Matterport Axisレビュー説明写真

■ラインナップ(価格は近日公開)
Matterport Axis:雲台
Matterport Axis + Tripod:雲台と三脚のセット
Matterport Axis Starter Bundle:Tripod:雲台+三脚+1年間のスターターバンドルのサブスクリプション
■国内発売日
2022年5月中旬以降
■問い合わせ先
Matterport

現実空間をデジタル化する3Dキャプチャのリーディングカンパニー

Matterport(マーターポート)とは、2021年7月に米国で上場したデジタルツイン事業を展開する企業である。Matterportの主要な製品は、キャプチャデバイスであるハードウェアと、それらデバイスで取得した3次元+画像データを処理するクラウドプラットフォームである。

「西小山東京浴場」360°インドアビュー。2020年8月に筆者の会社のPro2により撮影

Matterport社製のカメラは「Pro2 3D」という赤外線3Dセンサーを搭載した約41万円のプロ用カメラがある。クラウドプラットフォームは、Pro2 3Dカメラはもちろんのこと、リコー「THETA」などの360°カメラ、Leica BLK360などのプロフェッショナル向けな3Dスキャナーなど、多種のカメラに対応していて、クラウド上にてバーチャルツアーコンテンツを生成、管理している。

Matterport社は2011年創業であるが、2020年頃から発生している新型コロナウイルスにより、全世界的に実空間を対象としたバーチャルツアーコンテンツ生成のニーズが増え、ユーザ数が増えているという。

筆者が所属する会社でも2008年の創業時から空間の3Dスキャンやパノラマ写真を用いたバーチャルツアー制作に取り組んできており、Matterportのカメラが発表されたときには衝撃を受けた。現在でも「Matterport Pro2 3D」カメラと「Leica BLK360」を用途に応じて使い分けている。それらハードウェアとクラウドプラットフォームで提供されている直感的で表現力の高いビューワーが連携し、不動産や観光施設等の空間のPRに利用している。

Matterport Axisレビュー説明写真
今回レビューをするMatterport Axis(左)。筆者の会社でも導入している「Matterport Pro2 3D」カメラ(中央)と「Leica BLK360」(右)

スマートフォンを装着してキャプチャできるモーター駆動式の自動回転雲台

Matterportが提供するスマホアプリ「Matterport Capture」を使うことで、スマホだけでMatterport用の撮影は従来よりできていた。しかし、この撮影方法では撮影者がカメラを回転軸の中心に構える必要があり、やや撮影に手間がかかったり画質にブレが生じていた。

この度発表されたMatterport Axisは、この「Matterport Capture」アプリの使用を前提として、スマホをモーターで回転させたり、撮影を行うのを電動化した、自動回転雲台である。Matterportが提供するキャプチャデバイスでは、最も手軽で安価なデバイスに位置付けられる。

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また、iPhone 11以降ではLiDAR(光を用いた検知と測距)技術が搭載されていることから、より精度の高い空間の3次元計測ができるようになっている。このLiDARを用いることで、Matterportで構築される3Dモデルの精度も向上されている。

■モバイル版Matterportのサポート対象デバイス

  • iPhone版Matterportは、2GB以上のRAMを搭載したiPhone 6SまたはiPad Air 2以上の機種に対応。Android版Matterportは、3GB以上のRAMを搭載した、Android 9以上稼働デバイスに対応
  • ウルトラワイドカメラ搭載のモバイルデバイス(大半の最新モデル)を使うと、最良の結果を得られ、iPhone 12 ProやiPhone 13 ProなどのLiDAR対応デバイスなら、精度の高い3D表現が実現可能

Axisのセットには以下の製品が含まれている。

  • Axis: スマホを固定するアーム付きの自動回転雲台
  • 三脚:小型軽量の三脚
Matterport Axisレビュー説明写真

モーター駆動式の自動回転雲台により一貫性を保ってキャプチャ可能

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Axisを使用する手順は以下の通りである。

  1. Axisのセットアップ:Axisを三脚に取り付けて、Axisのアームにスマホをセットする
  2. 電源を入れる:Axis本体とそのリモコンのスイッチを入れ、スマホのCaptureアプリを起動する
  3. 撮影する:画面の指示にしたがい、撮影ボタンを押すことで、撮影→回転→撮影→回転を360°カバーするまで繰り返される
  4. 移動する:次の撮影場所まで3〜4歩移動し、再度撮影する。撮影したい空間全てがカバーされるまで、3と4を繰り返す
  5. データをアップロードする:撮影完了後、アプリに表示されるアップロードボタンを押すことで、データがMatterportのクラウドプラットフォームにアップロードされる
  6. データを確認する:アップロード後数分から数十分後に処理が完了され、3Dデジタルツインデータがウェブブラウザから確認できるようになる
Matterport Axisレビュー説明写真

Axisで撮ったデータは、他のMatterport対応キャプチャデバイスで撮ったデータと同様に、Webサイト上で閲覧できる3Dバーチャルツアーになる。以下はMatterportのWebサイトにログインした際の画面であるが、これまで撮影した拠点のリストがサムネイル画像とともに表示されている。

Matterport Axisレビュー説明写真

3Dバーチャルツアーでは、360°写真を回転させて表示することができ、Googleストリートビューと同様に各撮影地点からの全方位の景色を見たり、また別の撮影地点をクリックすることで移動することができる。このコンテンツではhtmlのiframeタグも出力されるため、任意のWebページに埋め込んで使用することも可能だ。

また、Matterpottにおいて秀逸なビューモードとして、平面図とDollhouseビューがある。平面図では真上から見た図になっており、Dollhouseビューでは斜め上からの視点であることから、より3D空間であることがわかりやすい表示モードになっている。

Matterport Axisレビュー説明写真
Matterport Axisレビュー説明写真

不動産や観光施設の内覧コンテンツに最適

Axisで撮ったデータはPro2 3DやBLK360で撮ったものと比較して、どのような差があるのか考えてみよう。比較基準は360°写真と3Dモデルになる。

まずは360°写真であるが、AxisとPro2 3Dは同レベルか、使用するスマホの機種によってはAxisの方が綺麗になる。これはスマホのカメラの性能が年々向上していることと、Matterportのクラウド側でのスティッチング処理(複数の写真を画像処理で連結させて360°写真にすること)が高性能であることに由来している。BLK360は、3Dスキャン精度を追求した製品であるため、決して画質は悪くないが360°写真撮影機としての性能を求めるのはお門違いとなろう。

つぎに3Dモデルの精度であるが、これは高性能なものから並べると、BLK360、Pro2 3D、Axisといった順番になる。3Dモデルの精度を比較する際に重要になるのは各デバイスで使われている深度センサーの精度や性能になり、BLK360は誤差精度0.1%以内で最大スキャンレンジは60m(距離によって精度は変わる)、Pro23Dは誤差精度1%以内で最大スキャンレンジ4.5m、Axisで使用するiPhone12や13では誤差精度1〜2%程度で最大スキャンレンジ5mとされている。300cm離れたものをスキャンしたときに3cmの誤差が生じる場合は、1%の誤差になる。

Webページで不動産や観光施設の内覧コンテンツにMatterportのデータを使う場合においては、3Dモデルの精度は求められないと思われ、どちらかといえば360°写真の画質が重視されるのではないか。その尺度では、Axisでも十分であり、むしろPro2 3Dに比べて小型、軽量、安価であることから、Axisの方が良いという場合も多いだろう。

利用範囲ごとに選べるサブスクリプションプラン

データの保存や公開には有料サブスクリプションプランへの加入が必要だ。価格は、フリー(無料)、 スターター(月額1,200円) 、Pro & Business(月額8,300円)、エンタープライズ(見積もり)になっており、違いはWeb公開できるモデルの数量である。

撮影時のコストはカメラの価格や人件費に依存すると思うが、データを保存して公開する価格は上記の通りのモデル数による定額になる。そのため、Axisの登場は撮影費の低額化、それはカメラが安価になったことだけでなく、小型・軽量になったことから、撮影時に必要な人員数や、運搬時のコストなどの低額化につながると考えている。

上記以外にも、3Dツアーを動画化したmp4コンテンツや、各地点での写真など、多くのデータがダウンロードファイルとして提供もされている。

小型、軽量で気軽に3Dバーチャルツアー制作を実現

Axisでは、Pro2 3Dカメラと似たような画質・見せ方ができる3Dバーチャルツアーの制作ができ、その画像品質としても、空間の把握という意味では充分によい画質であった。Axisの上位機種になるPro2 3Dカメラは約41万円の価格になっており、サイズは230mmx260mmx110mm、重量は3.4kgあるなど、一般的な一眼レフカメラより大きく重いデバイスになっていることからも、気軽には使いにくい。

Axisでは、自動回転雲台とアームはスマホを一回り大きくした程度の小型さで、重量としても軽量のため、専用三脚と合わせても気軽に持ち運びができる。これらと普段から持ち歩いているであろうスマホをセットにするだけで、これだけ高品質なバーチャルツアーコンテンツが制作できるならば、試す価値があるのではないだろうか。価格が小型360°カメラより安いのであれば、ますますオススメできる一品である。

青木崇行|プロフィール

カディンチェ株式会社代表取締役。2009年慶應義塾大学より博士(政策・メディア)取得。ソニー株式会社を経て、カディンチェ株式会社を設立。カディンチェではXRに関するソフトウェア開発に従事。2018年には松竹株式会社との合弁会社であるミエクル株式会社を設立、2022年1月に代官山メタバーススタジオを開設し、バーチャルプロダクション手法を用いたコンテンツ制作に取り組む。

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編集部

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PRONEWS編集部による新製品レビューやイベントレポートを中心にお届けします。