の有機ELファインダーと比べても遜色のないクオリティで最終映像を確認している感が得られる。惜しむらくは、覗き窓の小ささから、少し離れると映像全体が全く把握できなくなる点である。

そのあたりはアイピースが大口径化しないと実現できないものなので、基本設計から変わってくる話になってしまう。アイピースといえば、視度調整をしようとするとアイカップゴムが一緒にクルクル回ってしまうのは構造上仕方ないのだが、これも改善を期待したい。

調整方法は、見やすいように視度調整をした後、視度調整リングを押さえたまま、アイカップゴムを回して位置を合わせるという方法で済んではいる…のだが。

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上写真は手元にあったファインダーを重ねてみたものである。下から日立国際電気製のブラウン管HDファインダー「VF-402」(約50万円)、その上にソニー製「HDVF-EL30」(約80万円)、一番上が「URSA Viewfinder」(約17万円)であるが、ルーペ部分がとても小さいのがわかる。小型軽量化に寄与しているのは重々承知ではあるが、やはり口径の大きなレンズがついているほうが使いやすい感じは否めない。

また本機は有機ELであることから焼付き防止策があり、ルーペから完全に離れてしまってから数十秒程度で画面が黒にフェードアウトすることにより焼付きを防止していると思われる。なお、ルーペに顔が20cm程度に近づくと再度映像が出現する。

高輝度表示が特徴の新型7型液晶ファインダー「URSA Studio Viewfinder G2」

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こちらは液晶で2000nitの高輝度表現が可能になった大型ファインダー。中継スタイルでは屋外でも使用されるため、日差しを受けてしまった場合の見にくさはこの種の大型ファインダー共通の課題である。他社ではロングフード(別名スポーツフードなど)が別売りされていて、カメラマンは言わば「箱メガネ」のようなものにかぶりついてファインダーを見ている。

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箱メガネ状のフード(ロングフードなどと言っている)を覗く筆者。液晶画面にもっと陽射しが入る時は本当にかぶりつきになる

URSA Studio Viewfinder G2にはロングフードがオプションで存在していないので、「大丈夫かな?」と心配した。そこでテストで屋外に設置して太陽を背にしたような環境を作ってみたが、かなりスクリーンに太陽が正対した状態でも、ブライト・コントラストのボリューム調整で十分快適な視聴環境を作ることができた。高輝度表示が功を奏して、かなり優秀といえる。実際はカメラマンが居るので、正対して陽が差し込むことは無いと思われる。

こちらの外部インターフェイスはSDI端子と電源のXLR4ピン端子だけであり、これは簡単なインターフェイスを介することで他のどのカメラにも対応出来ることを意味している。

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写真のようにソニー製中継カメラHXC-100(もちろん、HDCシリーズも)や、弊社がメインで使っている日立国際電気製のSK-UHD4000という4Kカメラにも装着することが可能である。

最近のカメラには、カメラヘッドにビューファインダーと同じスーパーインポーズがされた映像をSDI出力する機能があるのが一般的であるので、他メーカーのカメラに対応できるBOXが発売されればかなりヒット商品になるだろう。

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なお、上記写真のようにBlackmagic Design社が開発したBNCコネクタは周囲に太いリングが付いていて、URSAに付けるには操作感が良いのだが、他のカメラにつける場合はリングが邪魔をしてBNCコネクタを回せなくなってしまった。そのため、短同軸を用い、J-J(Jack to Jack)させて繋げる必要がある。

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特に端子保護のために埋没式のコネクタの場合、周囲のリングが邪魔して入らないので短同軸とJ-Jは必須となる。

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他社カメラヘッドにて、VFキャラクターを重畳した内容にSDI出力を設定変更したものを入力。あとはタリーが簡単につけば言うことなしだが…

他社製カメラに装着する場合は、カメラヘッドのビューファインダー端子やTRACKER出力からタリー信号を出力して同社製「3G-SDI Shield for Arduino」などを用いて、URSA Studio Viewfinder G2に入力するSDI信号にタリー情報を重畳させることが必要になると思われる。

本機のアップグレードはUSB-C端子から行うのだが、最初見当たらなかったコネクタ。フードを外した底面にあるのを発見!

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なお、バージョンアップのためにはBlackmagic Camera Setupユーティリティが必要であるが、このソフトからは何の設定も用意されていない。必要に応じてバージョンアップするのみだ。

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何らかの方法でタリーを外部入力できれば素晴らしいのだが、そこまで求めるのは酷か?

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本機の調整ボリューム類は大型ノブを採用しており、カメラマンが手袋をしているような環境でも操作がしやすい。これはユーザーサイドに立った設計思想であり、とても好感が持てる。

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こちらテスト用被写体のデジカメ撮影画像
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こちらURSA Broadcast G2で収録。ノンリニアでキャプチャーした映像
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ファインダーに写っている画像の再撮画像。上記3点の写真からもこのファインダーの色再現性の良さがわかってもらえると思う

肩当てやハンドル等のキット「URSA Mini Shoulder Kit」

担ぎでこのカメラを使いたい場合、必要になるのがこのキットである。もちろん、他社製リグでも良いが、やはり純正が適合を含め良く考えられていてお勧めである。

後述のCamera Fiber Converter(カメラアダプター)を使用する場合は、このキットや他社製リグを用いるなどして、Camera Fiber Converterの底面の通風孔を塞がないようにしないといけない。このキットを用いずに床置きしたり、他社製リグでカメラアダプター底部を塞ぐタイプのものは注意が必要である。

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上写真では弊社が主力で使っている放送局用4Kシステムカメラの日立国際電気製SK-UHD4000と並べてみたものであるが、同型レンズ(FUJINON UA22x8BERD)のフード先端部の位置を合わせた場合、肩パッドの位置、ファインダーの接眼レンズの位置、ハンドルの位置、カメラ後端まで、ほぼほぼ一緒の仕上がりになっていて、標準的な担ぎカメラをよく研究して作られているな、と思った。

逆に言うと、中継スタイルは常に「前重(まえおも)」であることから、池上製4Kカメラのようにできるだけ重心が後ろに行く工夫をすると、レンズを支える右腕の負担が軽減されて良いのではないかと思える。

光カメラアダプター「Camera Fiber Converter」

中継スタイルで必須になるのがこのCamera Fiber Converterである。

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国内ではNHKがメインで使われているLEMO規格の光ファイバーコネクター。海外ではこちらのほうがスタンダードであるが、独自規格を好む島国ニッポンでは、多治見タイプが主流である。筆者も多治見タイプのほうが好みであるが、換装は基本出来ない(他にもカメラコントローラーのジョイスティックとボリュームの違いも同じ構図である)。

既設で多治見が引いてあるところでは変換ケーブルが必要なので、1セットは持っていると心強いと思われる。変換ケーブルが1セット10万はしてしまうので気軽には揃えられないのも理由の1つだ。

そんな点はあるものの、総じてとても優れたカメラアダプターであるのだが、残念な点を指摘したい。最初の1回だけであるが、取り付けが面倒なのだ。専用のアタッチメントプレートを用意し、内部接続で電源を渡すのだが、ネジを何箇所も止めないといけない。

プラスネジであったり、トルクスであったり種類が違うのもややこしい。ネジが多い分には、強固な接続になるといえばそうであるが、これが「中継スタイル」と「ENGスタイル」をよく入れ替えて運用したい、という場合に不都合がでる。

Vマウントバッテリープレートに替えるのに、またネジを何個も外して、Vプレートをつけて・・・とやらないといけない。10分では済まないのである。これがなかなかの手間でCamera Fiber ConverterもVマウントになっていたらいいのに、と思う。

もしこの複雑な接続スタイルで行くのであれば、外につなぐ3本の同軸も内部でコネクタ接続できるようになっていてほしかった。そうすれば接続に掛かる手間や時間にまつわる不満も吹き飛ぶだろう。それだけ外観がスッキリするはずだからだ。次期モデルで期待したい点の1つである。

ここで組み立ての解説動画を作ってみた。

早回ししている部分があるが実際の収録時間は12分くらいである。なかなか気軽に「放送プロダクションカメラ」と「ライブスタジオカメラ」を行き来することは出来ないと感じた。

しかし、この価格の中で光カメラアダプターが出来てしまうというのがつくづく不思議ではあるのだが、一般的な中継カメラが備えている機能はほぼ網羅しており、逆にそれ以上の機能もあったりして、「予算はかけられないが本格的な中継カメラがほしい」となった場合、Blackmagic Design社製一択、独占市場ではないか?そう思える。

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設定ソフトのCamera Setupユーティリティではバージョン確認とバージョンアップ作業しかできない

光ベースステーション「Studio Fiber Converter」

ベースステーションは2Uハーフという小型サイズながら、2kmまでの給電能力があり、非常に頼もしい(実際にケーブルを2km分も持っていないのでテスト出来ていないが、600mでは全く問題なかった)。

初期モデル(3年ほど前)は、MENUも用意されていなくて、ボタンはあっても機能していなかったので、今は基本設定と音声レベル設定、インカム設定などが出来るのは、やっとここまで来たか、と感慨深い。また他社製品で中継をしている者は度肝を抜かされる、フロントに光コネクタがある外観も個性が強い。

説明書には本機をラック背面に設置することでコネクタ盤代わりになり、かつ接続されたカメラの映像もラック裏面で確認できる、ということが書かれていて、素晴らしいアイデアと思える。

だが、MENU操作はラック裏に行かないと行けなくなるので、音声レベル調整などMENU操作が必要なときには室内側に画面が向いていたほうがいいだろう。

SDI出力が2つしかないのは心もとない感もあるものの、同社製品で固める場合、機能的にシステムを組み上げるとそれほど出力数を求められないということもある。

なお、設定ソフト(Blackmagic Camera Setupユーティリティ)をPCに立ち上げておいても、同ソフトではバージョンアップしか出来ず、なんの設定も出来ないのでそこは残念である。

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くどいようだがCamera Setupユーティリティでは最新バージョンの確認・アップグレードのみしかできない

また本機をラック裏に設置する際、6カメ使用だとした場合、ラック6U分を占有してしまうので、中継車などのスペースが限られた環境では一概に良いばかりではないかもしれない。カメラ端子盤に光カメラコネクタを並べるだけなら2Uで6カメ分くらいのコネクタを並べられる。

4カメ分の卓上カメラリモコン「URSA Camera Controller」

こちらも4カメ分が1台で操作できるという素晴らしい機材である。もちろん、海外勢に受けの良いジョイスティックタイプのIRIS/MB(マスターブラック)コントロール方式ではあるが、クローズドな環境であれば、日本であっても、使う本人が慣れればいいのでこれはお勧めといえる。

RCP-1500(ソニー製)ライクな作りで非常に格好も良く、RCP-1500であれば、4台で200万円ほどすることから、小規模中継では中々導入できなかったカメラリモコンが簡単に運用でき、VEの重要性も認識が変わってくるものと思われる(接続もACとLAN1本だけ、というのが素晴らしい)。

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URSA Camera ControllerはLAN接続でATEMシリーズスイッチャーとリンクすることで操作パネルのカメラ番号にタリーが反映される。またスイッチャーからカメラへはカメラコントロール信号やTALLY情報がSDIに重畳されて送られ、簡単な設定だけで最高級システムが完成する。

本機のジョイスティックは手前←→奥でIRIS調整、ノブ底部またはノブ頭部埋め込みのVRでマスターブラック調整、そしてジョイスティック自体を押し込むとPREVIEW選択が可能になる。例えば、スイッチャーにAUX出力があるものなら、ジョイスティックを押すとスイッチャーのAUX出力がその映像に切り替わることから、VE用WFM向けの出力を切り替えるのに別途セレクター等が要らない等のメリットがある(スタジオや中継車ではVEはカメラだけを見ているわけではないので結局セレクトボタンは必要になるのだが、コンサート収録や2nd、3rd VE用と考えたら充分な機能と思われる)。

ズーム/フォーカスリモコン「Zoom Demand/Focus Demand」

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この製品は今回のラインナップの中でとても魅力的であり、この価格で実現できたことがBlackmagic Design社の底力を感じる一品と言えるものと断言する。

他のブレークスルー製品群同様、デザイン・質感ともに良くCanon/Fujinonの同種製品と比べても機能面で差異がないばかりか、USBケーブルのデイジーチェーン接続でカメラに繋げばOKというシンプル接続で、よく考えられていて感心する。USB-C接続の心配については同社もよくよく考えたのであろう。

抜け止めのネジがついたコネクタを採用している。ここだけでもコストが掛かっているだろうし、現場の要望がわかっているのでユーザーとしては嬉しいことである。

ただ、どうしてもUSB-Cである必要があるのか?という点においては、多少コネクタが大きくなってしまっても、接続確実性の高いコネクタが望まれたのではないかと思うのである。というのも、抜けどめのネジが締めにくいのである。小さいネジのため、指先でチョイチョイと小刻みに回していくしかなく、最後も結局力をかけて回すことができない。といってラジオペンチ等でギュッとするにはコネクタを壊してしまいそう。

その様子を動画で収めた。クランパーの動きも解説している。

動画でもテロップで解説している通り、ネジは六角レンチが入るのだが、常時レンチを持っているとは限らない。スタジオで使うだけであれば、バラさずに常時接続したままでもいいだろうが、持ち出し用途で使うのであれば、「手袋したら締められない」では困る。そしてデマンドには抜けどめがあっても、カメラ側には抜けどめがない、など惜しい点も見られる。

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カメラ右側面下部にUSB-C端子があり、そこにデマンドからのUSBケーブルを挿すことが推奨されているが、こちらには抜け留め用のネジ穴がない…

しかし、従来のようにレンズ側にデマンドケーブルを刺さなくてもよく、どのメーカーのレンズだろうが(シネレンズだろうがCanonやFUJINONのB4レンズだろうが、またENGでも箱レンズでも)これさえあればシリアル通信が出来るレンズならどれでもコントロール出来るのは、夢のようなシステムであり、ぜひ他社も見習ってほしいものだと感じた。

以上が個別の感想である。

簡単接続で現場の仕込み時間が大幅に削減

今回、G・O GARAGE合同会社 東方様のご協力を得て、インターネットライブ配信(無観客配信)の現場でプラスワンのカメラとして使っていただいた。

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都内のスタジオにてカメラ4台の配信現場に、URSA Broadcast G2を加えさせていただき、5カメ体制に変更して使っていただいた。私が技術協力で参加し、本機のセッティングだけでなく、ベースバンド系システム全般の組み上げを行った。

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他の4台はソニー製PXW-FS5で統一されていたため、会場乗り込みで時間の制約がある中、まぜて違和感無い映像を出せるか不安だったものの、蓋を開けてみれば強力なカラーコレクション機能がある本機はその不安をすぐに払拭してくれた。

PXW-FS5など、シネレンズを搭載したカメラはどうしてもレンズ操作に制約があり、スタジオ・中継あがりのカメラマンにとって「ズームの方向が逆」とか「ズームするとピントがずれる」とか「ズーム自体スムーズにできない」とか「デマンドが存在しない」とか、いろいろと不満があると思われるが、本機は業界標準のB4マウントを搭載しているため、レンズ周りの操作性は抜群であったことと思われる。

もちろん本テストで搭載したFUJINON製UA22x8BERDはそれだけで今回の配信システム全体の金額になってしまうくらい高価なレンズであるので、「安く揃えたい」の趣旨から外れてしまう。ただこれが中古でも購入できるHDレンズでも充分とあれば、やはり操作性に優れたENGレンズはぜひ導入していただきたいと考える。

屋外で絞り気味で使われる場合は良いが、ホール等で開放に近く、さらに望遠側をよく使う撮影の場合はぜひ4Kレンズをお使いいただきたい。収差の影響は悪条件になるほど目立ってくるからだ。

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当日のベースはこのような感じであった

同社製ATEM Television Studio Pro 4Kスイッチャーをレンタルし、FS5x4台、URSA Broadcast G2x1台で構成。PCからテロップを出している。SDI出力を配信業者さんに渡してYouTubeで無料配信をしていた。常時1万人程度が視聴してくれていたようだ。

このシステムではURSAカメラにリターン映像を送ること、タリーを送ること、カメラコントロールをすることなど、一連が簡単接続になったことで現場の仕込み時間が大幅に削減できた。

実際私が持ち込んだ機材(PXW-FS5の組み上げとPA、配信システム以外のすべて)は実質1時間かからずに一人で組み上げられている。それもゆったりと行ってだ。

リターンとタリー、インカムについて

リターン映像については約3年前に前モデル(URSA Broadcast)が発売されてすぐに試した際に、RETボタンを押すごとにいったんブルー画面が入る仕様になっていて、これではRETを見る環境にはないな、と残念に思ったものであるが、今回再度確認したら大幅に改善されていた。

RETボタンを押すと、押している間RET映像を見ることができ、その切替えの際にブルー画面が挿入されることもなくなった。

ここまで来るとさらに欲が出てしまうのだが、RETボタンを押してから絵が切り替わるまでのほんのちょっとのタイムラグが改善されるとさらにカメラマンが直感で操作できるようになると思う。

一般的に各種番組制作においては、RETボタンをチャカチャカ押す(絶えずRETを確認する)ことが多く、押して絵が変わる前に「あれ?変わらない?」となってもう1回押してしまうことがある。

その2回押しの「間隔」が短い(ダブルクリック状態になる)と、ビューファインダー映像がRET固定映像になってしまい、戸惑ってしまう(撮影に集中できない)ことが多々あった。

多分ソフト的に改善出来ることだと思う。RET固定はMENUでやる事でも良いのかもしれないが、RETを適宜切り替えつつ撮影をしたい場合、現状の仕様ではちょっとのタイムラグが命取りになりかねないと感じた。

インカムについては2系統が装備され、カメラアダプター側でも2つのヘッドセットを用いる事ができるので、まさに放送仕様と変わらない運用が出来ると思われる。

ヘッドセット端子も業界標準の5ピンのXLRになっているので、すでに所有しているヘッドセットが流用出来るのも良い。クリアカムヘッドセットをお持ちの場合は5ピン→4ピン変換ケーブルを用意すれば使用可能である。

PGM音声の入力切り替え、そのレベル調整、Zoom Demandに割り当てたMIC ONスイッチでカメラマンのトークがONにできる事など、このあたりも行き届いた仕様になっており不便に感じる事はないだろう。

なお、音声周りでついでの話となるが、カメラアダプターに音声入力端子が2つある。URSA Broadcast G2本体上部にも2ch分あるのだが、やはり上向きにXLRコネクタを挿すのはいささか抵抗があるというもの。スペース的にそこに設置するしか場所が残っていないというのも理解できるが、片方しか挿さない場合、もう片方にダストキャップ等をしないと突然の雨などが怖い。と言ってダストキャップをすると元々の全体を覆うカバーがはめられない。なので、Camera Fiber Converter(カメラアダプター)がついている状態ならば、そちらの後端下部にあるXLR入力端子から音声をもらうと良い。

MIC・LINE切り替えだけでなく、AESデジタル音声にも対応している。アナログであればコネクタ2つで2chしか入らないが、AESが2chあるので、デジタルなら4ch分の音声をカメラから送れることになる。ライブでPAから近いカメラが音声をもらうのに、デジタルなら最大4ch分もらえるのは大きい。

4カメ構築すれば、カメラの場所にも依ってしまうが、4台x各4chで、計16chの音声を送れる事になり、重たい16chマルチを引かなくても、ベース側に様々な音声を送れる事になる。

Studio Fiber Converter(ベースステーション)側にはアナログ音声出力が4ch分(XLRコネクタ4個)装備されているので、ミキサーなどに入力するのも簡単だ。

Studio Viewfinder G2を使う際、箱レンズであっても、ENGレンズであっても、基本カメラマンはカメラ後方からデマンドを使って操作する形になるだろう。その時、ちょっと便利なのがCamera Fiber Converter(カメラアダプター)についている「IRIS」ダイアルだ。

本来ならスイッチャーベース側にVEが居て、色味やIRISをいじってもらうのが本式ではあるが、予算によってはVEが付かない(付けられない)現場も多い。

そんな時はスイッチャーさんが「○カメさん、絞りもう少し開けて!」などとインカムで指示するのだが、通常のENGスタイルでの運用(覗きのファインダーを使って左手がレンズ鏡筒を触っていられるスタイル)ならば、そんな呼びかけに対応できるのだが、カメラ後方にカメラマンが居る運用だと、IRISがいじれない。

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機材が上写真のような時は、カメラマンが後方に居るため、レンズのIRISリングに手をのばすのは不可能である。まして箱レンズであればそもそも外部から直接操作ができない。

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上写真のように、箱型レンズはシネレンズではありえない超々望遠が撮れるスーパーアイテムであるが、「箱」の名が示す通り、箱で覆われていて、ピントもズームもアイリスもリングが表に出ていない。エクステンダーとフランジバック調整は表に出ているものの、その調整もレンズ横に手を伸ばすタイプであり、ワークをしながらでは不可能である。

ピントとズームはデマンドで操作出来るから良いが、アイリスは今までCCUから制御するか、カメラマンが触れるようにするには何らかの加工を必要としていたものだが、それがカメラアダプター後部の「IRIS」ダイアルで簡単に絞りの調整ができるのはとてもいいアイデアだ。

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リアパネル右下にIRIS調整ダイアルがある。回転方向を好みによって変えられると良いのだが…

このダイアルは無段階調整ではなくステップでの調整にはなってしまうものの、VE不在の現場でStudio Viewfinder G2を使う場合にはとても役に立つ機能だろう。

とにかく盛りだくさんのカメラで、元々6Kまで対応している高画質な上に信じられない価格で本格スタイルでの撮影ができる本機は、おそらくプロダクションだけでなく、CATV局やローカル民放局でも採用されていくのではないかと思われる。

操作感の惜しい部分などある程度の妥協ができれば、補って余りある安さで、他メーカーは太刀打ち出来ない事だろう。そうしてユーザーが増えていけば、こちらのほうがスタンダードになっていく事も容易に想像がつく。既存メーカー(特に国内メーカー)も変革を求められていることだろう。

タリーについてはBlackmagic Design社製SDIスイッチャーとカメラ本体またはStudio Fiber Converter(ベースステーション)にプログラム映像(同社はプログラム・フィードと言っている)を入力すれば、そのアンシラリ領域に挿入されたデータにより、カメラ側が自身のカメラ番号を設定することでそのデータを拾ってタリーランプを点灯させるようになっている。

同様に同社製品はさらに安価なモデルでも、タリー・インカム・カメラコントロールをSDIのリターン映像に重畳させてやり取りをすることで、電源を除けばSDI同軸2本(行って来いの2本)でCCUシステムと同等の事が出来てしまう環境を従来より提供している。

今回投入した現場ではBlackmagic ATEM Television Studio Pro 4Kを用いて、リターン映像出力のSDIをStudio Fiber Converter(ベースステーション)のRET INに入力。本セットをカメラ番号4としたため、カメラ側MENUで自身のカメラ番号を4に設定すれば、たったそれだけで、スイッチャーで4を叩けばカメラのタリーが光るようになるという簡単システムである。

これが従来からあるシステムであると、スイッチャーから出るパラレルタリー信号は接点分配器を経由してCCUとモニター棚に行く事になる。モニター棚はスイッチャー用モニターとVE用モニターで別なので、それらとユーティリティを含めると4つも5つもに接点情報を分配する必要がある。

またアサインの変更に対応するためにパッチベイを経由させるなど、タリーだけ取ってみても気の遠くなるような配線を構築しないと組めなかったものだが、同社製品群で固めると特に意識せずに簡単に出来てしまう事で、とても拍子抜けしてしまう。こんなに簡単でいいのだろうか?と。

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なお、この写真のようにATEM Mini ProでHDMI出力を同社製ミニコンバーターHDMI to SDIにてSDIに変換してプログラム映像をStudio Fiber Converter(ベースステーション)に入力してみたが、古いミニコンバーターではタリー情報もカメラコントロール情報も変換の際に消えてしまうようで、タリーも光らせられないしカメラコントロールも出来ない、という結果となった。

今回テストには間に合わなかったが、新しいコンバーターであれば、それらの情報は変換器を介しても消えずにコンバートできるため、上記のようにATEM Miniシリーズを使ってStudio Fiber Converterを使い、タリーやカメラコントロールを活用することも可能になると思われる。

画角について

本機は6K用ラージセンサーを用い、B4レンズ使用時は2/3インチセンサーサイズを使うようで、B4レンズを装着した状態で収録モードを6Kに切り替えると周辺がケラれる。さらにB4マウント部分が数センチ前に出ているのはフランジバック長をあわせるためと思われ、そのための光学系があるのか、資料によれば1.1ストップ暗くなるようだ。1ストップで光量約1/2とすると若干もったいない気もする。そのためか、他機種と並べた際に0dBでは感度の差が出てしまった。

ただ、デジタルシネマカメラと捉えると、Blackmagic RAWが優秀であるために感度の調整は編集時に行うことを思えば、何を持って標準感度とするのか、従来の考え方だけでは表しきれない状況になっているのかもしれない。

単純にライブスタジオカメラ(中継スタイルのカメラ)と捉えるならば、隣のカメラが0dBなのに、こちらは18dBまでGAIN UPしないと、というのは気になる点(というか理解されるまでに時間が必要だ)と言える。

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左がソニーPXW-Z450、奥がソニーPXW-Z280、手前がURSA Broadcast G2
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3台をサイドバイサイドで比較。画質比較ではなく、画角比較である
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3台のカメラを引き絵で比較した。URSAとZ450で同じ8mm(35mm換算約31mm)なのに若干画角が異なるのは、URSAのセンサー切り出しサイズの違いか?わずかに広角になるので、カメラマンとしては心なしか嬉しいところであるが…

Z280の引きは1/2インチセンサーで5.6mm(35mm換算30.3mm)ということでほぼほぼUA22x8BERD(2/3インチセンサー用レンズ)の引きに近いということがわかった。

注目点は同じくらいの明るさを出すのに、Z450はF6.7まで絞れるが、URSAでは開放(F1.8)になったこと。もちろん、シャッタースピードは全カメラ1/60で統一している。続いてドンまで寄った絵の比較である。写真中央の外水道に寄っている。

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Z280は17倍レンズのため、寄りが95.2mm(35mm換算515mm)と他の2台とくらべ若干足りない感はある。URSAと他のZ450については22倍の160mm(35mm換算629mm)まで寄っている。この時URSAとZ450で絞りとシャッタースピードをあわせると、GAIN UPはなんと18dBになってしまう。ビデオカメラの18dB UPはだいぶ絵的に辛くなるが、シネカメラの18dB UPはそこまでではないと感じる。

中継用途では様々なシチュエーションがあり、それが刻々と変わっていく中で対応を迫られる。従来の機材に慣れた者はこういった「理解に時間がかかる事象」があると仕事上不都合があるため、昔ながらの「高くて」「大きくて」「あまり変化のない」機材を好む。

現場で他のカメラと混ぜた時に、このカメラだけ18dBまでGAIN UPしていいものか?なにか間違っていないか?ND?シャッター?GAIN UP以外にISO設定とかあったんだっけ?レンズの前にND付いていたりはしないよね?画質は良さそうだけど、17インチじゃわかりにくいかな…?大丈夫?使って大丈夫?というように、この1点の事象だけとっても、とっさの判断に困ると、中々使いにくいと思われる。

現場では1分のロスが惜しいときもある。その点では本機を投入する際は充分に事前準備をし、他のカメラと混ぜる場合は事前に試しておくくらいの心構えが必要だろう。もちろん、全部が同型機で揃えられるならいいのであるが。 スタジオはある程度照明も自由が効き時間的余裕もあり、設置も業者がきちんと設計した上で行ったものであろう。万が一の時に対応出来る体制も取りやすいが、中継用途は中々そうは行かない。また技術者も社内だけでなく、いろいろな会社から集まってもらって…ということも多々あるため、標準的な操作感であることが求められる点も製品開発に活かしてもらえたら嬉しい。

まとめ

前回レポートしたHyperDeck Studioシリーズでも感じたことであるが、同社の開発力・技術力・マーケティング能力は素晴らしく、発売される製品がどれも魅力的で、価格もすこぶる安く、また同社製品で固めることで利便性が抜群に良いシステムになるというのは、うまい商売だな、と思うのである。

メーカーも販売店もユーザーも、みんな良ければ三方良し!

「あとちょっとなんだよね」と思われる点も、前述のRETの青画面が無くなったように徐々に改善されてきており、もはや中継システムはこれで充分ではないか、と思われる位である。

次にどんなワクワクする製品が出てくるのか?躍進を続ける同社への期待は高まるばかりである。

中川賢司|プロフィール

1975年生まれ。幼少時にベータカムを見てから業務用機材に魅了され、小学生のくせにビデオα誌を読んでいた変態。今は中古中継車を販売する変わり者。業績に見合わない投資をする事で有名。結局ビデオ機材変態。